fc2ブログ
トップページ | 全エントリー一覧 | RSS購読

カテゴリ:メロディーのエントリー一覧

  • 269.公共の授業~論破で未来は創れない~

    ぼくの夜間高校での落語の授業は、ぼくの実演の後のディスカッションに重きを置いている。落語の内容の背景にある価値観や文化などテーマはいくらでもある。井戸端会議のノリで終わるときもあれば、喧々諤々の意見が飛び交うこともある。ぼくの履く雪駄から、日本の摺り足、西洋のバレエにまで話が及んだことも。芸能のルーツから祝祷芸、八百万の神へと話が広がったときは、キリスト教信者の生徒の一人が「神様は一人だから先生の...

  • 255.雪駄とサンダル~なぜ踵を出して歩くのか~

    ずいぶん前の話になるが、呉服屋の店主に新発売だという雪駄を薦められた。確かに軽く、デザインもいい。思わず財布の紐がゆるみそうになったが、店主の「サンダルみたいに履けますよ」というひと言に一気に興醒めしてしまい、何も買わずそそくさと店を後にした。雪駄とサンダルは似て非なるもので、やはり着物には雪駄だからだ。このことを家に帰って嫁はんにぼやくと「何で?サンダルみたいに楽に履けるってええやん」と全く賛同...

  • 236.ヴィバルディの”虫のこえ”~さて鈴虫は何と鳴く?~

    小学一年生の頃、ぼくは福岡県那珂川にある岩戸小学校に通っていた。親の転勤ですぐに大阪に越してしまったが、ぼくのなかで日本の原風景は今もこのときの想い出のなかにある。ぬかるんだ田んぼのあぜ道を歩いたり、夏場はカチコチに乾いた肥溜めの上を根性試しと称して踏んでみたり…、確かに春の小川はさらさら流れていた。あれ松虫が鳴いている チンチロ チンチロ チンチロリンあれ鈴虫も泣き出した リンリン リンリン リ...

  • 228.あの娘を好きになったワケ~態は口ほどにモノを言う~

    ずいぶん前の話になるが、俳優スクールで授業をしていた時のこと。マンツーマンではなく大勢を相手に落語の台詞を口移しで稽古をつけていた。その時、ぼくはある一人の女子学生の佇まいが気になって仕方がなかった。全員正坐をしていたのだが、彼女の様子はまるでコンビニの前で深夜たむろしているような、ぼくの目にはかなりダラしない姿に映った。腰骨も後ろに倒れ、しかも身体が横に歪んでいるような恰好だった。「やる気のなさ...

  • 226.注文の多い落語塾~「愚か塾」の扉を叩く前に~

    花團治が主宰している落語塾「愚か塾」。個人宅での小さな小さな私塾ですが、おかげさまでここ2、3年は常に定員オーバーで、欠員待ちも15名前後、という状況です。それだけ多くの方が落語に魅力を感じてくださっているのは嬉しいかぎりですし、現塾生のほとんどが2年以上続けて熱心に通ってくださっていることに花團治は心から感謝しております。だからこそ、新たに「愚か塾」に興味をもってくださった方にお尋ねします。「花團...

  • 221.勘違いな「コミュ力」~お喋りにご用心~

    聴衆のなかには必ず相槌上手な人がいるものだ。「ほぉ」「なるほど」「そんなあほな」……黙っていてもそういうシグナルを適確に送ってくれる人がいる。話し手にとってこれほどありがたい存在はない。なかには腕組みの姿勢で口をへの字に不貞腐れたような態度で臨む聴衆もいるが、そういう人に限って終演後に名刺を携えて寄ってくるから始末に負えない。つい「壇上からも見えているんですよ」ということを言いたくなる。それにしても...

  • 220.独りよがりなお喋り~”習う”って、羽に白いと書くんやで~

    少し前の話だが、家人の治療のことである病院を紹介され、そこで手続きに関する説明を受けることになった。小部屋に通されるとずいぶん慣れた調子で担当の看護師が喋り始めた。もう毎度のことなんだろうか、かなりの早口である。質問を挟む余地もない。こちらに息を継ぐ暇も与えない。何か質問をしようものなら、咎められるようなバリアさえ感じた。何より彼女の語り口の独特な抑揚はひどく耳障りだった。何とか話についていこうと...

