260.一見さんお断り~一期一会を100倍ステキにする方法
「一見さんお断り」という京都花街のしきたりはあまりにも有名だ。
この慣習が「敷居が高い」というイメージに繋がっているのは言うまでもないが、
「おもてなし」という観点からみれば実に理にかなっている。
花街で提供される「おもてなし」は顧客の好みによって内容がさまざま。
お茶屋は顧客の好みを十分にわかったうえで芸舞妓さんや料理の手配をするが、
そのときに全く情報のない客ではどのようなサービスをしていいのかわからず、
満足のいく「おもてなし」が提供できない可能性が生じる。
「一見さんお断り」の理由は他にもあるが、まずこのことが挙げられよう。

西尾久美子「おもてなしの仕組み」中公文庫amazon
ずいぶん前の話になるが、人に薦められるまま、
ぼくは東京で開催されるあるセミナーに参加することになった。
大阪~東京という交通費や宿泊費だけでもバカにならないが受講料も結構高額で、
「元を取らねば」という大阪人特有の損得勘定から、
ぼくはその講師の本を手に入れられるだけ仕入れ
移動中もずっと持ち歩いて予習に励んだ。
おかげで当日は講師の話が面白いほどよく分かり、
本には書かれていない内容を耳にするたび心が躍った。
質問内容もあらかじめ用意していたのでとても有意義な時間になった。
その講演の参加者は20名ほどだったが、
講師からは途中でこんな質問があった。
「これまでに私の本を
読んで来られた方はおられますか?」
その時、手を挙げたのはぼくを入れてほんのわずかだった。
講師は「機会を有意義にするためにはこういうことがとても大事なんです」と諭すように言った。
「例えば、商談を進めるのに
相手の企業のことを
全く調べないという人はいないでしょう」
今年の5月から6月にかけて、ぼくは近畿大学で
「コミュニケーション講座」を受け持つことになり、足繁く通っている。
全部で19クラスあり、それぞれのクラスの担当教授と毎回簡単な打ち合わせをするのだが、
ほとんどの教授がぼくのブログをくまなく読んでくれていているのには
さすが経営学部!と感心させられた。

近畿大学正門前
なかでもキャリアマネジメントが専門の西尾久美子教授は
かなり古いブログまで目を通して下さっていて、
ぼくがすっかり忘れていた昔のコラムの内容に触れ、
「あのエピソード、すごく印象に残りました」。
そのひと言でぼくのモチベーションがグンと上がったのは言うまでもない。
会う前に自分のことを相手が
ちゃんと下調べをしてこられることは実に嬉しいもの。
こちらの考えや人となりを理解したうえで質問されるので自然に話も弾む。
おまけに西尾教授からは「お荷物になりますが、もしよろしければ…」と
『おもてなしの仕組み』(中公文庫)、『舞妓の言葉』(東洋経済新報社)という
二冊の著書まで頂戴した。

西尾久美子「舞妓の言葉」東洋経済新報社amazon
冒頭の「一見さんお断り」はこの著書のなかにあった内容。
落語には花街を舞台にした話も多くかなり参考になる。
また、芸を習得する過程や上下関係におけるしきたりなど
落語の世界とかなり共通する部分も多い。
よくも敷居が高いといわれる花街の世界に踏み込み、これだけの取材ができたものだ。
「あぁしまった!事前に読んでおけばよかった」とおおいに悔やんだ。
先に読んでおけば、ぼくからもいろいろ聴けたはずなのに…。
一期一会をずいぶん無駄にした。
このようなことはかつて自分の信条にしてきたはずだったのに…、
なんてぼくはズボラになってしまったのだろう。
次にお会いできることを願いながら、今日も教授の本を手に近畿大学に向かっている。

今回は基礎ゼミ「コミュニケーション講座」のなかでお話させていただきました。
近畿大学・中谷ゼミの学生たちと。
※この原稿は、熊本の(株)リフティングブレーンが発行する
月刊「リフブレ通信」に連載中のコラム「落語の教え」のために書き下ろしたものです。
落語に関する「花團治の研究紀要(論文)」も
是非ご覧ください。 ↓ ↓ ↓
◆花團治の研究紀要(論文)はこちらをクリック!

