136.襲名秘話~後ろ幕の革命~
蝶六改メ、三代目桂花團治襲名 - 2015年05月22日 (金)
「革命ですよね」
電話の向こうで、とある新聞記者がおっしゃった。
確かにこれまでの後ろ幕は、古典柄が一般的で、
このようなものは、ぼくも見たことがない。
ある関係者の一人は、事前にこのデザインを見て、
「こういうものは何か決まりのようなものがあるのでは?」
「大丈夫ですか?」とも言った。
でも、ぼくはどうしても西口先生に描いてもらいたかったし、
今までにないものを期待していた。
前例がない方がいいに決まっている。
結果、先生にお願いして大正解だった。

左から、桂春之輔、桂福團治、ぼく、桂文枝、桂ざこば

絵:西口司郎、寄席文字:橘右一郎(撮影:相原正明)
先生との出会いはかれこれ22年前ぐらい前。
うちの師匠(二代目桂春蝶)が亡くなってしばらく経った頃。
ちょうどその頃、ぼくは師匠の一周忌追善公演の準備に追われていた。
そんな最中、知人に「会わせたい人がいる」と言われ、ライブに連れていかれた。
ぼくはてっきりそのミュージシャンかと思っていたら、
そうではなく、イラストレーターの先生だった。
「先生のイラスト、是非見せてください!」
知人が鞄から高村薫『マークスの山』を取り出した。
「うわあ、これ、先生が描かれたんですかぁ!確かこれ、書店で平積みされてますよね」

ブラックジャックも先生の作品。
それからすぐにライブが始まったので、お互いそちらに集中した。
飲み会があって別れ際、先生は名刺を出しながらおっしゃった。
「何かぼくで役立つことがあれば、いつでもいらっしゃい」
その翌日、ぼくは西口先生のアトリエを訪ねた。
師匠が亡くなったこと、どうしても追善を成功させなければならないこと。
自分でも本当によく喋ったと思う。
ぼくが思いを一気に語ったところで先生がポツリとおっしゃった。
「じゃあ、その追善のチラシをぼくが担当すればいいかな?」
「あ、ありがとうございます!!!」
今、思えばずいぶん無鉄砲なことだった。
当たり前ならちゃんとアポを取らなければなかなか会えない方。
「いつでも~」と言われたにせよ、本当に無礼な話だった。
若気のいたりも良いことがある。
でも、それ以来、チラシのことのみならず、
いろんな芸術家と引き合わせてくれた。
そんな付き合いから、
ぼくはミュージカル劇団『ふるさときゃらばん』のステージに立てたし、
狂言の稽古を始めるようにもなった。
ぼくが異物の交流というイベントを手がけるようになったのもここからである。
ちなみに、人形劇団『クラルテ』代表の高平和子さんは先生の奥様。

司郎先生のまわりには、いろんな芸術家や芸人、パフォーマーが集まった。そんな仲間をきっかけに月1回「異物の交流」という催しを始めた。気がつけば、かなりな大所帯になっていた。それを記念して開催したのが「浪花コラボレ祭り」だった。
・・・・・・今から12年前、
20周年記念の落語会には、先生からこんな祝辞をいただいた。
木を描いているのに「木」を見せない。
水を描いているのに「水」を見せない。
絵描きも落語も、表現者としての心は同じです。
年月を経て、初めて見えてくる風景があります。
六つの蝶が乱舞するであろう会を楽しみにしています。
おめでとうございます。(イラストレーター・西口司郎)

ぼく(左)と、西口司郎先生 (この包みのなかに、後ろ幕の原画)
ところで、まるで写真のようなリアルさが先生の絵の特徴だが、
後ろ幕を近くでよく見ると、さほどリアルではない。
これは、遠目に見ることを計算されて描かれたとのこと。
また、描いたものをプリントするのでその辺りも計算されている。
ともあれ、ぼくはこの後ろ幕をとてもとても気に入っている。

撮影:相原正明
さて、次回この後ろ幕が御開帳となるのは8月2日の東京公演。
国立演芸場にて。
まもなくチラシが上がります。
(出来次第、ブログにもアップさせていただきます)
東京ゲストはこの方 ↓↓↓