  • 211.ハロー効果~座布団までの歩み~

    落語家のある師匠がこんなことを言われてました。「売れてる奴は高座に現れた瞬間から顔が違う」そういえば、あるマジシャンも舞台へ出るときの心得についてこう言われてます。「ステージの上手(かみて)から出るときは、最初の一歩は右足を出します。下手(しもて)から出るときは左足を出します」ちなみに、客席から向かって舞台の右手を上手といい、左手を下手といいます。つまり、身体をひねらず観客に向かい合う形で出ること...

  • 210.「月亭可朝」と「若井はやと」の伝説~誰が喋ってもオモシロイ台本でウケてもオモシロないがな~

    月亭可朝師匠が亡くなられた。ギター漫談で売り出し、自ら作詞・作曲した「嘆きのボイン」は80万枚のヒットを記録。トレードマークはちょび髭とカンカン帽だった。(ちなみに、このカンカン帽はまとめて大量に購入していたそうだ。「お客が欲しがりよんねん。帽子にサインしてあげてしまうもんやから何ぼあっても足りへん」とおっしゃっていた)『嘆きのボイン』1.ボインは 赤ちゃんが吸うためにあるんやでお父ちゃんのものと違...

  • 207.叩きとバランス~相撲と合気道に落語を教わった~

    先日の大相撲三月場所(大阪場所)中、ある相撲部屋で行われたちゃんこ鍋会に参加させてもらった。最近、整骨院通いをしていることもあって、アスリートの身体の使い方や「バランス」に興味津々のぼくが力士達を質問攻めにすると、一人の力士が懇切丁寧に教えてくれた。「相撲もバランスなんですよ」相撲は単に力技ではなく、いかに相手のバランスを崩して勝利に導く頭脳戦の側面もあるのだ。小兵であっても大きい力士をひょいと倒...

  • 205.談論のすすめ~ディベート反対のためのディベート~

    小中学校などに落語ワークショップで招かれるたび、頻繁に聞かされるのが「子どもたちのコミュニケーション力低下」についてである。と同時に、「自分の意見がはっきり言えない」ということもよく耳にする。そういった背景が、まだ一部の学校だけとはいえディベート教育の導入にも繋がっているのだろう。撮影:渡邊隆「ディベート」とは、自分と意見が異なる相手と議論して説得させることを指すが、小学生の頃に吃音症を経験してい...

  • 203.努力って嫌な言葉ですな~芸の歪みは身体の歪みから~

    うちの師匠(二代目春蝶)は「努力」という言葉が嫌いな人だった。「そんなに頑張って喋らんでもええがな」というぼくへのダメ出しはもはや口癖に近かった。「もっと普通に喋らんかい」とも言われた。師匠の追悼CDアルバムのリーフレットのなかには師匠のこんなエッセイが紹介されている。「出来ないのか、好きでないのか”力仕事”と名の付くものが、まったく苦手である。従って、こじつけやないが”努力”という言葉は大嫌いである。...

  • 198.せぬひまがおもしろい~はたしてぼくは待ちぼうけのとき、どんな顔をして立っているのだろうか?~

    これも職業病だろうか?他人の佇まいというものがつい気になってしまう。電車のなかで前の座席に座るおじさん、コンビニのレジで順番を待つ学生、オープンカフェでくつろぐOL、客席で落語に聴き入るご婦人……。シャーロックホームズさながらその人の職業や趣味、普段の生活などを想像してしまうのである。駅の改札近くで待ち合わせをしている男性はひょっとして恋人との待ち合わせだろうか。それにしても颯爽と立つその姿は同性の...

  • 193.楽しい「声」で賑わいを~落語と狂言のワークショップin大阪福島さばのゆ温泉~

    ◆「第3回浅田飴のまちおこし」の詳細はここをクリック!◆大阪福島「さばのゆ温泉」はここをクリック!言葉の掛け方ひとつで患者の様子が変わるんです。演劇人の一人として、いかに言葉が大事か、思い知らされました。以前、狂言師の金久寛章が大学の看護学生を前にこう言った。大学で狂言演習を指導する金久寛章彼は大阪芸術大学の舞台芸術学科を卒業後、『劇団四季』に入団したものの、すぐに緑内障を患い、三か月の入院を余儀な...

  • 187.おしゃべりはやめて~弟弟子のこと、愚か塾のこと~

    花團治公式サイトはここをクリック!今から33年前、ぼくが先代春蝶の家に住み込みだった頃、師匠のもとに一人の入門志望の若者がやってきた。「人前で話すのが苦手で、なんとかそれを克服したいんです」。彼は大真面目な顔で弟子入りしたい理由を語った。「絶対、師匠はこいつを弟子に取らないだろう」と思っていたら、意外にもすんなりとぼくの弟弟子として迎えられた。「うちは話し方教室やないねやさかい」と自嘲気味に笑う師匠...

