129.露の都の育て上手・教え好き~繁昌亭入門講座16期・後記~
ダイアリー > 繁昌亭落語家入門講座 - 2015年03月15日 (日)
「いやあ、あんた着物を着るのがずいぶん上手になったやん」
「そうそう、前髪上げたらええ感じやで。その方があんた男前。表情もようわかってええで」
「わたしもがんばるから、みんな、私についてきてや。信じて!この都を!!」
「繁昌亭落語家入門講座」新・主任講師、露の都師匠。
まずはこんなやり取りから。これで一気に場が和む。
会場をぐるり見渡して、欠席者のチェックも一瞬に行う。
「あら、和尚さんは?……ああ、そこにおったん?…おっちゃんは?……病気やてかいな。大丈夫なん?」
「あら、あの子、今日も休んでるんとちゃう?……誰かつながってる?音源を届けたってほしいねんわぁ…ああそう、ほな悪いけど、頼むわな」
まるでお茶の間。
しかし、それも稽古が始まると一転。
「うちの師匠(故・露乃五郎兵衛)は芝居が好きやから、こういうときの所作なんかすごいきれいねん。……この形、これを目に焼き付けといてな」
しかし、そのとき、一人の男性がずっとよそ見をしていた。
「おっちゃん、あんた、私がここ見といてって、見てなかったやろ?……ほな、おっちゃんだけ特別レッスン。ちょっとこっちに上がっといで」


おっちゃんとあだ名された男性と都師匠のそれはまるで夫婦漫才。
おっちゃんも照れくさそうだが、嬉しそうでもあった。
こんなお稽古が半年間。
この初級コースを終えた受講生たちは、中級コースへと進級する者、あるいは、もう一度初級を志願する者、他のサークルに入って活動を始める者……みなそれぞれだ。でも、受講者の多くは進級という選択を取る。
この日は、「繁昌亭落語家入門講座・初級コース16期生」の修了式&発表会が開かれた。
都師匠にとっては、この講座で初めて受け持った受講生たち。
いわゆる「都チルドレン」第一号も面々だ。
朝の9時半から一階席のほぼ全席が埋まるという盛況ぶりだった。
しかも、お客のノリがいい。


ぼくのここでのサブ講師歴は13期からなのでかれこれ2年ということになる。
今回から大きく変わったのはまず主任講師の交代であった。
15期までは桂米朝師匠門下の桂米輔師が7年以上にわたって勤められた。
今期から、露の都師匠が受け持つことに。
昭和49年、露の五郎兵衛(故)に入門。
東西通じて、女流落語家第一号である。
主婦ならではの身辺雑記「みやこばなし」などで人気を博す。
平成22年文化庁芸術祭優秀賞。
「わたし、どう進めていったらいいかわからんから、蝶六くん、教えてや」
「お姉さんが主任やから、お姉さんの思うようにやらはったら」
もちろん、前任の米輔師匠も厳しさと丁寧さにおいて定評があった。
これまでぼく自身が先輩方につけてもらったことのないような細かな指導で、
ずいぶん勉強になった。
しかし、前例は前例。
都師は、ここ以外にも合計8か所の教室で指導されている。
すでに講師としての実績もじゅうぶんにお持ちである。
「全12回で、最後は発表会やね……ということは11回の稽古日」
「そういうことになります」
「で、発表は選ばれた人だけ」
「そうです」
「全員、上げたらあかんの?」
「ぜ、全員ですか?……20名近くになりますよ」
「これまでも、一席を3名でリレーしてたんでしょ。そやから、それを全員で」
都師の案で、稽古する演目をこれまでの2席から1席に減らして、
しかもそれを全員で演じることになった。
当日は転勤や病気などで欠席される方を除いて14名のリレー落語である。
「蝶六くん、わたしね、引き受けるのを最初はちょっと躊躇してたけど、
やらしてもうて良かったと思うわ」
繁昌亭入門講座と、都師が他に持たれている教室との違いは、
回数が決まっているか否かということである。
繁昌亭講座では、決められた枠のなかで、
確実に達成してもらわなければならない。
講師にとって、これが意外にプレッシャー。
ぼくも自宅の稽古場で『愚か塾』というのを開いているが、
こちらは、仕上げなければならない時間が特に決まっておらず、
ずいぶんのんびり進めさせてもらっている。
繁昌亭主任講師のプレッシャーはきっと相当なもん。
米輔師匠も、7年間、よく頑張られたなあ。
さて、発表会を終えて、都師とぼくと繁昌亭支配人、寄席文字の橘右一郎師は
謝恩会に招かれた。
締めには、お花と共に「仰げば尊し」の合唱をプレゼントしてもらった。
色紙も嬉しかった。


