カテゴリ:ダイアリーのエントリー一覧
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270.男の井戸端会議~落語家ミドルチーム奮闘記~
それにしてもつくづく我々はお喋りな連中である。その日の議題は、いかに寄席小屋へお客様に足を運んでもらうかということだった。大阪市西区・千鳥橋「此花千鳥亭」という寄席小屋で、毎週木曜日のお昼に開催している「ミドルチームによる木曜寄席」。芸歴25年から40数年の12名が毎週3名ずつ順繰りに出演している。しかし、コロナ禍以降、観客動員が芳しくなく、このままでは存続が危ういという危機感が漂い始め、その対策につい...
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266.将来、教育に携わるあなたへ(子ども教育学科の感想文より)
先日(2022年12月16日)の特別講義ではお疲れ様でした。皆さんが目を見開き、ひと言も逃さないように聴いてくれる様子がとても嬉しく、つい饒舌になってしまいました。感想文も嬉しく拝見させていただきました。「必死に聴いていたので、落語のときも笑うのを忘れていました」というコメントには思わず笑ってしまいましたが、ずいぶん気を遣わせてしまったかな。全員の感想文にそれぞれお返事を書きましたが、そのなかからいくつ...
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265.先生よりも、知ってるで!~明るい夜間高校~
ぼくは今、夜間高校で「芸能鑑賞」という授業を受け持っている。落語を通して人の知恵や大阪の歴史や文化史を学ぼうというものだ。生徒の大半が戦後のドタバタで教育を受ける機会を失ったオモニの方々で、夜間中学から進学して来られる方が多い。夜間中学の設立は今から70年ほど前のことだが、今だ日常の日本語の読み書きに困る人々が大勢おられる。役所からのお知らせを読むにもひと苦労で、日常生活にもかなりの負担を強いられて...
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186.わからんけどわかった~古典芸能はアタマに気持ちイイ!~
2017年1月16日、天満天神繁昌亭にて(撮影:相原正明) 「わからんけどわかった」これまであちらこちらに落語を出前させてもらったなかでもっとも印象に残った一言です。 それは京都のある小学校でのこと。「これまでに落語を生で聴いたことある人は?」というぼくの問いかけに、100名近くいるうちのおよそ半分がサッと手を挙げた。「へぇ、誰の落語?」と尋ねると、その手が皆、ぼくを指さした。「そうか!?……毎年ここは5年生と6...
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183.落語はビジネスに活きる!?~愚か塾の場合~
桂花團治公式サイトはここをクリック!先日、ぼくの稽古場に卒業論文の取材をさせてほしいと一人の女子学生がやってきた。現在、ぼくは「愚か塾」という落語教室を主宰しているのだが、その稽古人さんたちに伺いたいことがあるという。 「ブログで拝見したところ、お稽古人さんの多くが社会人のようで、皆さんはどういう目的で落語に取り組んでおられるのか?また、どういうふうに仕事に活かしておられるのかを伺いたくて」とのこ...
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153.病いはことばから~看護と狂言~
「これまでぼくはなんて独りよがりだったんでしょう」最後に彼は自身の半生をポツリポツリと語りだした。大阪青山大学での特別授業でのことだ。それまでの笑いが渦巻いた雰囲気とはうって変わり、一言一言を聞き漏らすまいという学生たちの真剣な眼差しが印象に残った。「ぼくは入院して良かったと思います」ちなみにここにいる学生の多くは未来の看護師さんたちだ。狂言師・金久寛章。高校生の頃、演劇に出会った。たいして興味も...
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152.自分以外はみな先生~夜間高校で学んだこと~
「これからは笑うてる場合やないなぁ」夜間高校の教壇に上がるようになってはや20年。ここには10代から70代までの学生が集っている。70代というのは、若い頃様々な事情からこれまで教育を受けたくても受けられなかった方々。夜間中学から進学して来られる方も多い。年に20コマがぼくの担当だ。「落語の授業」とはいえ、ちゃんと試験というものがある。試験を前にして、この日はその練習問題の日だった。「テストがこないにムツカシ...