  • 184.耳で覚える~落語のお稽古~

    ◆花團治公式サイトはこちらをクリック!あるとき、ぼくは先輩に稽古をつけてもらっていてこんなことを言われた。「お前さんは目で覚えようとしてるやろ。せやから台詞が身体に入れへんねん」。当時のぼくの落語の覚え方は音源をもとに台詞をノートに書き写し、ひたすらそれを見ながらブツブツ口にするという方やり方だった。このときに言われたのが「耳で覚えんかい!」という言葉。今でも鮮明に覚えている。例えば20分の落語を師...

  • 180.親子チンドン~うちの居場所、見つけてん~

    「チンドンって、火消しに通じるのよ」 2015年、花團治襲名披露公演の街頭宣伝(撮影:相原正明)ああっ、また林幸治郎さんが意味不明なことを言い始めた。声を張るでなく、淡々と、しかもそれまでの脈絡と関係なく。皆が傍でワァワァ騒いでいる間、林さんだけはずっと思考モードのままだったのだ。だから、林さんとの会話はいつも油断がならない。 その日は、近日にせまった「芸術鑑賞会」の打ち合わせ。ぼくの出講する夜間高校か...

  • 179.落語と狂言はさも似たり~落語家による落語と狂言の会・やるまいぞ寄席~

    「声を出す」のではなくて「息を吐く」。謡曲のお稽古で学んだことです。「肚の底で声を支える」ということは、頭では分かっているつもりでも、我流でなんとかなるようなものではありません。ぼくにとって、謡曲のお稽古は身体のメンテナンスのようなもので、お稽古のあとは、声の通りもいくぶん良くなったような気がします。謡曲も狂言も、身体にいい。謡曲は水田雄晤先生(シテ方観世流能楽師準職分)にお稽古をつけて頂いてます...

  • 166.劣等感のチカラ~落語に学ぶコミュニケーション術~

    小学生の頃、担任の先生が放った一言からぼくの屈折人生が始まりました。終了前のホームルームのときでした。先生の話が終わって、クラス委員が「起立!」と声を掛けました。でも、ぼくはなぜか立てませんでした。その声がちゃんと耳に届いているにも関わらず、ぼくはただボーっと椅子に掛けたまま、外を眺めていました。気がつけば自分の世界に入り込んで周りを一切見ようとしない。ぼくはいつだってそんな子でした。そのときも、...

  • 163.劣等感バンザイ!!!~不足から満足へ~

    東京豪徳寺・イシス編集工学研究所にて 2016年3月19日不足はいつしか強い満足に反転していく。上方落語は大阪弁、江戸落語は江戸ことばで語られる。したがって、他府県出身の者はまずこの言葉の壁にぶつかる。しかし、落語の世界はなかなかに自由だ。江戸ことばが苦手なら堂々と自身のお国言葉で演じればいい。なんなら江戸という舞台背景を変えてしまえばいい。現に、鹿児島出身で東京在住の三遊亭歌之助師匠は鹿児島弁落語で人...

  • 161.宛先のない手紙は届かない~みなさん・あなた・わたしのベクトル~

    かつては宴席での一席というのが多々あった。落語というものがあまり浸透していなかったせいもあるのだろう。「お食事中、BGM代わりに落語をやって欲しい」という依頼があった。今なら、依頼の段階でお断りするか、食事と落語の時間を分けてほしいと願い出るか、あるいは、適当に小咄かなんかでお茶を濁して、早々に退散するところだが、当時のぼくは若かった。そんな場所でも大真面目にたっぷり古典を演った。「一人でも聞いてく...

  • 143.大須大道町人まつりに出演します~相方の狂言指導について~

    大須大道町人まつりに、花團治が「辻ばなし」「辻狂言」で出演します!!!今年で38年目を迎える大道芸のお祭りです。今年(2015年)は、10月10日(土)・11日(日)大須大道町人まつりのサイトはここをクリック↓↓↓大須大道町人まつり公式サイト「大須大道町人まつり」浅間神社で演じる「ちんどん通信社」。狂言の相方は、いつものように金久寛章さん。そんなわけで、今回は相方のお稽古風景について紹介してみたいと思います。狂...

