175.最強のモタレ芸・チンドン~路上の達人から板の上の妙手へ~
『花團治公式サイト』はこちらをクリック!
チンドン屋って、
ネコとお友達になるようなもんでね。
『ちんどん通信社』の代表・林幸治郎氏が、
ふとそんなことをつぶやきだした。

花團治襲名披露公演に並ぶ行列を癒してまわる『ちんどん通信社』 撮影:相原正明
例えばね、猫の写真を撮ろうとして、
不用意に近づいていったら逃げてしまうじゃないですか。
あえて、興味がないふりをして向こうを向いたり、
そんなことをしながら距離を詰めていくわけですやん。
なるほど、どんどん積極的に迫っていけば、
かえって相手はそっぽを向くだろうし、
猫を手なずけるのは、
人間の女性以上にムツカシイかもしれない。
常に相手との呼吸を図りながら居場所を確保するのが、
チンドン屋の身上だ。
「チンドンの音楽は歓迎する人ばかり相手にしていられない。
聞きたくない人まで視野に入れ、尊重せなあかん宿命がある。
しかも、そんな彼らの存在を肯定的にとらえることで、
逆に自分たちの居場所を確保していくという、
ややこしい関係になっているんです」
(林幸治郎著『チンドン屋!幸治郎』新宿書房より)
チンドンとは、つまり、
憚り(はばかり)の芸である。

花團治襲名の前宣伝(石橋商店街にて) 撮影:相原正明
これまで『ちんどん通信社』さんには、
幾度となくお世話になってきた。
ぼくの襲名が決まってからは、その事務所を担ってもらったり、
襲名挨拶回りも、運転手を買って出てくれた。
また、襲名お練りの際には先導役と賑やかしを
公演のときは、列に並ぶお客が退屈しないようにと、
その場で余興をしてくれたこともあった。

『ちんどん通信社』の社屋にて、これから花團治襲名の挨拶回りに向かう前 撮影:相原正明

花團治襲名記念の路上船乗り込み。先頭を歩く林幸治郎。 撮影:相原正明

花團治襲名記念の路上船乗り込み。太鼓を叩くジャージ川口、笛を吹く小林信之介。 撮影:相原正明
ちんどん通信社・営業担当の猪俣はじめさんは、
ぼくの大学時代、落研の一年先輩でもある。
「いつも(チンドンは)期待以上のことをしてくれるから助かってます」
「それが次のオファーに繋がるんですよ」
いつだったか、地方の営業をお願いして、
そのとき、人里から少し離れた、
人の気配のしない道があった。
「ああ、ここはいいんじゃないですか?」とぼくが言うと、
「でも、誰かが聞いているかもしれないから」と、
そこでも全く手を抜かずに演奏して練り歩いてくれた。
後日、担当者から喜びの電話があった。
「寝たきりのお年寄りが遠くから家のなかで聞いておられて、
とっても喜んでおられたそうです」
小さなひとつひとつを大切にする『ちんどん通信社』さんには、
ホントいつも頭が下がる思いだ。

2015年花團治襲名披露公演での『囃子座』。
『ちんどん通信社』所属の(右から)小林信之介、林幸治郎、ジャージ川口のユニット。
このユニット『囃子座』のときは、路上のときと違い、ノーメイクで出演する。 撮影:相原正明
襲名披露公演の時も、
トリ(演目の最後)のひとつ前に演じるモタレとして、
ゲストに入ってもらった。
その打ち合わせで、ぼくははじめさんにこう言った。
「モタレですからね、あんまりたっぷり演られすぎても、
後が演りにくいし、かと言ってお客を満足させなきゃいけないし…」
モタレはなかなかムツカシイポジションなのである。
でもそのとき、はじめさんはきっぱりとこうおっしゃった。
「まかせてください。うちはチンドン屋です。
主役を立てるプロですから」

昨年、花團治襲名披露公演の際の記事。
9月27日、東京・国立演芸場で開催する『花團治の宴-en-』も
ちんどん通信社さんにモタレをお願いした。
かつて米沢彦八の時代、大阪の落語は野天で演じる大道芸だった。
初代桂文治が大阪で初めて寄席をつくり、そこで落語を演じた。
このときに、落語はストーリー性の強いものに変化していったと考えられる。
つまり、これが今の落語の形の始まりである。
チンドンもまた、今、
『囃子座』によって新しいスタイルを確立しつつある。
『囃子座』は、チンドン界の初代桂文治だ!
路上芸から舞台芸へ。
……当日は、会場をイイ感じで温め、ぼくにとって、
最高のトリの場を用意してくれることは、もう間違いない。
これでコケたら、それはもう……言い訳が立たない。