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150.告別式での万歳三唱~石塚克彦先生、ありがとうございました~
葬儀会場での万歳三唱。弔辞で語られるエピソードに思わず笑いが漏れた。隣にいた女性も、その隣の男性も、泣いた顔で笑っていた。「前日までお稽古してたのよ」と昔大変お世話になった女優の一人がぼくにそう言った。「いっぱいダメ出しもらってさあ、明日も見るからなって、それが私への最期の言葉なの……私、先生に認めてもらおうとたくさん稽古したのに」ぼくは促されるまま、棺の前に立った。穏やかな表情が救いだった。棺が納...
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146.師匠自慢~繁昌亭落語家入門講座~
花團治公式サイトはここをクリック!「うちの師匠はね、ここんところの形がめっちゃ恰好ええのよ」「うちの師匠はね、ここんところをこう持っていくの」「うちの師匠はね」と繰り返すのは主任講師の露の都師匠。繁昌亭落語家入門講座の光景。これが伝承芸能の楽しさかもしれない。受講生を高座に上げて指導する露の都師匠(手前)「稽古」とは古(いにしえ)を稽(かんが)ふる。古きも...
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145.心と身体に古典芸能(狂言エクササイズ)
月に一度のリフレッシュタイムはいかが?~狂言じゃ、狂言じゃ~◆「最近、身体がなまっているな」と感じておられる方◆「喉が詰まって声が出にくいな」と感じておられる方◆ストレスがたまってきたなと感じておられる方◆教養と健康を同時に手に入れたい方◆新しく仕事のスキルを身につけたい方◆何か新しく習い事を始めてみたい方◆演劇や古典に興味のある方◆習い事はお金が掛かると躊躇されている方◆暇を持て余している方・・・・・・...
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129.露の都の育て上手・教え好き~繁昌亭入門講座16期・後記~
「いやあ、あんた着物を着るのがずいぶん上手になったやん」「そうそう、前髪上げたらええ感じやで。その方があんた男前。表情もようわかってええで」「わたしもがんばるから、みんな、私についてきてや。信じて!この都を!!」「繁昌亭落語家入門講座」新・主任講師、露の都師匠。まずはこんなやり取りから。これで一気に場が和む。会場をぐるり見渡して、欠席者のチェックも一瞬に行う。「あら、和尚さんは?……ああ、そこにおっ...
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121.声のちから
「伝統芸能」と聞いただけで拒否反応を示す人々。実はかつてのぼくがそうだった。中学生の頃、BCL(ラジオ放送を聴取して楽しむ趣味)にはまった。遠く北海道から沖縄まで電波を受信しては悦に入っていた。そこによく割って入ってきたのが、落語である。でも、ぼくはそれが入ってくるや否や、すぐさま、受信を他の局に切り替えた。「落語なんて、お爺ちゃんの趣味」。そんな印象を持っていた。落語でさえそうなのだから、能やオ...
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120.お茶子さん~かすみ草という美学~
お茶子さんとは”かすみ草”である。花束には欠かせない存在。どことなく謙虚で控えめな姿が美しい。ぼくらはその”かすみ草”の気遣いに支えられている。さて今回は、”かすみ草”=お茶子についての記である。繁昌亭のお茶子・稲島桂子さん今、ぼくは『大阪府保険医雑誌』という開業医向けの月刊誌にコラムを連載させてもらっている。『桂蝶六の落語的交友録』というコーナーを担当。次号でこのコラムも49回目となる。この日は、その取...
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119.授業風景~大阪青山大学「言語文化論」~
授業中、ぼくのイメージは修学旅行のバスガイドさん。修学旅行で生徒と掛け合いを楽しみながら、脱線を遊びながら、ちゃんと本線に戻ってくる。授業中、ぼくのイメージは三波春夫さん。昔、奈良の元興寺での三波さんの講演。小一時間ほどして、進行役の永六輔さんがおっしゃった。「今日、一度でも三波さんと目が合ったという方は?」そこにおられた200余名のほぼ全員が手を挙げた。三波さんは、一人一人(あなた)に語りかけてい...
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115.再開「落語と狂言の会」
ぼくが公演として狂言を演じるのは、実に3年ぶりのことであった。「ぼくもこういう形での狂言公演はそれぐらいになるかなあ」と彼。写真は、先日、京都・六孫王神社において開かれた「落語と狂言の会」の模様である。(撮影:相原正明)落語家のぼくが何故「狂言」の稽古を始めるようになったのか?それは後に狂言の師となる先生から頂いたこんな言葉がきっかけだった。あるコラボレーションイベントでの一コマである。「蝶六君、...
