カテゴリ:セラピーのエントリー一覧
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275.六十の手習い ~花團治、レクリエーション介護士になる~
ぼくの師匠(二代目桂春蝶)は、弟子を叱るとき、くどくど小言を重ねる人ではなかった。ぼくが何かしくじった時、何がどういけなかったのか、これからどう努めていけばいいのかを自分の頭で考えさせ、それを自らの口から言わせた。それをひとしきり聴いた師匠は、最後にひと言だけ「次はないぞ」と呟いてその場からスッと立ち去っていく。もしも師匠が矢のように小言を浴びせる人だったら、ぼくは反省どころか反発していたかもしれ...
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191.復幸を目指して~熊本地震復興支援『笑顔を届ける落語会』後記~
◆『花團治公式サイト』はこちらをクリックくださいませ。そのとき、ぼくの目に「復幸」という文字が飛び込んできた。それは校長先生の背にプリントされた文字だった。5月19日・20日の二日間、ぼくは益城、広安、木山、御船、大津、西原と熊本県下の仮設住宅や小学校を『笑顔を届ける落語会』で回らせていただいた。益城町立広安西小学校もそのひとつ。ある統計によると、震災が原因とみられる自殺者は3年後、4年後に多く見られるそ...
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168.熊本で”笑顔を届ける落語会”~まずは「息を吐く」ことから~
今から20年前、阪神淡路大震災の一年後に訪れた仮設住宅でのこと。そこに詰めていたボランティアスタッフの一人がこのようにおっしゃった。「震災の直後はね、芸能人がテレビカメラと共に大挙押し寄せて全国から注目の的でした。でも、今となってはもう誰も見向きもしない。寂しいもんですよ。だからこそ、今、来て欲しいのです」。その施設には確か100名近くのお年寄りが入居されていた。ぼくは知人の紹介でそこを訪れ、落語を披...
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165.アノネ、がんばらなくてもいいからさ~熊本の友からもらったコトバ~
撮影:相原正明熊本のリフティングブレーンという会社には、落語や講演で呼んでもらったり、米などイロイロ食材を送ってもらったり、襲名祝いに、高級な雪駄をいただいたり、もうずいぶんとお世話になりっぱなしです。こちらの社が毎月発行されている冊子にも、5年以上にわたってコラムを連載させていただいてます。それでこのたびの大地震。ぼくはもうどうしていいやら、そのことがずっと頭のなかにありました。電話をするにも、...
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70.わたしはすごい 回想法2
いつものように、亭主は酔っぱらってご帰宅。「ちょっと母ちゃん、台所へ行って、一升瓶を・・・・・・」「そんなこと言わんと、早よ寝なはれ」「ちょっと一杯だけ」「早よ寝なはれ」「なあ」「寝なはれ!」「・・・・・・なあ、母ちゃん、お前わしと一緒になって何年になる? そやろ?寝なはれ、言われて、わいが寝ると思うか? わいを寝かそうと思うたら寝かす言葉、ちゅうのがあるやろ?」「ほたら、どない言うたらよろし?」「どない言う...
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65.お出かけ回想法(非薬物療法)
お年寄りの誰もが鮮明に覚えている子どもの頃の記憶。それを引き出すことにより、認知症や閉じこもりの予防や治療になる。非薬物療法の一つとして、今、とみに注目されているのが「お出かけ回想法」。このたび、落語会で訪れた北名古屋市の『ギャラリーコパン』。会場に隣接して、歴史民族資料館があると聞き、ぼくはさっそく見学に伺った。1階が図書館で、その3階フロアが展示室。入場は無料。『大阪くらしの今昔館』に比べ、規...
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43.心身一如
大阪ミナミのバー「苺」で開催される月に一度の勉強会。今回の講師は、中医学鍼灸院・院長の神野英明先生。定員は椅子の数だけ。13名。「心身一如」身体に起こるいろいろな病気は、心の使い方が誘因になっていると、「東洋医学」ではそう考えるのです。腰痛や膝痛は、感情と関係している。身体の上半身の体重は、腰だけではなく、身体の前のお腹でも支えている。腹の筋肉が弱ると、腰の筋肉への負担が増えて、身体のアンバランスが...
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33.セラピー牧場と落語
「落語は伝えることの大切さと難しさの実践の中で共に育っていく。まさに伝承共育ですね」これは小生が催す落語会のアンケートに寄せられた一文。彼女は、京阪枚方市駅の駅前にあるセラピー牧場 の運営者である。この後、こう続けられていた。「私たちの活動も共通する点があります。人の心に寄り添うセラピー馬の調教を『調伝』と言います。その馬の生育履歴を調べて、過去にトラウマになったことはないかなど、飼われていた環境...
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30.森田療法
「うちの師匠やなかったら、わしみたいな素行の悪い人間はとうの昔に破門されて、落語家を廃業してるやろな」これと同じような言葉を、これまでどれだけ多くの師匠方から伺ってきたことだろう。実は私自身も決して素行の良い弟子ではなく、故二代目春蝶に入門していなければ今ごろ路頭に迷っていた。私をきつく叱るのも師匠なら包むように赦して下さったのも師匠である。二代目春蝶は厳しくもあり優しくもあった。 「落語は業の肯...
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5.明日あると思う心のあだ桜
テレビで見慣れたはずのあの光景も実際目の当たりにするともう言葉にはならなかった。「何で?・・・」と呟いたままその後が続かなかった。同行したメンバー等もやはり同じことで誰も口を開こうとはしない。私の傍らにはちんどん通信社の林幸治郎氏と演歌流しの田浦高志氏がいた。・・・大震災に襲われた東北被災地への慰問が今回の目的である。昨年7月23日のことだった。花巻空港から海岸線沿いに一路岩手県山田町へ車は走る。...