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137.実演販売~マーフィー岡田氏に遭遇した~

花團治襲名披露、暖簾から花團治



先日、百貨店で買い物をしていると実演販売の声が聞こえてきた。
商売柄、こういうことにはいたって興味がある。
駆けつけてみたがすでにそこは人だかり。
販売士のエプロンには大きく「マーフィー岡田」と刺繍が施されていた。
おそらく今、日本で一番有名な実演販売士であろう。

ちなみに「マーフィー」の名づけ親は、上岡龍太郎師匠である。

マーフィー岡田実演中

お決まりの「見て!見て!見て!見て!」のフレーズも聞けました!

マーフィー岡田氏の実演販売(YouTube)

マーフィー岡田、ピーラー
商品は万能ピーラーにおろし器、レモン絞り器。ぼくはピーラーとおろし器を購入。モノがいいのは勿論のこと、半分以上は素晴らしい芸を聞かせてもらったお代として。


七五調の口上が実に心地いい。
「ユズ・橙・ネーブル・ポンカン・夏蜜柑・オレンジ・八朔・グレープフルーツ・ザボンでつくればザボンのジュース。中からジュースがザボンざぼん」「お刺身を活かす殺すもツマ次第」「ここまできれいなキャベツの千切り」「固くて細くて切りにくい」「あとは勇気と努力と決断力!」「見て、見て見て見て」


同じ喋る商売でも落語家とは大違い。
まずお客がすべて通行人。
歩く人の足を止めさせ、笑わせたり感心させたり、
お代はすべて口上のあと。

ちょっとでも飽きられればお客は通り過ぎていき商売はあがったり。
落語のように先にお金(入場料)を頂戴するということはあり得ない。
我々のように「取ったらもぎ取り」とはわけが違う。
実演販売は命懸けだ。


「マーフィーの売れる法則」という一冊のなかで氏は強調されていること。

「相手の感情を優先させ、相手より一歩下がること」

「お客様との位置関係も、お客様から見て私のほうがちょっと下。これぐらいでちょうどバランスがいいし、私も商品が売りやすい」


自分の論理で相手をねじ伏せたり、相手の考え方を変えようとすると必ず抵抗にあう。

マーフィー岡田の本表紙

マーフィー岡田「売れる法則」アマゾン


以前、懇意にさせてもらっているちんどん屋さんの林幸治郎さんが
ぼくにこんなことをおっしゃった。

「ちんどんの音楽は上手く演奏して感心させてしまってもいけない。あれぐらいやったら私にもできるって思わせる。これも手なんですよ」。

船乗り込み4

船乗り込み、小春團治

ちんどん通信社の林幸治郎。ぼくの襲名では「船乗り込み」の先導を務めてくださった。(撮影:相原正明)


確かにちんどん音楽は聞くものをほんわかさせ、「親近感」さえ抱かせる。
かつてこのちんどん屋には、今や世界的にも有名なギタリストが
食えない時分にアルバイト先としてここを頼っていた。

「彼はねえ、あまりに上手すぎてちんどんには向いてなかったですね。音を外すということはプライドが許さない。つい聞きこませてしまうんですよね」と林氏。

褒めているんだかけなしているんだか。いや、もちろん誉めている。
同じ音楽家でもアーティストと商売人では流儀が違う。

ちんどんの目的は音楽を聞かせるということよりも、いかに宣伝するか。
上手く演れたうえで少々下手に見せるという実に奥の深い芸なのだ。


 ところで、桂勢朝という親愛なるぼくの先輩。
この方は南京玉すだれの名手としても定評がある。
寄席通のなかでは周知のことだが失敗するところがいつも同じ。
つまり、これはわざとそうしている。
なかなか上手くいかないと見せかけておいて最後には必ず成功させる。ハラハラドキドキと笑いが交錯するこの芸は何度見ても面白い。
お約束ごとながら予定調和に見せない。
わざと失敗できるのも「確実にこなせる」からこそできる芸当。

南京玉すだれという芸を上手く見せることより、
いかに楽しんでもらうかが最優先なのだ。

桂勢朝、玉すだれ
玉すだれを披露する桂勢朝師(池田アゼリアホールにて) 撮影:相原正明


すべてのプロには、
それぞれプロとしての流儀と理屈があるもんです。



というわけで、
最後にマーフィー岡田さんの本のなかからこんな言葉を紹介しておきたい。

「好きなことを好きなだけやるのがアマチュア。それに引き換え、好きなことが嫌で嫌でたまらなくなるまでやって、それが鼻につくまでやってみて、そこからスタートするのがプロ」

「プロとは何かを犠牲にしてそれを乗り越え、しかも当人はそのことをおくびにも出さず、誰にも気づかれずさらっと仕事をしています。それがプロの鏡。アマチュアは一つのことをなすために、努力はしても犠牲にするものがありません」

「トラブルが起きたとき、アマチュアは上手に誤魔化そうとします。これに対して、上手に謝るのがプロフェッショナルであります」。



……嗚呼、うさぎのとんぼり返り!耳の痛~いことをおっしゃいます!!




熊本「リフティングブレーン社」の社誌「リフブレ通信」で連載中の「落語の教え」という拙文を、
加筆のうえ、ここに掲載させていただきました。



船乗り込み、後ろ姿
襲名成功祈願のため、呉服神社へ向かう春團治一門。感謝感謝。(撮影:相原正明)


写真家・相原正明のつれづれフォトブログはこちらから


桂花團治公式サイトはこちらから
東京公演に備えてただいまリニューアル工事を急いでいる最中です。
情報が少々古いですが、ぜひこちらもご覧ください。



ちんどん通信社のサイトはこちらから







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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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