158.落語的編集稽古の薦め~プロにはプロの理屈があんねん~
※ 最後に落語イベント(東京・豪徳寺)のお知らせがございます。
「プロにはな、プロの理屈があんねん」
入門して間がない頃、師匠の二代目桂春蝶から教えられた言葉だ。

桂春蝶( 1993年1月4日没、享年51)撮影:後藤清
ところで、あれは今から6年前のこと。
ぼくは、ある企業で講座を持った。
その企業の社員研修はとてもユニークで、
それまでもネイルアーティスト、ミュージシャン……
各方面からいろんな講師を招き、社員の感性を刺激することを目的としていた。
ぼくもその研修の講師として招かれた一人だった。
講座を終えて、その帰りの新幹線の車中でのこと。
研修をコーディネイトしてくれたプランナーの藤井百々さんに、
ぼくは、その日の感想と改善案がないかアドバイスを求めた。
遠慮がちに彼女が口にしたアドバイスの数々。
その的確さに、ぼくは目からウロコの連続だった。

襲名興行にあたり、制作スタッフになってもらうよう藤井百々さんにお願いした。
左:桂治門くん、右:藤井百々さん。)撮影:相原正明

襲名事務局(東西屋・ちんどん通信社に社屋)にて(手前右から二人目が藤井百々さん)
撮影:相原正明
ぼくはさらに質問をぶつけてみた。
「どのような勉強をすれば、
そういう見方や考え方を
身につけられるものなんですか?」
今から思えば、ずいぶん唐突な質問だったと思うが、
藤井さんは、あれやこれや真摯にそれに応えてくれた。
その回答の中で、
ぼくが特に興味を惹かれたのがウェブのイシス編集学校だった。
藤井さんはそこの師範代(教える立場)でもあった。
ぼくは帰宅するなり、ネットで検索してみた。
「イシス編集学校」のサイトはここをクリック
『例えば、昨日みた映画、一日のスケジュール、国の法律、海外旅行のプラン、ふだんの会話、
これらがどのように編集されているかというと、なかなか取り出すことができません。
そこで、それぞれのシーンで、使われていた「方法」をとり出し、
さまざまな場面や局面に活かすようにしてみようというのが「編集術」になります。
「方法」を修得して、利用し、応用します。』
この言葉で、ぼくの脳裏に
師匠のあの言葉が蘇ってきた。
「お客さんはな、アハハと笑ってたらええ。
けどな、わしらはプロやから
プロにはプロの理屈があんねん」
ぼくは夜間高校や大学にも出講している。
これはもう学生のためにも自分のためにも受講するしかない。
落語になんの興味も関心も無い学生に、
落語をどうアプローチしていくか?
これは当時のぼくにとって早急の課題だった。

昨年7月、ぼくは東京・豪徳寺にある編集学校の本楼を訪れた。
この学校で学び始めたとたん、ぼくは夢中になった。
携帯やハンカチ、ちり紙は忘れても、
メモとペンだけは絶対に忘れなかった。
すぐに書き留めないと、
浮かんだアイデアがこぼれて、
どこかに行ってしまいそうだった。
そこに登場する校長の名前を目にして、
ひとつ思い当たることがあった。
「松岡正剛……この名前はぼくにとって初めてじゃない」
本棚をひっくり返してみた。
やっぱりそうだった。
芸大生だったあの頃、
先輩の誰かに薦められて、大学の購買部で買ったものだ。
夢中になって読んだ「遊」という雑誌、
その編集長が松岡正剛だった。

「遊」工作舎・1981年発行(その頃、そのほとんどをまるで理解することができなかったが、
それを携帯している自分に酔いしれていた。
当時のぼくにとって、それはファッションのようなものだった。
大学を中退して20数年。あの頃チンプンカンプンだった記述も、少しは理解できるようになった。
全ての職業が、プロを自負する以上、
そこには必ず理屈というものが伴う。
また、その理屈=方法を抜き出したとき、
それは他のジャンルに必ず応用できる。
最初は「落語の授業」に役立てたらと思って受講したが、
自分の見方・考え方を自覚することにもつながった。
◆ そんなご縁がまわりまわって、このたび、不肖・桂花團治が
イシス編集学校にて語らせていただくことになりました。
「本楼落語 春まちの二」
2016.3.19 Sat | PM 14:00~16:30 | 5000yen
________________________________________
ゴートクジISIS、一日限りの寄席「本楼落語」ふたたび。
高座にあがるは、三代目襲名で乗りに乗っている上方落語の桂花團治。
落語はもちろん狂言、俳優の経験を活かし、高校、大学で教鞭をふるう
「大阪で一番多く教壇に立つ落語家」でもある。
師匠のもうひとつの顔が、イシス編集学校の学衆。学んだ「編集術」を
落語に講義にぞんぶんに活かしているとか。二席の演目のあいだには
師匠からみなさんに落語的編集稽古を出題。
さて、どんな本楼落語になりますか。ご期待ください。
◆「イシスフェスタ」の詳細はこちらをクリック

ぼくがISIS編集学校で学んでいた頃、師範代を務めてくれた大久保佳代さんと、
襲名披露の楽屋にて。大久保さんは今回のイベントではナビゲータをつとめてくださいます。
撮影:相原正明
◆「イシスフェスタ」の詳細はこちらをクリック
◆花團治公式サイトはこちらをクリック
◆写真家・相原正明ブログサイトはこちらをクリック