……受講生の発表が終わって都師がふと漏らした一言をぼくは忘れない。
「蝶六くん、この人らがウケてるって、
自分がウケるより、なんか、めっちゃ嬉しいわあ」
そういえば、弟子の紫ちゃんが「繁昌亭大賞輝き賞」をもらったときも、
都師匠はずいぶんご満悦だった。
都師匠はきっと、
「育てる」「教える」のが根っから性に合っているんだろうなあ。
次回の募集は、もうすでに始まっています。
興味を持たれた方は、下をクリックしてみてください。
繁昌亭入門講座17期生募集中
いかに、相手の心を一瞬にしてつかむか、
それを学びたい方はぜひ!
都師匠が目の前で実践して教えてくださいます。
桂蝶六の新公式サイト「蝶の花道」はこちらから
「そうそう、前髪上げたらええ感じやで。その方があんた男前。表情もようわかってええで」
「わたしもがんばるから、みんな、私についてきてや。信じて!この都を!!」
「繁昌亭落語家入門講座」新・主任講師、露の都師匠。
まずはこんなやり取りから。これで一気に場が和む。
会場をぐるり見渡して、欠席者のチェックも一瞬に行う。
「あら、和尚さんは?……ああ、そこにおったん?…おっちゃんは?……病気やてかいな。大丈夫なん?」
「あら、あの子、今日も休んでるんとちゃう?……誰かつながってる?音源を届けたってほしいねんわぁ…ああそう、ほな悪いけど、頼むわな」
まるでお茶の間。
しかし、それも稽古が始まると一転。
「うちの師匠(故・露乃五郎兵衛)は芝居が好きやから、こういうときの所作なんかすごいきれいねん。……この形、これを目に焼き付けといてな」
しかし、そのとき、一人の男性がずっとよそ見をしていた。
「おっちゃん、あんた、私がここ見といてって、見てなかったやろ?……ほな、おっちゃんだけ特別レッスン。ちょっとこっちに上がっといで」


おっちゃんとあだ名された男性と都師匠のそれはまるで夫婦漫才。
おっちゃんも照れくさそうだが、嬉しそうでもあった。
こんなお稽古が半年間。
この初級コースを終えた受講生たちは、中級コースへと進級する者、あるいは、もう一度初級を志願する者、他のサークルに入って活動を始める者……みなそれぞれだ。でも、受講者の多くは進級という選択を取る。
この日は、「繁昌亭落語家入門講座・初級コース16期生」の修了式&発表会が開かれた。
都師匠にとっては、この講座で初めて受け持った受講生たち。
いわゆる「都チルドレン」第一号も面々だ。
朝の9時半から一階席のほぼ全席が埋まるという盛況ぶりだった。
しかも、お客のノリがいい。


