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165.アノネ、がんばらなくてもいいからさ~熊本の友からもらったコトバ~

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撮影:相原正明


熊本のリフティングブレーンという会社には、
落語や講演で呼んでもらったり、
米などイロイロ食材を送ってもらったり、
襲名祝いに、高級な雪駄をいただいたり、
もうずいぶんとお世話になりっぱなしです。
こちらの社が毎月発行されている冊子にも、
5年以上にわたってコラムを連載させていただいてます。

それでこのたびの大地震。

ぼくはもうどうしていいやら、
そのことがずっと頭のなかにありました。
電話をするにも、
かえって迷惑になるんじゃないかなとか、
それで、この会社の一人で
とても親しくさせてもらっている友人のFacebookに、
何か情報が上がらないものかと待ち続けてました。
で、ようやく上がってきたメッセージ。

この時の気持ちをそのまま原稿にしました。
それが、以下の文章です。




落語の教え~アノネ、がんばらなくてもいいからさ~
桂花團治(落語家・大阪青山大学子ども教育学科客員教授)

「がんばる」というコトバを聞くと胸がざわめく。
死にたいほど辛かった時期、「がんばって」というコトバは、
ぼくにとって斬りつけられるような痛みを伴った。

だからといって、生半可な同情も辛い。
それなら、「がんばって」の方がまだ救いがあるような気がする。

……そんな思いがうずまき、
話の専門家であるはずのぼくがコトバを失っている。
スーパーで「熊本産」を見つけたらカゴに入れる、
ということぐらいしかできない自分がいる。

ぼくがお世話になっている熊本の知人は
みんな情に厚くて世話好きでがんばり屋さんばかり。
だから、きっと弱音を吐かずに笑顔を振りまいているに違いない。
電話したら「平気、平気、心配しなくて大丈夫」って応えるような気がする。
でも、それがかえってつらい。
こんなときだからこそむしろ弱音を吐いてもらった方が嬉しい。
ぼくにはどうにもできないことばかりだけれど、
それで気持ちが和らぐのであれば、
話を聞くぐらいのことしかできないかも知れないが、いくらでも引き受けたい。

ぼくは商売柄、「笑う」ことの大切さを説いて回っているけれど、
本当はおおいに「泣く」ことだって同じほど心身のために必要であることぐらい、
ぼくだって知っている。

落語の教えは、故・立川談志師匠のいうように「業の肯定」だ。
聖人君子なんてありえない。人間は弱い存在なんだ。
それを認め合うからこそ助け合う。これが落語のイズムでもある。

だから自分を見せたっていい。
ときには吐き出すこともしないと、かえって身体に毒だ。
それと、ぼくがもうひとつ気になっているのは
落ち着いてからのこと。衣食住が何とか行きわたったとき、
ボランティアの多くは帰っていく。
その頃に、今までの緊張の糸がほどけ、
虚しさに襲われてしまわないだろうか。


このところ、ぼくは悶々としていた。
何にもできないぼくは、
熊本の知人が何かフェイスブックにアップしないかと、ずっと待ち続けた。
だから、それが出た瞬間、食い入るようにそれを見つめ、
何度も何度も読み返した。

そして、ぼくの方が逆に勇気と元気をもらった。

 「被災、それでもタネをまく。
無農薬米の苗床作りしました。
……『アノネ、がんばらなくてもいいからさ、
具体的に動くことだね』。
作業中、ココロに浮かんだ
相田みつを氏の言葉です」。


コトバと共にさわやかな空の下、働く人々の写真が添えられていた。(了)


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・・・・・・で、この原稿を送ったあと、
すぐに、Facebookの彼から「近いうち、また飲もうよ」とメッセージをいただき、
また同じくお世話になっている同じ社の女性からも電話を頂戴しました。

「生きてるよ~」
「来て来て!!!落語をしに来て。みんな笑いたいんよ。待っとるよ」

案の定、元気なハリのある声でした。


・・・・・・今、落語会の計画を練っている最中。
待っててや~。



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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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