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16.落語の体験授業

先日、大阪のとある小学校の教諭を通じとても嬉しい便りが届けられた。
この学校では落語の体験授業をきっかけに落語クラブが発足していた。
先日その発表会が開かれ、後日児童や保護者の感想文をまとめたものを
学校側がわざわざ届けてくれたのだ。

「人前に出ることが苦手だと思っていた我が子が落語会に出ると聞いて正直意外だった。
当日はどうなることかと心配でしたが堂々とした姿に驚きました。
私の知らない間に娘はこんなに成長していました。
拍手や笑いをもらった時は本当に嬉しそうでした。
目標に向かって努力し実った時の充実感と達成感を忘れないで欲しい」

この児童は勉強がちょっと遅れがちでこれまで何をやっても
長続きしたことがなかったとの説明を担任の先生から伺った。
そういった背景もあってかこの保護者の喜びはひときわ大きかったようだ。

担任によるとあれ以来他の勉強も進んでやるようになり
表情も明るくなったという。
それにしても担当の先生方のご尽力には本当に頭が下がる。
私はたまに稽古を覗く程度だったが
先生方は毎日のように放課後付き合っていた。

また、人前で演じるのはとても恥ずかしく耐えられないので
他に何かできることをしたいという児童にはポスター作りから
舞台設営、司会などの仕事を作り、色々な役割分担を担当の先生方が考えた。

町内へのポスター貼りに関しては教師らが児童には内緒で
事前に商店街に協力を要請して廻っている。
地域コミュニティーと児童との関わりはこうした木目の細かい配慮も必要だ。
何より素晴らしかったのは発表会に参加してくれた地域の方々。
学校側の呼びかけに多くの住人が客として集まり、
その応援する気持ちと大きな笑いが子供たちはますます輝かせた。
客席を埋めるお客に芽生えた「この場を自分たちで盛り上げよう」
という当事者意識が何より大きい。

 最近巷では「自尊心」や「自己否定」という言葉をよく耳にする。
「自分に自信が持てない」若者が増えている。
昨日は落語塾に通ってくる若者と「ゆとり教育」の話題になった。
この施策自体を否定するつもりはさらさらないが
学力の低下を招いた一因はあるだろう。

しかし、当の若者らに対する「君らはゆとり世代やからなあ」
という言葉はあまりに不用意すぎる。

これを絶えず聞かされればついには彼らは被害者としての立場に追いこまれ
「自己否定」せざるを得ないだろうと彼の話にそう思った。

「どうせ俺らはゆとり世代やから」
「俺らの責任やないのに」
・・・私はそういった「自己否定」を生んだ当事者の一人としておおいに反省している。

自分に自信が持てず殻に閉じこもりがちな若者に用意された
インターネットという憩いの場。
「自己否定」と「インターネット」がねんごろになった時、
そこにこれまでにない新しいコミュニティーが誕生した。
そのあまりの成長ぶりに道徳理念の確立がまるでついていけていない。
そんななかにあってボランティアを希望する若者が増えているのはとてもいい話だ。
ボランティアを必要とする方々も大勢いるだろうが、
ボランティアをすることで救われる若者もいる。

「他人の役に立っているという実感」があってこそ人は生きられる。
「勉強するのは自分のためなのだから」とつい私も彼らに
「自分のため」ばかりを強調してしまうが、
今、彼らに必要なのは「他人のために何かすること」と
「自分が社会に役立つという実感」だ。

他人との関わりが自己のアイデンティティを確立するという
ごく当たり前のことを私は保護者からの便りをきっかけにして
私は気づかされたのである。(了)



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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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