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172.恩送り2~先代春蝶門弟として~

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春團治師匠舞台挨拶
ぼくの襲名記念の会に花束を持って駆けつけてくださった春團治師匠。このとき全くのサプライズでした。


東京の落語界では、二つ目以下の落語家は、
師匠が亡くなれば、必ず誰か他の真打の弟子に
ならなければならない、という決まりがあるそうです。
でも、真打制度のない大阪では、
そういう取り決めなどありません。

うちの師匠(先代春蝶)が亡くなってすぐ。
テレビの追悼番組には、
師匠の師匠である三代目春團治師匠の姿。
アナウンサーがこんな質問をされました。
「春蝶さんには、お弟子さんが三人おられましたよね」
その言葉を受け、春團治師匠は静かにこう応えられました。

「彼らは、ぼくが預かります」

その時、ぼくは家のテレビでこの放送を見ていました。
それで慌てて兄弟子らに電話をしたのです。
「に、兄さん、今、テレビで……」
「わしも見てたんや。すぐ大師匠のところへ行くで」

春團治師匠の預かり弟子になるということは、
これからは「春蝶の弟子」ではなくなるということです。
昇蝶、一蝶、蝶六。三人の思いは同じでした。
春團治師匠の気持ちはとてもありがたい。
ありがたすぎるほどありがたい。
光栄でもある。
けれども、ぼくらは生涯「春蝶の弟子」を名乗りたい。

春蝶、立ち切れ、縮小版
先代春蝶(撮影:後藤清)


春團治宅前で待ち合わせたぼくらは、
意を決し、春團治師匠の自宅に上がりました。
まるで死を覚悟した四十七士のようでした。

「実は、大師匠の気持ちは大変ありがたいのですが……」
筆頭弟子の昇蝶が口を切りました。口ごもりながら、
「できることなら、ぼくら、これからも春蝶の弟子ということで」

ここまで言うと、全てを察せられた春團治師匠が
ニッコリと微笑みながら、

「うん、その方が春蝶くんも喜ぶやろ。
ほな、これまで通りな。
君らはぼくの孫弟子ということで。
けどな、わしはお爺ちゃんやで。
君らはお父さんがおらへんねん。
何か困ったときは、この爺を頼りなさい!」


落語家の諸先輩方のごく一部ですが、
「春團治師匠の好意を踏みにじる行為や」とか、
「師匠なしでやっていけるんか」とか、
いろいろおっしゃる方もありました。

このこともあって、師匠の一周忌「追悼公演」では、
「主催:春蝶門弟会」ということに強くこだわったのです。

でも、これでよかった。

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春蝶一周忌追善ポスター
「二代目春蝶一周忌追善公演」のポスター


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ところで、9月27日(火)、ぼくにとって
特に思い入れの強い会があります。

国立演芸場での「花團治の宴-en-」。

花團治の宴
「花團治の宴-en-」の詳細はここをクリック!

『立ちきれ線香』では、
小糸という芸妓と、船場商家の若旦那。
小糸は若旦那に思いを残しつつ亡くなってしまいます。
遺された若旦那は、線香を手向けながらこう言います。

「・・・小糸、わしはな、
生涯、女房と名のつくもんは持たへんで」


こんな場面もあって、
この咄を「人情ばなし」と称する方もおられますが、
決してそうではないと、ぼくは思っています。
「人情ばなし」と「落語」は異なものです。
最後には、しっかりドンデン返しが待っています。
落語は落として終わります。


実はこの咄、
先代春蝶が、特に晩年、好んでよく高座にかけていました。
「あそこはこうしたら良かったなぁ」とか、
よく帰りのタクシーのなかでおっしゃってました。
こういう話が聞けるのが、弟子の特権でした。

いろんな「立ちきれ」がありますが、
ぼくは、ペーソスがふんだんに詰まった、
先代春蝶のものが今でも一番好きです。
あの、どこか憎めない若旦那の魅力を再現したい。
そんな特別の思いのこもった作品を、
今回は国立演芸場で演らせてもらいます。


また、ゲストには桂文枝師匠。
実はうちの師匠と文枝師匠は高校の先輩・後輩という間柄です。
文枝師匠は五代目文枝師匠(当時・小文枝)に入門する際、
うちの師匠に相談されたそうです。

「で、どの師匠の弟子になりたいんや?」
「はい、ぼくは小文枝師匠の弟子に」
「それやったら、わしが連れていったる」

うちの師匠は、なんば花月の楽屋口まで、
河村青年(後の三枝師匠)を案内してこう言ったそうです。
「ここから先は一人で行きなさい。
このドアの向こうに君の未来が待っている」


このときの様子をぼくは文枝師匠から直接伺いました。
そして、文枝師匠は最後にぼくにこうおっしゃったのです。

「今度はぼくの番やね」


それで、今回の会ではそのお言葉に素直に甘えさせて頂くことにしました。

プルメリアボーイズ
ハワイアンバンド「桂文枝と上方落語プルメリアボーイズ」
今年も、9月3日(土)4日(日)、大阪谷町九丁目・生国魂神社「彦八まつり」にて演奏します。


文枝師匠や鶴瓶師匠のことをこちらのブログにもまとめています。是非、こちらもクリックしてご覧ください。

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春蝶の家族と共に
ぼくが師匠の家に住み込みしていた頃。中央が二代目春蝶。
師匠と揃いのセーターの少年は師匠の長男の大助くん(現・三代目春蝶)
大助くんの後ろにいるのがぼくです。



「・・・師匠、ぼくはね、
生涯、師匠と名のつくもんは持ちまへんでぇ」




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花團治の宴、表紙

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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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