「プロにはな、プロの理屈があんねん」
入門して間がない頃、師匠の二代目桂春蝶から教えられた言葉だ。

桂春蝶( 1993年1月4日没、享年51)撮影:後藤清
ところで、あれは今から6年前のこと。
ぼくは、ある企業で講座を持った。
その企業の社員研修はとてもユニークで、
それまでもネイルアーティスト、ミュージシャン……
各方面からいろんな講師を招き、社員の感性を刺激することを目的としていた。
ぼくもその研修の講師として招かれた一人だった。
講座を終えて、その帰りの新幹線の車中でのこと。
研修をコーディネイトしてくれたプランナーの藤井百々さんに、
ぼくは、その日の感想と改善案がないかアドバイスを求めた。
遠慮がちに彼女が口にしたアドバイスの数々。
その的確さに、ぼくは目からウロコの連続だった。

襲名興行にあたり、制作スタッフになってもらうよう藤井百々さんにお願いした。
左:桂治門くん、右:藤井百々さん。)撮影:相原正明

襲名事務局(東西屋・ちんどん通信社に社屋)にて(手前右から二人目が藤井百々さん)
撮影:相原正明
ぼくはさらに質問をぶつけてみた。
「どのような勉強をすれば、
そういう見方や考え方を
身につけられるものなんですか?」
今から思えば、ずいぶん唐突な質問だったと思うが、
藤井さんは、あれやこれや真摯にそれに応えてくれた。
その回答の中で、
ぼくが特に興味を惹かれたのがウェブのイシス編集学校だった。
藤井さんはそこの師範代(教える立場)でもあった。
ぼくは帰宅するなり、ネットで検索してみた。
「イシス編集学校」のサイトはここをクリック
『例えば、昨日みた映画、一日のスケジュール、国の法律、海外旅行のプラン、ふだんの会話、
これらがどのように編集されているかというと、なかなか取り出すことができません。
そこで、それぞれのシーンで、使われていた「方法」をとり出し、
さまざまな場面や局面に活かすようにしてみようというのが「編集術」になります。
「方法」を修得して、利用し、応用します。』
この言葉で、ぼくの脳裏に
師匠のあの言葉が蘇ってきた。
「お客さんはな、アハハと笑ってたらええ。
けどな、わしらはプロやから
プロにはプロの理屈があんねん」
ぼくは夜間高校や大学にも出講している。
これはもう学生のためにも自分のためにも受講するしかない。
落語になんの興味も関心も無い学生に、
落語をどうアプローチしていくか?
これは当時のぼくにとって早急の課題だった。

昨年7月、ぼくは東京・豪徳寺にある編集学校の本楼を訪れた。
この学校で学び始めたとたん、ぼくは夢中になった。
携帯やハンカチ、ちり紙は忘れても、
メモとペンだけは絶対に忘れなかった。
すぐに書き留めないと、
浮かんだアイデアがこぼれて、
どこかに行ってしまいそうだった。
そこに登場する校長の名前を目にして、
ひとつ思い当たることがあった。
「松岡正剛……この名前はぼくにとって初めてじゃない」
本棚をひっくり返してみた。
やっぱりそうだった。
芸大生だったあの頃、
先輩の誰かに薦められて、大学の購買部で買ったものだ。
夢中になって読んだ「遊」という雑誌、
その編集長が松岡正剛だった。

「遊」工作舎・1981年発行(その頃、そのほとんどをまるで理解することができなかったが、
それを携帯している自分に酔いしれていた。
当時のぼくにとって、それはファッションのようなものだった。
大学を中退して20数年。あの頃チンプンカンプンだった記述も、少しは理解できるようになった。
全ての職業が、プロを自負する以上、
そこには必ず理屈というものが伴う。
また、その理屈=方法を抜き出したとき、
それは他のジャンルに必ず応用できる。
最初は「落語の授業」に役立てたらと思って受講したが、
自分の見方・考え方を自覚することにもつながった。
◆ そんなご縁がまわりまわって、このたび、不肖・桂花團治が
イシス編集学校にて語らせていただくことになりました。
「本楼落語 春まちの二」
2016.3.19 Sat | PM 14:00~16:30 | 5000yen
________________________________________
ゴートクジISIS、一日限りの寄席「本楼落語」ふたたび。
高座にあがるは、三代目襲名で乗りに乗っている上方落語の桂花團治。
落語はもちろん狂言、俳優の経験を活かし、高校、大学で教鞭をふるう
「大阪で一番多く教壇に立つ落語家」でもある。
師匠のもうひとつの顔が、イシス編集学校の学衆。学んだ「編集術」を
落語に講義にぞんぶんに活かしているとか。二席の演目のあいだには
師匠からみなさんに落語的編集稽古を出題。
さて、どんな本楼落語になりますか。ご期待ください。
◆「イシスフェスタ」の詳細はこちらをクリック

ぼくがISIS編集学校で学んでいた頃、師範代を務めてくれた大久保佳代さんと、
襲名披露の楽屋にて。大久保さんは今回のイベントではナビゲータをつとめてくださいます。
撮影:相原正明
◆「イシスフェスタ」の詳細はこちらをクリック
◆花團治公式サイトはこちらをクリック
◆写真家・相原正明ブログサイトはこちらをクリック

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