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111.劇表現を教育に~大阪青山大学学生の皆さんへ~

彼と狂言を演じたのは実に5年ぶりだった。
かつてぼくらは大蔵流の狂言師のもとで稽古を共にしていた。
結局、ぼくも彼も、何名かの弟子たちも、
色んな事情からそこを離れざるを得なくなった。
二、三年前のことである。
しかし、あれから彼はずいぶん進化を遂げていた。
彼は今、『府立咲くやこの花高校』で「劇表現」の指導をしている。
役者として舞台に立つこともある。
先日は、兵庫芸術文化センターでの公演『お家さん』にも出演した。
主役の竹下景子さんとの絡みも多く、
彼のその存在感がぼくにはたまらなく嬉しかった。

金久寛章さんとのツーショット

金久、お家さん、看板

金久、お家さん、出演者

この日、彼をぼくの授業に特別講師として招いた。
ここでは将来の保育士さんたちが学んでいる。

いつもは無口な学生が授業の終わりに、
ぼくの耳元でポツリこう呟いた。
「先生、俺、この授業を取ってよかったと思うよ」

その手応えは、出席カードの文面にも表れていた。

青山出席カード

「二人の掛け合いが息ぴったりで面白かった。落語もそう
ですが、言葉や動作ひとつで景色が変わるので、変なこと
はできず、大変だなと思いました」(M・H男子)


その通りですね。ちょっと仕草も舞台のうえでは大きな意味を持ってしまいます。
無駄な動きを省いた、究極の所作が狂言のすごいところだと思います。
とってもいい気づきでしたね。


「前に出て演じてみて、動きだけではなく目線がとても重
要だということが分かりました。何を伝えたいかをしっか
り持っておかないと相手に伝えることができないと感じま
した。実際に発声してみると二字上がりで声に色が出ると
いう意味が分かりました。狂言では言葉を聞き取れないと
ころがあっても何となく意味が分かったりするところがす
ごく面白いなと感じました。(K・R女子)


Kさんも今日はいつも以上にたくさんの気づきがあったみたいですね。
それに前後の言葉などをヒントに考えてみるということ。
ぼくは以前、こんなコラムを書きました。

コラム:分からんけど分かった

金久講習、やい聞くか!

「狂言をしたのは初めてで、とても緊張した。プレッシャ
ーとかで身体の力がうまく抜くことができなかったのは残
念でしたが、とても貴重な経験をしました」(S・Y男子)


緊張するのは誰しも当たり前。ぼくもいつも緊張して喋っています。
大切なのは、その緊張を身体のどこに持っていくことじゃないかなあって、
ぼく自身にとっても 「リラックスした緊張」がテーマです。

コラム:リラックスした緊張


「足を一歩踏み出すと景色が変わったり、左右の足を一回
後ろに下げて勢いを出すなど、様々な方法を学んだ。先生
のような憧れられる人になりたいです」(S・M女子)


それにしても今日の金久先生の言葉、響きましたよね。

「生徒から憧れられる先生になってほしい」

「子どもたちに真似されても
恥ずかしくない日本語を使っていますか」


方法を分かったうえで、確信を持ってそれを実行する。
これがプロというものだと思います。
ぼくも今日は金久先生にずいぶんドキッとさせられました。



「先生の本気を見て凄いと思った。学校でこういうのが
見られるなんてとても嬉しかった」(S・K男子)


金久先生は特にいつも本気だからね。
ちなみに金久先生の今年の年賀状のメッセージには こうありました。
「教育と舞台の仕事、お互い共に頑張りましょう」
ぼくは今日、こういう機会を得られて嬉しかった。
学生の皆さんに、学校に、ホント感謝ですよ。


「自分も授業などをするときは子どもたちが魅入るよう
なものにしていきたい」(S・D男子)


何を伝えるか?どう伝えるか?、ですね

金久講習、数珠といっぱ、全体

「いつも蝶六先生のを聞いていたので、それが普通と思
っていたけど、今日の金久先生は蝶六先生と違うところ
がたくさんあった。演者によって同じ台詞でもずいぶん
個性が出るんだと思った。もっと他の人の狂言も聞いて
みたいと思った」(S・D男子)


同じ台詞、同じ内容でも・・・・・・
ここにも「古典芸能」の意義があるのかも知れませんね。
落語も狂言も。是非、色んな演者のものを聞いてみてください。

コラム:修行論(内田樹より)

「他の人が発表しているのを見て、すごく楽しそうだな
と思いました。普通の教室よりも畳の部屋が好きです」(K・S女子)


今度はKさんの番ですよ。グループワークが待っています。
『桃太郎』の創作狂言を楽しみですね。


「転び方にもコツがあるんだなと思いました。自分の日本
語は合っているかどうか自信がないので、先生を目指すう
えでもっと学ぶ必要があると思いました」(T・K女子)


プロである以上、どんなささいなことにも理屈がありますよね。

コラム:ティッシュペーパー配り

金久講習、すり足


授業が終わって、ぼくと彼は、池田の井口堂交差点、
小料理屋『ちりとてちん』にて二人反省会を行った。
ここの大将やママは大阪芸大の出身で、
ぼくの落研時代の先輩でもある。
それに大将は「舞台芸術学科」の出身で、
金ちゃんとは、同じ学科の先輩後輩。
会話はカウンター越しにも盛り上がった。
かつて一滴も飲まなかった金ちゃんがこの日はよく飲んだ。

「金ちゃん、いつの間に酒を覚えたの?」
「例の『お家さん』のとき、竹下景子さんから教わったんです」

・・・いいなあ、初体験の相手が竹下景子さんだなんて。


「ぼくね、狂言に出会って良かったですよ。今でも先生にはホント感謝してる。
狂言だけでなく、ものの考え方とか・・・・・・」
「・・・・・・金ちゃんの言葉って、先生を思わせるよね。特に最後のメッセージ」
「ええ、ホントずいぶんなぞってる」
「ぼくもずいぶんなぞってる」

「・・・・・・ところで、金ちゃんはFBやらないの?」
「うん、言葉を職業にしているぼくが変な文章を人前に晒すわけにはって思うと・・・・・・」
「先生は言葉には特に厳しかったもんね」

・・・いたずらに文字を書き散らかしている自分が恥ずかしくなった。
でも、別れ際、彼はぼくにこう言ってくれた。

「蝶六さん、今度はぼくの学校でお相手をしてもらえますか?」

・・・もちろん! 今からずいぶん楽しみである。
また、一緒に稽古を重ねようと誓い合った。

俳優・金久寛章。
ぼくは本当にいい友人を持った。


森五六九、狂言、胸突き、出会え

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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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