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122.風になりたい~町おこしとしての芸能~

「僕らはさあ、
結局、土にはなれないんだよね。
だから、せめて風になってさ、
種をさ、そこにね、
落としていこうと思うんだよ」


ぼくが劇団ふるさときゃらばんに客演として全国を回っていた頃。
今から15年前の平成11年、ぼくが36の時だった。
とある旅館のロビーで深夜、劇団員の一人がそう語った。

以来、この言葉がずっとぼくの頭のなかにこびりついている。

舞台パンフレット ふるさときゃらばん「男のロマン女のフマン」(1995年) 作 石塚克彦/纐纈俊郎 演出 石塚克彦 出演 谷内孝志/天城美枝/大河原もと子/五城目大五郎/はまち香/三戸亜純/岡山謙司舞台パンフレット ふるさときゃらばん「男のロマン女のフマン」(1995年) 作 石塚克彦/纐纈俊郎 演出 石塚克彦 出演 谷内孝志/天城美枝/大河原もと子/五城目大五郎/はまち香/三戸亜純/岡山謙司
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ぼくが初めて観た劇団の芝居。ちなみにぼくが客演させてもらったのは『パパは家族の用心棒』という芝居だった。


ふるさときゃらばんは、村から村へ。
全国に元気を届け続けた。
どこの町にでもあるような
フツーの人々のフツーの暮らしを描いた。
ここらは落語とよく似ている。
「農村ミュージカル」という触れ込みで紹介されることが多かった。

たとえ1000人しかいない村でも800人を動員した。
公演の多くは、小学校の体育館を借りて行われた。

当時、ぼくは演出家の石塚勝彦先生のこんな言葉を覚えている。

「ぼくにはさあ、
創作能力なんてないんだよね。
だって、
スタッフが取材してきた
町の人々の生の声を、
そのままそこに再現しているだけだよ」


ぼくはそう言い切る石塚先生を心底格好良いと思った。
真実にこそユーモアがあると確信した。

イギリスの劇作家・バーナード・ショーがこんな言葉を遺している。
My way of joking is to tell the truth; it's the funniest joke in the world.

私にとってジョークとは、
真実を語ることだ。
それは世界で最も面白いジョークなのだ。


『ふるきゃら』の前身は『統一劇場』という劇団だった。
山田洋次監督がこの劇団をモデルに一本の映画を発表している。

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倍賞千恵子、寺尾聰 他

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当時の思い出として今でも強烈に覚えているのは、
やはり、現地の公演実行委員会の姿である。

劇団はひとつの作品をもって全国を廻るのだが、
次に新作をひっさげて同地を訪れるのは、およそ4年後だった。

実行委員会は町に劇団を誘致しようというところから結成される。
この裏には劇団の制作スタッフらの強い粘りがあった。
その思いに共感した地元の有志たちは、
会場づくりから観客動員まで何から何までこなした。
芝居が終わると、劇団は次の現場へと移動する。
しかし、それをきっかけにそこには強いネットワークが生まれた。


4年後、『ふるきゃら』が再びその地を訪れる頃、
その実行委員会はさらに強固なものになっていた。
ぼくもよく打ち上げの席に参加させてもらった。
そこで語られるのは、
あれからこの同志たちが行ってきた活動内容だった。
芝居主催を機に「町おこし」の輪が生まれていた。



ところで、ぼくはこの一年、
福井駅前の寄席のコーディネートを担当させてもらった。
落語家の番組を組むという役割である。

福井駅前寄席『きたまえ亭』の記事はこちら

毎週のように福井に通いつつ、
ずっとぼくの脳裏にあったのは、
この『ふるきゃら』での出来事だった。

「きたまえ寄席」反省会
福井駅前寄席『きたまえ亭』、反省会の模様


しかし、福井駅前寄席は、一旦休止することになった。

でも、ここで生まれた地元スタッフたちの輪は、
なにものにも代え難い。
きっと次の何かを生むだろうと確信している。
それが落語会に限らなくてもいい。

「町の活性化」

これが一番の目的だったはずである。

せめて風にはなれただろうか。

次に会う日をぼくは心待ちにしている。

きたまえ亭ファイナル縮小版
きたまえ亭。スタッフと共に。


追伸
寄席のパンフレットに毎月、拙文を載せて頂いた。
寄席や落語、町に寄せるぼくの思いを綴っている。
それは是非、次の項をご覧ください。



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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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