2015年05月のエントリー一覧
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136.襲名秘話~後ろ幕の革命~
「革命ですよね」電話の向こうで、とある新聞記者がおっしゃった。確かにこれまでの後ろ幕は、古典柄が一般的で、このようなものは、ぼくも見たことがない。ある関係者の一人は、事前にこのデザインを見て、「こういうものは何か決まりのようなものがあるのでは?」「大丈夫ですか?」とも言った。でも、ぼくはどうしても西口先生に描いてもらいたかったし、今までにないものを期待していた。前例がない方がいいに決まっている。結...
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135.襲名秘話~写真家との出会い~
「高座を撮らせてもらえませんか?」と相原先生。「是非!!……ただシャッター音が出ないようにして頂けますか?」とぼく。構造上、一眼レフにとってカシャッという音は避けられない。メカに疎いぼくはそんなことなどまるで眼中になかった。相原先生は少し困った顔をされた。それでも、「分かりました」とにこやかに応え、「近日中に連絡をしますので」とおっしゃって、その日は別れた。それからしばらく経ったある日のこと、意気揚...
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134.襲名秘話~船乗り込み3~
(前号からの続き)「くるしまたけひこ、ですかぁ?」「そう、久留島武彦!」「くるしまたけひこ」という名前は初耳だった。大和郡山の上田市長は話を続けられた。大和郡山は古事記の編纂者、語り部のルーツ「稗田阿礼」の出身地であること。「阿礼祭」を始められたのは「久留島武彦」先生であること。ぼくは市長が持参した「こをろこをろ」に酔いしれながら、「くるしまたけひこ」という文字をぐるんぐるんになりながらも手帳に残...
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133.襲名秘話~船乗り込み2~
(前号からの続き)襲名公演成功を祈願して、池田「呉服神社」にてご祈祷の模様。 撮影:相原正明心配事は山積みだった。さて、商店街でお練りをするとなると、安全面は大丈夫かとか、商店主の了解を得られるかとか、はたして道幅の狭いところを船が通れるかとか、雨の場合はどうするかとか、警察の許可が下りるかとか、人が集まってくれるのかとか、どういうルートにするかとか、船を動かす要員、食事、トラックの手配……商店会の...
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132.襲名秘話~船乗り込み1~
その日はたまたま戎橋松竹のことに話が及んだ。ぼくは時折、先代春團治夫人のもとを訪ねては昔のことを伺っている。(左から、二代目春團治夫人、ぼく、桂治門くん(襲名の三日前、撮影:藤井百々)戦後、大阪が焼野原になって寄席小屋も無くなった。芸人の活躍する場が限られていた。そこで、もともとあった映画館を改装して寄席小屋にすることが決まった。今から68年前のことである。その成功を祈願して催されたのが、この「船乗...