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102.異国の地に修行する日本人アーティスト

世界の伝統芸能に魅せられた、
日本人アーティストたち。
彼らはなぜ海を越え、
「この芸能で生きる」ことを決めたのか?



踊りや音楽など、芸術・芸能を習得するには大変な努力を必要とする。
ましてそれが生まれ育った国以外の由来をもつ伝統芸能であった場合、
その地の言語はもちろんのこと、
歴史や文化を一から学び・身につける必要があり、多くの苦労を伴う。

そのようなハンデを背負いながらも、
伝統芸能に魅せられて海を渡り、
異国の地で必死に腕を磨いたアーティスト達。彼らを招いて、
日頃なかなか触れることができない伝統芸能を披露いただくとともに、
その魅力に出会ったきっかけや、芸習得にかける想い、エネルギーの源。

国や民族のワクをこえて活動する彼らの熱い声を届けたい。



先日、ぼくが出講する夜間高校で行われた芸術鑑賞会。
その企画書は、こんな言葉から始めた。

ぼくは、企画プランナーの藤井百々女史(ende)と共に、教員の方々との会議に臨んだ。
藤井女史には、ワークショップや企業セミナーなどで
日頃からアイデアを頂いたり、大変お世話になっている。
ぼくに編集学校への受講を薦めてくれたのも彼女であった。

この学校には、様々な理由で若い頃、教育を受けることができなかった
ご年配の方々が多くおられる。国籍もいろいろ。
また、他校でいじめに遭ったり、
これまで不登校や引きこもりだった若者もいる。

「そんな学生たちへ送りたいメッセージは?」
企画会議は、そんな会話から始まった。

「いや、ぼくもね、落語家ですから、落語を聞いて欲しいですよ。
 でも、今回はそこにこだわって企画を立てるつもりはありません」

本音だった。
落語家としては失格なのかも知れない。
でも、意図を重んじるならば、
前年まで長年続けてきた「落語」というくくりにばかり
こだわっている場合ではないように思われた。

話し合いは、
どんな芸能を見せるかというよりも、まず、
どんな思いでこの催しを行うかということに絞られた。
夜間高校という環境には、熱い教員が集まっている。

その結果、
北インド音楽の田中峰彦さん(シタール)、田中りこさん(タブラ)
南インド舞踊のルクミニーナオコさん、
ハワイアン・フラのナニハウさんを招くということで意見がまとまった。
進行役には、ぼくが立つことになった。

ルクミニーさん、田中さんと、ナニハウさんと、

右から、田中峰彦・りこ、ルクミニーナオコ、ナニハウ、ぼく


リハーサルの時だった。
教頭が会場となった講堂まで見に来られた。
しばし、ルクミニーさんとの会話が始まった。
「ここは10代から80代までの学生がおられるんですね」
「ええ、国籍だって色々です・・・・・・繊細な子が多い」

と、その時、ルクミニーさんはこう言った。

「この生き難い世の中において
 彼らの方がずっと
 まともかも知れませんよ」。


人一倍傷つきやすく繊細で、感受性豊かな者がここには多く集っている。
ルクミニーさんはそれをその一言で言い表したのだ。

ルクミニーさんとツーショット
ルクミニーさんとぼく

セッションでは、北インド音楽の演奏で、
南インド音楽の舞踊家と、ハワイアンのフラダンサーが踊った。

同じインドでも地域によって音楽は全く違うし使う楽器も異なる。
そんななかで何とか三者が一緒になれるように出演者一同が工夫を重ねた。

桃谷高校鑑賞ポスター


田中峰彦氏に尋ねた。
「向こうでは英語ですか?」
「いや、ぼく英語が全くダメなんです」
「じゃあ、どうやって」
「…まあ、片言英語とジェスチャーで」
「不安とかはなかったですか?」
「いや、不安を感じる余裕さえなかった」

言語がまるで通じないまま飛び出した、
というのは出演者全員に共通していた。
何とも無鉄砲な面々である。

「自分が夢中になれる道を」
「色んな世界を見聞きすれば」
「視野を拡げてみれば」
「勇気をもって飛び出せば」
「高校だけは出ましょうね」

耳慣れたこの言葉も
彼らの口を通せば、これ以上の説得力はなかった。
それはアンケートの結果にも如実に現れていた。

後日、ルクミニーさんからのこんなメールが送られてきた。

「サポートする先生方の目が
 とてもキラキラしていた。
 日本もまだ
 捨てたもんじゃないなという思いです」。



ぼくは、この学校の特別非常勤として勤めだして、
かれこれもう15年近くになるだろうか。
「芸能鑑賞」という授業を受け持ちながら、
「落語の授業」を展開している。
故事来歴よりも、落語世界におけるコミュニケーションや、
人への眼差し、何を笑うか、また、水平思考といったことを
主に取り扱ってきたし、それでいいとさえ思っていた。

でも、今回の催しは、企画の立場でいながら衝撃だった。
この短時間で、あれほど自分の生き様をさらし、
あれほど学生たちへ強く的確に
メッセージを伝えられたことがあったろうか。
あれほど集中させたことがあったろうか。

また、今回はこの過程を通じて
現場の先生方の声をしっかりと聞けたし、
日頃の思いや活動を知ることができた。

桃谷授業風景


桂蝶六のホームページはこちらから



この学校の教員は、日頃から学生のことをよく見ている。
ちょっとした動向にも目を配り、
しっかりと見守っている。
だから、いざという時の対応も早い。

「教員、矢のごとし」
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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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