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160.正論って、正しいんやろか?~萬歳の起源より~

♪争う人は正しさを説く、
正しさゆえの争いを説く。
その正しさは気分がいいか、
正しさの勝利が気分いいんじゃないのか。



ファッションブランドのコマーシャルにも使われていたので
聞き覚えのある方も多いんじゃないでしょうか?
中島みゆきの『Nobdy is Right』という曲です。

宮崎あおい、アースミュージック&エコロジーCM


この曲がテレビから流れてきたとき、
まだ落語家になって間もない昔を想いだしました。

桂蝶六(23歳)
若かりし頃のぼく。24歳ぐらい?


その頃のぼくはずいぶん尖がっていて
相手に食ってかかることも多かったんです。
贔屓のお客さんからは「君は理屈が多すぎる」とか、
「もっとくだけた方がいいんじゃないか」など
よくお叱りを受けたものでした。

師匠の家に住み込みの頃は、師匠の奥さんから

「蝶六さんは『そやけどね』が多すぎる。
『そうですね』でええんとちゃう?」
と言われたことも多々ありました。




今、思い返してみると全くもってその通り。

若い頃は「正しいことを言って何が悪いんだ」と
真っ向から相手に向かうことが多かったように思います。
相手が落ち込んでいるときでさえそうでした。
きっと相手はぼくに話を聞いてもらいたかっただけなのに、
「こういうときはこうすべきだ」と”正論”をまくしたてる自分がいました。

でも、実際は自分の都合のいいように
語っていただけなのかもしれません。



師匠の奥さんに対しては、ただの世間話なのにも関わらず、
「そやけどね」攻撃を仕掛けては話の腰を折り困らせていました。
「逆らう」ことが格好良いと思っていたところもありました。
まさに汗顔の至りです。

師匠の奥さんから
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい 」
という、
夏目漱石「草枕」の冒頭の言葉を教えて頂いたのもこの頃です。

春蝶の家族と共に
住み込みをしていた頃、師匠の家族と共に(手前の男の子が三代目春蝶)



「この世の中、正論だけでは息苦しい」ということをぼくに教えてくれたのは落語でした。


「落語とは業の肯定である」と定義したのは故・立川談志師匠。

「人間にはあらゆる欲や本能がある。
人間ってそういうものなんだ。
それを描いたのが落語なんだ」という主張です。


落語の登場人物に聖人君子は見当たりません。

蝶六、仁王変顔



話は変わりますが、
漫才のルーツをたどると平安時代にまで遡ります。
古くからの萬歳(エンタツ・アチャコ以前はこの表記でした)は
神々の来訪の様子をイミテーションしたものだという説があります。



思想家で人類学者の中沢新一氏は大阪アースダイバーのなかで
このように分析しておられます。

「神様でありながら、正しいことを言うだけでは不十分と考え、『正しいことには裏があり、それをいちがいに正しいことだけで運用するのは無理がある』と伝えようとして、神はいつも正しいことを言う神と、それを混ぜっ返す神のコンビで出現してきた。この二人の神を再現したものが萬歳の原型である」  大阪アースダイバー、講談社、2012年


スキャン_20160310


スキャン_20160310 (2)
大阪アースダイバー


よくよく考えると、
世の中の諍いはすべからく
「自分が正しい」という
意見のぶつかり合いから始まっています。

何が正しいかということは、
その人の置かれている立場や信条によって
大きく異なるもんですよね。

先日亡くなられた三代目桂春團治師匠に
こんなエピソードがあります。

ブログ:福團治、ぼく、春團治
(左から、桂福團治師匠、ぼく、桂春團治師匠)
撮影:相原正明



それはとある催しの楽屋での出来事ですが、
二人の芸人がささいなことで喧嘩になって、
その一人がその場にいた春團治師匠に
自分の言い分を聞いてもらおうと、
「まあ聞いてくださいな」と訴えかけると、
春團治師匠はすかさず

「聞かへん。聞いたら
どちらかの肩を持たなあかんようになる」
と突っぱねられたそうです。


その場に居合わせた方曰く、
春團治師匠はおそらく
喧嘩の原因も全て分かっておられたんだろう、とのことでした。

春團治師匠が「お前が悪い」と
一言おっしゃればそれで済んだかも知れません。
でも、それでは後で変なしこりを残してしまうという、
春團治師匠のご判断だったのでしょう。



正論で相手を打ち負かすことができても、
それでホンマに勝ったことになるんかなぁ。

……って、ぼくの理屈っぽいところはあまり治っていないようです。



月刊社報誌「リフブレ通信」に連載しているコラム「落語の教え」をもとに加筆、構成したものです。
毎回、書くことで考える機会を与えてくださっているリフティンブレーン社さんに、
この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
👉リフティングブレーンのサイトはこちらから






スキャン_20160221

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(トークショーは12日、13日)




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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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