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114.蝶の花道
『第14回・蝶六の会~蝶の花道~』。開場前から大勢のお客様にお集まり頂きました。おかげ様で満員御礼。天神祭り宵宮ということもあり、当日のお客様用に取っておいた補助席もほぼ満席と相成りました。この時期、ミストシャワーがお客様を出迎えます。その頃、楽屋では緊張をほぐそうと、わざとおどけるぼくでした。初代桂花團治の曾孫にあたる山田りこさんも激励に駆けつけてくれました。さあ、いよいよ出番。日頃から神信心な...
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112.劇表現を教育に”ぼくのお父さんは桃太郎ってやつに殺されました”~大阪青山大学学生の皆さんへ~
2013年新聞広告クリエイティブコンテスト・最優秀賞http://matome.naver.jp/odai/2138197151341220701前回の授業は、俳優・金久寛章先生を迎えての"狂言"ワークショップでした。というわけで、今回は、誰もが知っている『桃太郎』を狂言にして遊んでみました。アンコールにお応えして、金久先生にはこの前期の終わり頃に再度お越しいただく予定です。(桃太郎)これはこの辺りに住まいいたす桃太郎でござる。近頃、鬼が出て、盗み...
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111.劇表現を教育に~大阪青山大学学生の皆さんへ~
彼と狂言を演じたのは実に5年ぶりだった。かつてぼくらは大蔵流の狂言師のもとで稽古を共にしていた。結局、ぼくも彼も、何名かの弟子たちも、色んな事情からそこを離れざるを得なくなった。二、三年前のことである。しかし、あれから彼はずいぶん進化を遂げていた。彼は今、『府立咲くやこの花高校』で「劇表現」の指導をしている。役者として舞台に立つこともある。先日は、兵庫芸術文化センターでの公演『お家さん』にも出演し...
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109.狂言表現を教育に生かす~大阪青山大学学生のみなさんへ~
~将来の保育士・小学校の先生さんたちへ~春から3回目の授業を終えたところです。あと12回。今日もいつものように皆さんの出席カードに目を通し、それぞれの感想や意見にコメントを添えさせて頂きました。それぞれの色んな感じ方があるんだなあ…すごく勉強になります。ところで先日、ぼくが学校のスケジュールを勘違いして「狂言観賞は来週です」と言ってしまったものですから、ずいぶんがっかりされた方も多いのではないかと...
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108.今年も落語の授業が始まりました~大阪青山大学「子ども教育学科」学生の皆さんへ~
さて、春です。授業が始まりました。出席カードに愛用のVコーンでコメント書きをする。これは、ぼくにとって至福の時間であります。皆さんの感想を読んでいると、ぼくも元気が湧いてきます。何より、昨年受講してくれてた学生のほとんどがまた引き続き、この授業を選択してくれたことに、ぼくはとっても嬉しく思っています。ブログも読んでくれてありがとう。何とか皆さんの期待に応えたいと思います。では、皆さんに書いてもらっ...
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105.稽古人に育てられる日々~『愚か塾』発表会後記~
「教える」ということは、自分のことを棚の上に上げるということなのかも知れない。自身が強く注意を受けたことほど、よりむきになって、ダメ出しをしている自分に気がつく。稽古場に設けられたの高座の後ろには亡き師匠の特大写真を飾ってある。ぼくが塾生の稽古をつけるとき、当然、その写真を拝みながらということになる。塾生にお稽古をつけるとき、それはいつも師匠の思い出とともにある。我が師、故・二代目桂春蝶が見つめる...
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103.第8回・落語教室『愚か塾』の発表会
落語教室『愚か塾』の発表会平成26年2月9日(日)14時~17時半頃。高津神社『高津の富亭』参加費500円。問いあわせ:090-3289-1379 森高津神社の地図はこちらをクリック発表会の締めは、恒例の大喜利。単に、「落語を愛好」するというだけではなく、「落語の方法」を生活や仕事に生かして欲しい。コミュニケーション力、プレゼン力、想像力・・・・・・そんな思いで始めた『愚か塾』。今、ここには、20代のフリー...
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99.リアルかリズムか 繁昌亭落語家入門講座12
ナンバ高島屋の前を通るとき、決まって立ち止まり魅いってしまう光景がある。それは、街頭のティッシュ配りだ。熟練した者と、そうでない者との差は歴然としてある。この日、『繁昌亭落語家入門講座』14期が始まった。主任講師の桂米輔師匠はこんな言葉を口にされた。「リアルの前に、まずリズムです」『繁昌亭落語家入門講座』14期。1回目の講座では着物の畳み方も。神聖な高座もこの日に限ってステテコ姿が許される。ぼくが狂言...
