98.草落語の時代 繁昌亭落語家入門講座11
ダイアリー > 繁昌亭落語家入門講座 - 2013年09月20日 (金)
「おのれの事しか考えられへん奴はな、
咄家になる資格、あらへん」
生前、二代目春蝶がぼくにこう語ってくれた。
六代目松鶴師匠の口癖だった。
寄席は、前座からトリまで通して
ひとつの番組である。
前座は前座の、トリはトリの、トリの前のモタレはモタレの、
それぞれの役割がある。
モタレがあまりに熱演しすぎて、
お客が「もう腹一杯状態、笑い疲れてしまった」ということでは
あまりいいモタレだとは言えない。
お客の「もっと落語を聞きたい」という気分をも残しつつ、
サラッと演じてトリに繋ぐ。
分かっちゃいるものの、
ぼくにはまだそこまで考える余裕がない。
前座にだって、いい前座と悪い前座がある。
ウケレバイイとばかり、ツカミネタの連発。
「笑わそう精神」が旺盛すぎて、いわゆる悪ウケ状態。
ちゃんと落語の世界にお客を誘うのが第一義であって、
そのうえでウケルならいい。
寄席には寄席のマナーというか優先順位。
今、人気落語家の上位に並べられるK君は、
入門当初からまさに前座の鏡のような存在だった。
端正な語り口。心地よいリズム。
彼の後に出る先輩連中は決まって口にする。
「あいつの後、落語、やりやすいわあ」
だから、自分の独演会ともなると多くの先輩方は彼を指名した。
もちろん、ぼくもその一人。
……例えば、ぼくの後に先輩が出る。
限られた時間のなかで、結構マクラを振っておられる。
そんなとき、「ああ、ぼくが寄席の流れを乱したんだな」と
反省することしきり。
「笑い」を押しつけるのでなく、
落語の世界に「誘う」。
「笑わそう」という気持ちの空回り。
ぼくもしょっちゅう、これで失敗している。

この日、『繁昌亭落語家入門講座』13期の修了式が行われた。
「笑いを取らんがため、
無理に作ったりしたらあかん」
主任講師の米輔師匠は、このことに終始していたように思う。

繁昌亭落語家入門講座13期・修了式&発表会
ところで今、とある地方で定席小屋をつくろうという計画が進んでいる。
出演は地元の社会人落語家を中心に開催するが、
そのゲスト枠のことでぼくにも相談があった。
時間配分も考えなければいけないし、
マクラも含めネタがかぶらないようにとか、
寄席に出演するにあたっての高座マナー等々、
落語そのものは個人プレイのようなものだが、
要は、みんなでひとつの番組をこしらえていくということ。
整理すべきことは多々ある。
落語家は徒弟制度というシステムのなかで、
技術もさることながら「イズム」というものを継承していく。
「おのれの事しか考えられへん奴はな、咄家になったらあかへん」
アマチュアなら「そんなもの関係ない」と一蹴できるかも知れないが、
ぼくを含む落語家勢も出演することになる。
「後の喧嘩は先にしときまひょ」である。

仕掛け人と共に
右から福井工業大学准教授・木川剛志氏、ぼく、福井街角放送・鳴尾健氏
(北浜・画廊喫茶『フレイムハウス』にて)
ともあれ、ぼくが受け持った繁昌亭講座のなかで感じたのは、
ここの受講生メンバーであれば、
もし何かの折に参加するようなことがあっても、
自信を持ってこの寄席に送り出せるなあということ。
全ては米輔師匠と受講生方々の了見の賜物である。
米輔師匠のおっしゃるイズムは、
すなわち落語家のイズムそのものだ。
13期の皆さん、
初級講座修了、おめでとうございます!
次に中級に進まれる方は、
どうかこれからも素敵に切磋琢磨して欲しいと願います。
中級に進まれない方も、いずれこの講座に戻ってきて下さい。
それもままならない方は、
いい観客として、どうか寄席を支えて下さい。

