135.襲名秘話~写真家との出会い~
蝶六改メ、三代目桂花團治襲名 - 2015年05月20日 (水)




「高座を撮らせてもらえませんか?」と相原先生。
「是非!!……ただシャッター音が出ないようにして頂けますか?」とぼく。
構造上、一眼レフにとってカシャッという音は避けられない。
メカに疎いぼくはそんなことなどまるで眼中になかった。
相原先生は少し困った顔をされた。
それでも、「分かりました」とにこやかに応え、
「近日中に連絡をしますので」とおっしゃって、その日は別れた。
それからしばらく経ったある日のこと、
意気揚々とした声で先生からの電話。
「喜んでください!!音の件、何とかなりそうですよ!!」
正直に申せば、その時も内心「何のこっちゃ!?」という感じだった。
「今ちょうど、そういうカメラをフジフイルムが開発中でしてね、
それを使わせてくれることになったんですよ!!!」
つまり、ぼくが被写体としてのモニターになるということだった。
「来春に発表予定なので、絶対に秘密ですよ!!!」

そもそも相原先生との出会いは去年の元旦。
ホテルニューオオタニ大阪の新春企画でぼくはそこを訪れていた。
2回公演のその合間にたまたま通りかかったホテル内での写真展。
入り口から覗くと、飛び込んできたのがダイナミックな自然の姿。
次に目に入ったのが、まぎれもない富士山。
「まぎれもない」というのは、
確かに富士山には違いないが、
一般的なそれとはイメージが大きくかけ離れていたからだ。
どんよりと雲が重くのしかかった富士山。
雲の切れ目からチョコットだけ太陽が覗いていた。
小さな希望がこれからサーっと広がっていくような、
暗いトーンだけど、明るい兆しを感じさせる一枚だった。
そういえば、相原先生の著のなかにこんな記述があった。
周りの写真仲間が、今日の天候はダメだな、そこのエリアはつまらないよといったら、そこはもしかしたら、独自の世界が撮れる特等席かも知れないと思ってください。

その日、ぼくと相原先生は1時間以上も話し込んだ。
芸のこと、写真のこと……
そこから冒頭の言葉に至った。


襲名に向けて行事が目白押しだったこと。
フジフイルムがシャッター音のしないカメラを開発中だったこと。
先生とぼくがたまたま出会ったこと。
これらの偶然の重なりが、今回の作品群につながった。
このカメラが、楽屋のいろんな表情をも切り取った。
このことが見る人の「落語」への興味・関心に繋がっていくだろう。
ぼくはそう確信している。

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