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98.草落語の時代 繁昌亭落語家入門講座11
「おのれの事しか考えられへん奴はな、 咄家になる資格、あらへん」 生前、二代目春蝶がぼくにこう語ってくれた。六代目松鶴師匠の口癖だった。 寄席は、前座からトリまで通してひとつの番組である。前座は前座の、トリはトリの、トリの前のモタレはモタレの、それぞれの役割がある。モタレがあまりに熱演しすぎて、お客が「もう腹一杯状態、笑い疲れてしまった」ということではあまりいいモタレだとは言えない。お客の「もっと...
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93.リラックスな緊張 繁昌亭落語家入門講座10
「せやなあ、 ・・・・・・なんかひとつでええさかい、 印象を残せたらそれでかまへん。 こいつ可愛いやっちゃなあとか、 一生懸命喋っとるなァとか ……何かあるやろ?」 初高座の直前、師匠はぼくにそうおっしゃいました。でも、ぼくの頭のなかは「ただただ喋りきる」それ以外、考えられませんでした。受講生の一人が、ある時、ぼくにこんなことをおっしゃいました。「稽古の前の日からいつも緊張するんです。 ああ、また叱られる...
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90.”修行論(内田樹)”より 繁昌亭落語家入門講座9
「同じ咄、同じ台詞のはずなのに、 何故にこうも違うのか」おそらく受講された誰もがそう感じている。「演者」というフィルターの違いで、様々な伝わり方。それを実感できるのがこの講座の面白いところ。今、『繁昌亭落語家入門講座』初級コースで取り上げているのは、「くちなし」「兵庫船」「道具屋」の3席。受講者23名全員がこれに取り掛かる。ぼくはこれまで色んな場で「落語教室」の講師というものを勤めてきた。その受講生...
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87.声に出す日本語 ようこそアーティスト2
京都市が行っている事業のひとつに、「ようこそアーティスト文化芸術とくべつ授業」という取り組みがある。参加し始めて、かれこれ5年目ぐらいになろうか。これは、そのレポートの第2弾目。「寿限無寿限無、五劫のすり切れん、 海砂利水魚の水行末、雲行末、風行末・・・・・・」 おなじみ落語「寿限無」の一節。落語ワークショップでは、おなじみのフレーズである。 最初は、普通に立ったまま、リズミカルに。 次に、足を肩幅に拡...
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86.オチってなあに? ようこそアーティスト1
京都市が行っている事業のひとつに、「ようこそアーティスト文化芸術とくべつ授業」という取り組みがある。バレエ、ダンス、声楽、能、狂言、書、茶道、演劇、マンガ、香、語り、長唄・・・・・・多岐にわたっている。ぼくもここ数年、毎年のように呼んで頂いている。その様子を何回かに分けて紹介させて頂こうと思う。ぼくが、落語を通じて伝えたかったことを紹介していきたい。「オチって一体何やろう?」 この問いかけに、会場はほん...
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84.彼が落語家になった理由 繁昌亭落語家入門講座8
「君は、何で、咄家になろうと思ったんや?」「はい、ぼくは口下手で、 何とかそれを克服したくて入門しました」これは、ぼくがある弟弟子と交わした会話。その日は、師匠宅で、ご贔屓も参加しての宴会。鍋をつつきながら、師匠はもちろんのこと、ぼくやご贔屓さん方も皆がそれぞれの失敗談や武勇伝を面白おかしく喋っていた。師匠の芸談も交えながら、楽しい宴はどんどん過ぎていった。こういう時の師匠も、ぼくは大好きだった。...
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83.落語の効用について 繁昌亭落語家入門講座7
「声が通るようになった」「ストレスをためることがなくなった」「部下が言うことをよく聞くようになった」「夢中になるものを見つけた」「アホになることを覚えた」「言葉が柔らかくなったと言われた」「表情が明るくなったと言われた」「ボケ防止になっている」「いい暇つぶしができた」・・・・・・これらは、本日、落語講座の受講生の方々から頂いたお言葉。「繁昌亭落語家入門講座」が始まってかれこれ7年近く。今は13期が一番新し...