157.恩送り~師匠のおかげです~
蝶六改メ、三代目桂花團治襲名 - 2016年02月21日 (日)
「恩送り」という言葉があります。
「恩返し」じゃなくて、「恩送り」。
襲名のおはなしを頂いてから、その準備期間も入れると、
すでに二年近くになるわけですが、
日々「恩送り」を感じずにはいられませんでした。
落語家の諸先輩方のもとへ挨拶に伺うと、よく耳にしたのが、
「春蝶兄さんには、ずいぶん世話になったんや」というお言葉。

故・二代目桂春蝶(1995年1月4日没、享年51)
東京の国立演芸場での御披露目。
笑福亭鶴瓶師匠は、すでに決まっていたスケジュールを、
方々に頭を下げてまで、こちらの予定に合わせて下さったのです。
そればかりか、動員が思うように進んでいないのを知った鶴瓶師匠は、
わざわざ自身のラジオ番組にぼくをゲストとして呼んでくれて、
おおいに宣伝に務めてくださいました。
おまけにポケットマネーで新幹線代と、別にご祝儀まで。
「こいつ、わざわざ大阪から祝儀もらいに来よったんや、
俺はえらい災難や、ガハハ……」。

文化放送「笑福亭鶴瓶のそれ」収録現場にて
そのラジオ番組のなかでこんな一コマがありました。
「俺が春蝶兄さんとこの一番弟子みたいなもんや」
「???」
「俺が春蝶兄さんにずっとついてたんはお前も知ってるやろ?」
「はい、それはもう、よく知ってます」
「俺は春蝶兄さんにずいぶん可愛がってもうたんや。恩義があんねん」

左から、桂春雨、桂春之輔、ぼく、笑福亭鶴瓶、柳亭市馬(落語協会会長)
また、池田アゼリアホールでは桂文枝師匠にも並んで頂き、
そのあと、ぼくは、桂文枝師匠率いる、
上方落語プルメリアボーイズの一員にも加えて頂きました。
ハワイアンのバンドです。
その練習の打ち上げの席でした。
文枝師匠が「ぼくの隣に坐り」とおっしゃって下さいました。
「ぼくは入門する時、春蝶兄さんについてきてもうたんや。
高校の先輩やし、まず春蝶兄さんに相談してな。
……入門してからも、ようお叱りの電話をもろてな」
それは、ぼくも師匠の家に住み込みの頃、憶えがあります。
文枝師匠のところに電話を掛けたことがありました。
「おい、蝶六、三枝のとこに電話せい!」
ぼくがダイヤルを回しました。
文枝師匠が電話に出られると、ぼくは師匠に受話器を渡しました。
「今のぼくがあるのは春蝶兄さんのおかげや」
その打ち上げが終わって、
帰り間際に文枝師匠はぼくにこうおっしゃいました。
「今度はぼくの番やね」
つい先日、文枝師匠からご自身の創作落語を三つほど薦めていただきました。
「君にはこれが合うと思うねん」。
今、必死に台詞を身体に放り込んでいるところです。

左から桂春之輔、桂福團治、ぼく、桂文枝、桂ざこば

桂文枝と上方落語プルメリアボーイズ
これまでもそうですが、特にこの2年、
「恩送り」を感じなかった日はありません。
落語家の諸先輩方や関係者の皆さま、お客様方。
本当にたくさんの「恩送り」を頂きました。
ご贔屓さん方のこんな言葉が心に残っています。
「わしな、昔、にっちもさっちもいかなんだ時に、
助けてくれた人がおんねん」
「若いとき、よう人の世話になったわ」
「ぼくの顔見たら、食ってるか、ちゅうて、
必ず飯をおごってくれる人がおってな」
ぼくが今、
こうして落語家を続けていられるのは、
この「恩送り」のおかげ。
ぼくもまた、これはもう義務です。
ところで、海外にも「恩送り」に似た考え方があります。
「Pay it forward(ペイ・イット・フォワード)」
「善意を他人へ回す」という考え方です。
映画「ペイ・フォワード(原題:Pay it forward)」(2000年制作)
教師から「世界を変える方法を考え、
それを実行してみよう」という課題を与えられた中学生が始めたのは、
「自分が受けた思いやりや善意を、その相手に返すのではなく、
別の3人の相手に渡す」というものでした。
波紋は着実に広がり、彼の努力が報われていきました。
この映画の原作になったのは、原題と同名の小説。
その小説が生まれたきっかけは、
作者の車が治安の悪い町でエンストしたとき、
見知らぬ男二人が快く修理してくれたことだったそうです。
上についての詳しくは、無印良品のブログにありました。ここをクリックしてみてください。


◆ 3月12日(土)・13日(日)に
写真家・相原正明先生とのジョイントトークを行います。
詳しくは、ここをクリック!!!