ぼくのここでのサブ講師歴は13期からなのでかれこれ2年ということになる。
今回から大きく変わったのはまず主任講師の交代であった。
15期までは桂米朝師匠門下の桂米輔師が7年以上にわたって勤められた。
今期から、露の都師匠が受け持つことに。
昭和49年、露の五郎兵衛(故)に入門。
東西通じて、女流落語家第一号である。
主婦ならではの身辺雑記「みやこばなし」などで人気を博す。
平成22年文化庁芸術祭優秀賞。
「わたし、どう進めていったらいいかわからんから、蝶六くん、教えてや」
「お姉さんが主任やから、お姉さんの思うようにやらはったら」
もちろん、前任の米輔師匠も厳しさと丁寧さにおいて定評があった。
これまでぼく自身が先輩方につけてもらったことのないような細かな指導で、
ずいぶん勉強になった。
しかし、前例は前例。
都師は、ここ以外にも合計8か所の教室で指導されている。
すでに講師としての実績もじゅうぶんにお持ちである。
「全12回で、最後は発表会やね……ということは11回の稽古日」
「そういうことになります」
「で、発表は選ばれた人だけ」
「そうです」
「全員、上げたらあかんの?」
「ぜ、全員ですか?……20名近くになりますよ」
「これまでも、一席を3名でリレーしてたんでしょ。そやから、それを全員で」
都師の案で、稽古する演目をこれまでの2席から1席に減らして、
しかもそれを全員で演じることになった。
当日は転勤や病気などで欠席される方を除いて14名のリレー落語である。
「蝶六くん、わたしね、引き受けるのを最初はちょっと躊躇してたけど、
やらしてもうて良かったと思うわ」
繁昌亭入門講座と、都師が他に持たれている教室との違いは、
回数が決まっているか否かということである。
繁昌亭講座では、決められた枠のなかで、
確実に達成してもらわなければならない。
講師にとって、これが意外にプレッシャー。
ぼくも自宅の稽古場で『愚か塾』というのを開いているが、
こちらは、仕上げなければならない時間が特に決まっておらず、
ずいぶんのんびり進めさせてもらっている。
繁昌亭主任講師のプレッシャーはきっと相当なもん。
米輔師匠も、7年間、よく頑張られたなあ。
さて、発表会を終えて、都師とぼくと繁昌亭支配人、寄席文字の橘右一郎師は
謝恩会に招かれた。
締めには、お花と共に「仰げば尊し」の合唱をプレゼントしてもらった。
色紙も嬉しかった。


……受講生の発表が終わって都師がふと漏らした一言をぼくは忘れない。
「蝶六くん、この人らがウケてるって、
自分がウケるより、なんか、めっちゃ嬉しいわあ」
そういえば、弟子の紫ちゃんが「繁昌亭大賞輝き賞」をもらったときも、
都師匠はずいぶんご満悦だった。
都師匠はきっと、
「育てる」「教える」のが根っから性に合っているんだろうなあ。
次回の募集は、もうすでに始まっています。
興味を持たれた方は、下をクリックしてみてください。
繁昌亭入門講座17期生募集中
いかに、相手の心を一瞬にしてつかむか、
それを学びたい方はぜひ!
都師匠が目の前で実践して教えてくださいます。
桂蝶六の新公式サイト「蝶の花道」はこちらから
- 関連記事
-
- 146.師匠自慢~繁昌亭落語家入門講座~ (2015/09/30)
- 129.露の都の育て上手・教え好き~繁昌亭入門講座16期・後記~ (2015/03/15)
- 105.稽古人に育てられる日々~『愚か塾』発表会後記~ (2014/02/18)
- 99.リアルかリズムか 繁昌亭落語家入門講座12 (2013/10/20)
- 98.草落語の時代 繁昌亭落語家入門講座11 (2013/09/20)
- 93.リラックスな緊張 繁昌亭落語家入門講座10 (2013/09/03)
- 90.”修行論(内田樹)”より 繁昌亭落語家入門講座9 (2013/08/15)
- 84.彼が落語家になった理由 繁昌亭落語家入門講座8 (2013/07/04)
- 83.落語の効用について 繁昌亭落語家入門講座7 (2013/06/28)
- 81.阿呆に寄せる眼差し 繁昌亭落語家入門講座6 (2013/06/20)
- 79.天ぷらと落語 繁昌亭落語家入門講座5 (2013/06/06)
- 74.指南の技 繁昌亭落語家入門講座4 (2013/05/24)
- 66.個性って滲み出るもの 繁昌亭落語家入門講座3 (2013/05/10)
- 58.教えて教えられる 繁昌亭落語家入門講座2 (2013/04/25)
- 48.繁昌亭落語入門講座 (2013/04/12)