『花團治の宴-en-』の詳細はこちらをクリック!
◆『花團治公式サイト』はこちらをクリック!
◆『相原正明フォトグラフ』はこちらをクリック!
◆『ちんどん通信社公式サイト』はこちらをクリック!
チンドン屋って、
ネコとお友達になるようなもんでね。
『ちんどん通信社』の代表・林幸治郎氏が、
ふとそんなことをつぶやきだした。

花團治襲名披露公演に並ぶ行列を癒してまわる『ちんどん通信社』 撮影:相原正明
例えばね、猫の写真を撮ろうとして、
不用意に近づいていったら逃げてしまうじゃないですか。
あえて、興味がないふりをして向こうを向いたり、
そんなことをしながら距離を詰めていくわけですやん。
なるほど、どんどん積極的に迫っていけば、
かえって相手はそっぽを向くだろうし、
猫を手なずけるのは、
人間の女性以上にムツカシイかもしれない。
常に相手との呼吸を図りながら居場所を確保するのが、
チンドン屋の身上だ。
「チンドンの音楽は歓迎する人ばかり相手にしていられない。
聞きたくない人まで視野に入れ、尊重せなあかん宿命がある。
しかも、そんな彼らの存在を肯定的にとらえることで、
逆に自分たちの居場所を確保していくという、
ややこしい関係になっているんです」
(林幸治郎著『チンドン屋!幸治郎』新宿書房より)
チンドンとは、つまり、
憚り(はばかり)の芸である。

花團治襲名の前宣伝(石橋商店街にて) 撮影:相原正明
これまで『ちんどん通信社』さんには、
幾度となくお世話になってきた。
ぼくの襲名が決まってからは、その事務所を担ってもらったり、
襲名挨拶回りも、運転手を買って出てくれた。
また、襲名お練りの際には先導役と賑やかしを
公演のときは、列に並ぶお客が退屈しないようにと、
その場で余興をしてくれたこともあった。

『ちんどん通信社』の社屋にて、これから花團治襲名の挨拶回りに向かう前 撮影:相原正明

花團治襲名記念の路上船乗り込み。先頭を歩く林幸治郎。 撮影:相原正明

花團治襲名記念の路上船乗り込み。太鼓を叩くジャージ川口、笛を吹く小林信之介。 撮影:相原正明
ちんどん通信社・営業担当の猪俣はじめさんは、
ぼくの大学時代、落研の一年先輩でもある。
「いつも(チンドンは)期待以上のことをしてくれるから助かってます」
「それが次のオファーに繋がるんですよ」
いつだったか、地方の営業をお願いして、
そのとき、人里から少し離れた、
人の気配のしない道があった。
「ああ、ここはいいんじゃないですか?」とぼくが言うと、
「でも、誰かが聞いているかもしれないから」と、
そこでも全く手を抜かずに演奏して練り歩いてくれた。
後日、担当者から喜びの電話があった。
「寝たきりのお年寄りが遠くから家のなかで聞いておられて、
とっても喜んでおられたそうです」
小さなひとつひとつを大切にする『ちんどん通信社』さんには、
ホントいつも頭が下がる思いだ。

2015年花團治襲名披露公演での『囃子座』。
『ちんどん通信社』所属の(右から)小林信之介、林幸治郎、ジャージ川口のユニット。
このユニット『囃子座』のときは、路上のときと違い、ノーメイクで出演する。 撮影:相原正明
襲名披露公演の時も、
トリ(演目の最後)のひとつ前に演じるモタレとして、
ゲストに入ってもらった。
その打ち合わせで、ぼくははじめさんにこう言った。
「モタレですからね、あんまりたっぷり演られすぎても、
後が演りにくいし、かと言ってお客を満足させなきゃいけないし…」
モタレはなかなかムツカシイポジションなのである。
でもそのとき、はじめさんはきっぱりとこうおっしゃった。
「まかせてください。うちはチンドン屋です。
主役を立てるプロですから」

昨年、花團治襲名披露公演の際の記事。
9月27日、東京・国立演芸場で開催する『花團治の宴-en-』も
ちんどん通信社さんにモタレをお願いした。
かつて米沢彦八の時代、大阪の落語は野天で演じる大道芸だった。
初代桂文治が大阪で初めて寄席をつくり、そこで落語を演じた。
このときに、落語はストーリー性の強いものに変化していったと考えられる。
つまり、これが今の落語の形の始まりである。
チンドンもまた、今、
『囃子座』によって新しいスタイルを確立しつつある。
『囃子座』は、チンドン界の初代桂文治だ!
路上芸から舞台芸へ。
……当日は、会場をイイ感じで温め、ぼくにとって、
最高のトリの場を用意してくれることは、もう間違いない。
これでコケたら、それはもう……言い訳が立たない。

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