  • 137.実演販売~マーフィー岡田氏に遭遇した~

    先日、百貨店で買い物をしていると実演販売の声が聞こえてきた。商売柄、こういうことにはいたって興味がある。駆けつけてみたがすでにそこは人だかり。販売士のエプロンには大きく「マーフィー岡田」と刺繍が施されていた。おそらく今、日本で一番有名な実演販売士であろう。ちなみに「マーフィー」の名づけ親は、上岡龍太郎師匠である。お決まりの「見て!見て!見て!見て!」のフレーズも聞けました!マーフィー岡田氏の実演販...

  • 124.パンソリ・浪曲・落語のピッチ

    「あれ?調子笛を使われるんですね?」と、浪曲師の春野恵子さん。「ええ、ピッチが下がるとお客さんが離れてしまうもんで」と、パンソリの安聖民さん。浪曲とパンソリは、それぞれ日本と韓国を代表する「語り物音楽」。昨年12月、コリアタウン御幸森小学校で開催されたパンソリ・浪曲・落語による三人会。(上から、パンソリ、浪曲)聖民さんは続けてこう言った。「パンソリを唱い続けていると段々声が嗄れてくるんです。そうなる...

  • 107.督促に学ぶ落語の効用~”督促OL修行日記”から~

    最近読んだ『督促OL修行日記』が面白かった。著者は支払い延滞顧客への督促を行うコールセンターで働いている。今、300人のオペレーターを指示する立場にいる。人間の脳は疑問を投げかけられると、無意識にその回答を考えはじめる。「お金を返してください」とこちらの要求を押しつけても、相手の反対や怒りを誘う。だったら「入金できる日はいつ?」という質問を投げかけて、脳に回答を考えてもらうようにすれば、罵倒されずに...

  • 92.「怪談」を踏み外す

    思えば、あれがぼくにとっての「落語初体験」だった。確か小学3年か4年の頃である。担任の先生がお休みということで、教頭先生だったか校長だったかは忘れたが、代わりに男の先生が教壇に立たれた。「今日は、みなさんにお話をします」断片的に覚えている箇所を繋ぎ合わせるとあれは、おそらく落語の『鰍沢』だった。その先生は、一人ひとりに語りかけるように、ゆっくりと間を取りながら話を進めていった。怪談ではなかったが本...

  • 88.モードを取り込む コトバとカラダの作法より

    「今日はひとつ、わし、○○師匠でやってみるさかいな」うちの師匠は、時折こんな言葉を言い残しつ高座に向かっていった。同じ咄でも、少しモードを変えて演じてみる。初めてうちの師匠の、その咄を聞くお客には、その違いがよく分からないかも知れない。でも、その咄を始終、袖から聞いているぼくには、師匠のそんな試みがたまらなく嬉しかった。間の取り方、突っ込みの言い回し、ちょっとしたメロディーライン・・・・・・それぞれの師匠...

  • 82.愛のメモリー 松崎さんに学んだこと

    かれこれ10年ぐらい前になる。松崎しげるさんのショ―の司会をさせて頂いた。神戸のホテル。1週間連続で貸し切りのトークコンサートだった。その初日、あまりの大役につい舞い上がってしまったぼくは、司会者として大失態をやらかした。松崎さんの、仕切りの上手さもあって、ショ―自体は、一見何の問題もないように見えたが、女性プロデューサーはかなりお冠であった。終演を迎え、楽屋に向かうぼくに対して、プロデューサーからキ...

  • 80.ナゾランケイコ 世阿弥考2

    「おまはんは、もうこの世界に入って何年になる?」「はい、ちょうど10年です」「ほうか、10年かぁ、ほたら、もうええかな。 ……なあ、今日はちょっと違うことしよ」「はっ?…」「うん、おまはんがこれまでやってきた咄を、ちょっと挙げてんか」「ええと、子ほめに牛ほめ、皿屋敷、持参金……」「ああせや!…その、子ほめにしよ」「はっ?」「いや、せやから、今からその、春蝶さんがおまはんにつけた『子ほめ』をやってんか」うちの...

  • 78.作為・無作為 世阿弥考

    もう25年以上も前の話だ。当時、ぼくは摂津市千里丘に住んでいて、地元のある会社の社長に、ずいぶんお世話になっていた。毎晩のように、ご馳走してもらっていたし、仕事もよく紹介してもらっていた。ちょっとした余興や司会のお仕事、たまに落語。その頃のぼくは、この社長なしには生きていけなかった。その社長がお亡くなりになったのが、2001年。社長のお嬢さんは、今、ミュージシャン、タレントとして最近も、バラエティー番組...

プロフィール

蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

カテゴリ

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

全記事表示リンク

ブロとも一覧

ブロとも一覧

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR