2013年02月のエントリー一覧
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33.セラピー牧場と落語
「落語は伝えることの大切さと難しさの実践の中で共に育っていく。まさに伝承共育ですね」これは小生が催す落語会のアンケートに寄せられた一文。彼女は、京阪枚方市駅の駅前にあるセラピー牧場 の運営者である。この後、こう続けられていた。「私たちの活動も共通する点があります。人の心に寄り添うセラピー馬の調教を『調伝』と言います。その馬の生育履歴を調べて、過去にトラウマになったことはないかなど、飼われていた環境...
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32.グーチョキパー
今から30年前、ちょうど二十歳の頃だった。大阪道頓堀・角座という劇場ではレツゴー三匹の師匠方が漫才を演じていた。腹がよじれるとはまさにこの事を言うのだろう。その怒濤の笑いが冷めやらぬうちに登場したのが、後に私の師匠となる故二代目桂春蝶であった。身長170センチに体重41キロという虚弱体質が現れると会場の雰囲気は一変した。ぼやくようなその自嘲気味の語り口に先ほどまでの空気は静まり、それが爆笑に至るまでさほ...
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31.六代目松鶴師匠
「六代目松鶴師匠に言われた言葉で、一番印象に残っている言葉ねえ?……己のことしか考えられん奴は落語家になる資格がない、ちゅうことですかな」。生前、師匠(故・二代目桂春蝶)はラジオのインタビューでこう応えていた。先日、故・六代目松鶴師の一門の方とご一緒した時にこの事を話した。すると、その先輩は「そやねん、うちの師匠はな、弟子が集まって飯を食うてるやろ。そしたらその場で一番の若手にずいぶん気を遣いはるね...
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30.森田療法
「うちの師匠やなかったら、わしみたいな素行の悪い人間はとうの昔に破門されて、落語家を廃業してるやろな」これと同じような言葉を、これまでどれだけ多くの師匠方から伺ってきたことだろう。実は私自身も決して素行の良い弟子ではなく、故二代目春蝶に入門していなければ今ごろ路頭に迷っていた。私をきつく叱るのも師匠なら包むように赦して下さったのも師匠である。二代目春蝶は厳しくもあり優しくもあった。 「落語は業の肯...
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29.チンドン屋
懇意にさせてもらっている知人に林幸治郎という男がいる。毎年富山で開催されるチンドンコンクールにおいて過去10回の優勝歴。大阪谷町6丁目にある「チンドン通信社」。日本一のチンドン屋の大将だ。林氏曰くチンドンの音楽は歓迎する人たちばかり相手にしていられない。聞きたくない人まで視野に入れ尊重せないかん宿命がある。しかもそんな彼等の存在を肯定的にとらえる事で、逆に自分たちの居場所を大いに確保していくというや...
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28.ティッシュ配り
街頭の広告入りポケットティッシュ配り。自然に思わず受け取らせてしまう者とそうでない者の差は歴然としている。相手のどの位置にティッシュを持っていくか、どんな体勢や距離感で相手と向き合うか。そして何よりもタイミング。瞬時に相手の呼吸に合わせるティッシュ配りは美しい。この術は、剣道の「間合い」にも似ている。通行の邪魔にならぬようクルクル回りながら、まるでダンスのようなティッシュ配りにしばしぼくは魅入られ...