ぜひ、後ろ幕も併せて、お楽しみください。
ご来場をお待ちしております。
相原正明が見た落語の世界はこちらから
電話の向こうで、とある新聞記者がおっしゃった。
確かにこれまでの後ろ幕は、古典柄が一般的で、
このようなものは、ぼくも見たことがない。
ある関係者の一人は、事前にこのデザインを見て、
「こういうものは何か決まりのようなものがあるのでは?」
「大丈夫ですか?」とも言った。
でも、ぼくはどうしても西口先生に描いてもらいたかったし、
今までにないものを期待していた。
前例がない方がいいに決まっている。
結果、先生にお願いして大正解だった。

左から、桂春之輔、桂福團治、ぼく、桂文枝、桂ざこば

絵:西口司郎、寄席文字:橘右一郎(撮影:相原正明)
先生との出会いはかれこれ22年前ぐらい前。
うちの師匠(二代目桂春蝶)が亡くなってしばらく経った頃。
ちょうどその頃、ぼくは師匠の一周忌追善公演の準備に追われていた。
そんな最中、知人に「会わせたい人がいる」と言われ、ライブに連れていかれた。
ぼくはてっきりそのミュージシャンかと思っていたら、
そうではなく、イラストレーターの先生だった。
「先生のイラスト、是非見せてください!」
知人が鞄から高村薫『マークスの山』を取り出した。
「うわあ、これ、先生が描かれたんですかぁ!確かこれ、書店で平積みされてますよね」

ブラックジャックも先生の作品。
それからすぐにライブが始まったので、お互いそちらに集中した。
飲み会があって別れ際、先生は名刺を出しながらおっしゃった。
「何かぼくで役立つことがあれば、いつでもいらっしゃい」
その翌日、ぼくは西口先生のアトリエを訪ねた。
師匠が亡くなったこと、どうしても追善を成功させなければならないこと。
自分でも本当によく喋ったと思う。
ぼくが思いを一気に語ったところで先生がポツリとおっしゃった。
「じゃあ、その追善のチラシをぼくが担当すればいいかな?」
「あ、ありがとうございます!!!」
今、思えばずいぶん無鉄砲なことだった。
当たり前ならちゃんとアポを取らなければなかなか会えない方。
「いつでも~」と言われたにせよ、本当に無礼な話だった。
若気のいたりも良いことがある。
でも、それ以来、チラシのことのみならず、
いろんな芸術家と引き合わせてくれた。
そんな付き合いから、
ぼくはミュージカル劇団『ふるさときゃらばん』のステージに立てたし、
狂言の稽古を始めるようにもなった。
ぼくが異物の交流というイベントを手がけるようになったのもここからである。
ちなみに、人形劇団『クラルテ』代表の高平和子さんは先生の奥様。

司郎先生のまわりには、いろんな芸術家や芸人、パフォーマーが集まった。そんな仲間をきっかけに月1回「異物の交流」という催しを始めた。気がつけば、かなりな大所帯になっていた。それを記念して開催したのが「浪花コラボレ祭り」だった。
・・・・・・今から12年前、
20周年記念の落語会には、先生からこんな祝辞をいただいた。
木を描いているのに「木」を見せない。
水を描いているのに「水」を見せない。
絵描きも落語も、表現者としての心は同じです。
年月を経て、初めて見えてくる風景があります。
六つの蝶が乱舞するであろう会を楽しみにしています。
おめでとうございます。(イラストレーター・西口司郎)

ぼく(左)と、西口司郎先生 (この包みのなかに、後ろ幕の原画)
ところで、まるで写真のようなリアルさが先生の絵の特徴だが、
後ろ幕を近くでよく見ると、さほどリアルではない。
これは、遠目に見ることを計算されて描かれたとのこと。
また、描いたものをプリントするのでその辺りも計算されている。
ともあれ、ぼくはこの後ろ幕をとてもとても気に入っている。

撮影:相原正明
さて、次回この後ろ幕が御開帳となるのは8月2日の東京公演。
国立演芸場にて。
まもなくチラシが上がります。
(出来次第、ブログにもアップさせていただきます)
東京ゲストはこの方 ↓↓↓

ぜひ、後ろ幕も併せて、お楽しみください。
ご来場をお待ちしております。
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