◆ らくごカフェ公演についての詳細は、こちらをクリック!!!
◆花團治のサイトが新しくなりました。
ここをクリック!!!
◆写真家・相原正明の
つれづれフォトブログは
ここをクリック!!!
「恩返し」じゃなくて、「恩送り」。
襲名のおはなしを頂いてから、その準備期間も入れると、
すでに二年近くになるわけですが、
日々「恩送り」を感じずにはいられませんでした。
落語家の諸先輩方のもとへ挨拶に伺うと、よく耳にしたのが、
「春蝶兄さんには、ずいぶん世話になったんや」というお言葉。

故・二代目桂春蝶(1995年1月4日没、享年51)
東京の国立演芸場での御披露目。
笑福亭鶴瓶師匠は、すでに決まっていたスケジュールを、
方々に頭を下げてまで、こちらの予定に合わせて下さったのです。
そればかりか、動員が思うように進んでいないのを知った鶴瓶師匠は、
わざわざ自身のラジオ番組にぼくをゲストとして呼んでくれて、
おおいに宣伝に務めてくださいました。
おまけにポケットマネーで新幹線代と、別にご祝儀まで。
「こいつ、わざわざ大阪から祝儀もらいに来よったんや、
俺はえらい災難や、ガハハ……」。

文化放送「笑福亭鶴瓶のそれ」収録現場にて
そのラジオ番組のなかでこんな一コマがありました。
「俺が春蝶兄さんとこの一番弟子みたいなもんや」
「???」
「俺が春蝶兄さんにずっとついてたんはお前も知ってるやろ?」
「はい、それはもう、よく知ってます」
「俺は春蝶兄さんにずいぶん可愛がってもうたんや。恩義があんねん」

左から、桂春雨、桂春之輔、ぼく、笑福亭鶴瓶、柳亭市馬(落語協会会長)
また、池田アゼリアホールでは桂文枝師匠にも並んで頂き、
そのあと、ぼくは、桂文枝師匠率いる、
上方落語プルメリアボーイズの一員にも加えて頂きました。
ハワイアンのバンドです。
その練習の打ち上げの席でした。
文枝師匠が「ぼくの隣に坐り」とおっしゃって下さいました。
「ぼくは入門する時、春蝶兄さんについてきてもうたんや。
高校の先輩やし、まず春蝶兄さんに相談してな。
……入門してからも、ようお叱りの電話をもろてな」
それは、ぼくも師匠の家に住み込みの頃、憶えがあります。
文枝師匠のところに電話を掛けたことがありました。
「おい、蝶六、三枝のとこに電話せい!」
ぼくがダイヤルを回しました。
文枝師匠が電話に出られると、ぼくは師匠に受話器を渡しました。
「今のぼくがあるのは春蝶兄さんのおかげや」
その打ち上げが終わって、
帰り間際に文枝師匠はぼくにこうおっしゃいました。
「今度はぼくの番やね」
つい先日、文枝師匠からご自身の創作落語を三つほど薦めていただきました。
「君にはこれが合うと思うねん」。
今、必死に台詞を身体に放り込んでいるところです。

左から桂春之輔、桂福團治、ぼく、桂文枝、桂ざこば

桂文枝と上方落語プルメリアボーイズ
これまでもそうですが、特にこの2年、
「恩送り」を感じなかった日はありません。
落語家の諸先輩方や関係者の皆さま、お客様方。
本当にたくさんの「恩送り」を頂きました。
ご贔屓さん方のこんな言葉が心に残っています。
「わしな、昔、にっちもさっちもいかなんだ時に、
助けてくれた人がおんねん」
「若いとき、よう人の世話になったわ」
「ぼくの顔見たら、食ってるか、ちゅうて、
必ず飯をおごってくれる人がおってな」
ぼくが今、
こうして落語家を続けていられるのは、
この「恩送り」のおかげ。
ぼくもまた、これはもう義務です。
ところで、海外にも「恩送り」に似た考え方があります。
「Pay it forward(ペイ・イット・フォワード)」
「善意を他人へ回す」という考え方です。
映画「ペイ・フォワード(原題:Pay it forward)」(2000年制作)
教師から「世界を変える方法を考え、
それを実行してみよう」という課題を与えられた中学生が始めたのは、
「自分が受けた思いやりや善意を、その相手に返すのではなく、
別の3人の相手に渡す」というものでした。
波紋は着実に広がり、彼の努力が報われていきました。
この映画の原作になったのは、原題と同名の小説。
その小説が生まれたきっかけは、
作者の車が治安の悪い町でエンストしたとき、
見知らぬ男二人が快く修理してくれたことだったそうです。
上についての詳しくは、無印良品のブログにありました。ここをクリックしてみてください。


◆ 3月12日(土)・13日(日)に
写真家・相原正明先生とのジョイントトークを行います。
詳しくは、ここをクリック!!!

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