花團治公式サイト・出演情報はこちらをクリック!
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この慣習が「敷居が高い」というイメージに繋がっているのは言うまでもないが、
「おもてなし」という観点からみれば実に理にかなっている。
花街で提供される「おもてなし」は顧客の好みによって内容がさまざま。
お茶屋は顧客の好みを十分にわかったうえで芸舞妓さんや料理の手配をするが、
そのときに全く情報のない客ではどのようなサービスをしていいのかわからず、
満足のいく「おもてなし」が提供できない可能性が生じる。
「一見さんお断り」の理由は他にもあるが、まずこのことが挙げられよう。

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ずいぶん前の話になるが、人に薦められるまま、
ぼくは東京で開催されるあるセミナーに参加することになった。
大阪~東京という交通費や宿泊費だけでもバカにならないが受講料も結構高額で、
「元を取らねば」という大阪人特有の損得勘定から、
ぼくはその講師の本を手に入れられるだけ仕入れ
移動中もずっと持ち歩いて予習に励んだ。
おかげで当日は講師の話が面白いほどよく分かり、
本には書かれていない内容を耳にするたび心が躍った。
質問内容もあらかじめ用意していたのでとても有意義な時間になった。
その講演の参加者は20名ほどだったが、
講師からは途中でこんな質問があった。
「これまでに私の本を
読んで来られた方はおられますか?」
その時、手を挙げたのはぼくを入れてほんのわずかだった。
講師は「機会を有意義にするためにはこういうことがとても大事なんです」と諭すように言った。
「例えば、商談を進めるのに
相手の企業のことを
全く調べないという人はいないでしょう」
今年の5月から6月にかけて、ぼくは近畿大学で
「コミュニケーション講座」を受け持つことになり、足繁く通っている。
全部で19クラスあり、それぞれのクラスの担当教授と毎回簡単な打ち合わせをするのだが、
ほとんどの教授がぼくのブログをくまなく読んでくれていているのには
さすが経営学部!と感心させられた。

近畿大学正門前
なかでもキャリアマネジメントが専門の西尾久美子教授は
かなり古いブログまで目を通して下さっていて、
ぼくがすっかり忘れていた昔のコラムの内容に触れ、
「あのエピソード、すごく印象に残りました」。
そのひと言でぼくのモチベーションがグンと上がったのは言うまでもない。
会う前に自分のことを相手が
ちゃんと下調べをしてこられることは実に嬉しいもの。
こちらの考えや人となりを理解したうえで質問されるので自然に話も弾む。
おまけに西尾教授からは「お荷物になりますが、もしよろしければ…」と
『おもてなしの仕組み』(中公文庫)、『舞妓の言葉』(東洋経済新報社)という
二冊の著書まで頂戴した。

西尾久美子「舞妓の言葉」東洋経済新報社amazon
冒頭の「一見さんお断り」はこの著書のなかにあった内容。
落語には花街を舞台にした話も多くかなり参考になる。
また、芸を習得する過程や上下関係におけるしきたりなど
落語の世界とかなり共通する部分も多い。
よくも敷居が高いといわれる花街の世界に踏み込み、これだけの取材ができたものだ。
「あぁしまった!事前に読んでおけばよかった」とおおいに悔やんだ。
先に読んでおけば、ぼくからもいろいろ聴けたはずなのに…。
一期一会をずいぶん無駄にした。
このようなことはかつて自分の信条にしてきたはずだったのに…、
なんてぼくはズボラになってしまったのだろう。
次にお会いできることを願いながら、今日も教授の本を手に近畿大学に向かっている。

今回は基礎ゼミ「コミュニケーション講座」のなかでお話させていただきました。
近畿大学・中谷ゼミの学生たちと。
※この原稿は、熊本の(株)リフティングブレーンが発行する
月刊「リフブレ通信」に連載中のコラム「落語の教え」のために書き下ろしたものです。
落語に関する「花團治の研究紀要(論文)」も
是非ご覧ください。 ↓ ↓ ↓
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