修了式のあとは、皆で乾杯!
草野球があって、プロ野球があるように、
落語もまた、アマチュア層が欠かせない。
今秋から、わが『愚か塾』にも新たに塾生が加わりました。
今、ざっと15名ほどが常時お稽古に通ってくれています。
詳しくはここをクリックして「落語教室」をご覧下さい。
聞くところによると、
巷では社会人「落語男子」の人気が高まっているという噂がある。
「アマチュアで、かっ惚れ」
咄家になる資格、あらへん」
生前、二代目春蝶がぼくにこう語ってくれた。
六代目松鶴師匠の口癖だった。
寄席は、前座からトリまで通して
ひとつの番組である。
前座は前座の、トリはトリの、トリの前のモタレはモタレの、
それぞれの役割がある。
モタレがあまりに熱演しすぎて、
お客が「もう腹一杯状態、笑い疲れてしまった」ということでは
あまりいいモタレだとは言えない。
お客の「もっと落語を聞きたい」という気分をも残しつつ、
サラッと演じてトリに繋ぐ。
分かっちゃいるものの、
ぼくにはまだそこまで考える余裕がない。
前座にだって、いい前座と悪い前座がある。
ウケレバイイとばかり、ツカミネタの連発。
「笑わそう精神」が旺盛すぎて、いわゆる悪ウケ状態。
ちゃんと落語の世界にお客を誘うのが第一義であって、
そのうえでウケルならいい。
寄席には寄席のマナーというか優先順位。
今、人気落語家の上位に並べられるK君は、
入門当初からまさに前座の鏡のような存在だった。
端正な語り口。心地よいリズム。
彼の後に出る先輩連中は決まって口にする。
「あいつの後、落語、やりやすいわあ」
だから、自分の独演会ともなると多くの先輩方は彼を指名した。
もちろん、ぼくもその一人。
……例えば、ぼくの後に先輩が出る。
限られた時間のなかで、結構マクラを振っておられる。
そんなとき、「ああ、ぼくが寄席の流れを乱したんだな」と
反省することしきり。
「笑い」を押しつけるのでなく、
落語の世界に「誘う」。
「笑わそう」という気持ちの空回り。
ぼくもしょっちゅう、これで失敗している。

この日、『繁昌亭落語家入門講座』13期の修了式が行われた。
「笑いを取らんがため、
無理に作ったりしたらあかん」
主任講師の米輔師匠は、このことに終始していたように思う。

繁昌亭落語家入門講座13期・修了式&発表会
ところで今、とある地方で定席小屋をつくろうという計画が進んでいる。
出演は地元の社会人落語家を中心に開催するが、
そのゲスト枠のことでぼくにも相談があった。
時間配分も考えなければいけないし、
マクラも含めネタがかぶらないようにとか、
寄席に出演するにあたっての高座マナー等々、
落語そのものは個人プレイのようなものだが、
要は、みんなでひとつの番組をこしらえていくということ。
整理すべきことは多々ある。
落語家は徒弟制度というシステムのなかで、
技術もさることながら「イズム」というものを継承していく。
「おのれの事しか考えられへん奴はな、咄家になったらあかへん」
アマチュアなら「そんなもの関係ない」と一蹴できるかも知れないが、
ぼくを含む落語家勢も出演することになる。
「後の喧嘩は先にしときまひょ」である。

仕掛け人と共に
右から福井工業大学准教授・木川剛志氏、ぼく、福井街角放送・鳴尾健氏
(北浜・画廊喫茶『フレイムハウス』にて)
ともあれ、ぼくが受け持った繁昌亭講座のなかで感じたのは、
ここの受講生メンバーであれば、
もし何かの折に参加するようなことがあっても、
自信を持ってこの寄席に送り出せるなあということ。
全ては米輔師匠と受講生方々の了見の賜物である。
米輔師匠のおっしゃるイズムは、
すなわち落語家のイズムそのものだ。
13期の皆さん、
初級講座修了、おめでとうございます!
次に中級に進まれる方は、
どうかこれからも素敵に切磋琢磨して欲しいと願います。
中級に進まれない方も、いずれこの講座に戻ってきて下さい。
それもままならない方は、
いい観客として、どうか寄席を支えて下さい。

修了式のあとは、皆で乾杯!
草野球があって、プロ野球があるように、
落語もまた、アマチュア層が欠かせない。
今秋から、わが『愚か塾』にも新たに塾生が加わりました。
今、ざっと15名ほどが常時お稽古に通ってくれています。
詳しくはここをクリックして「落語教室」をご覧下さい。
聞くところによると、
巷では社会人「落語男子」の人気が高まっているという噂がある。
「アマチュアで、かっ惚れ」
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