179.落語と狂言はさも似たり~落語家による落語と狂言の会・やるまいぞ寄席~

「声を出す」のではなくて「息を吐く」。
謡曲のお稽古で学んだことです。
「肚の底で声を支える」ということは、
頭では分かっているつもりでも、
我流でなんとかなるようなものではありません。
ぼくにとって、謡曲のお稽古は身体のメンテナンスのようなもので、
お稽古のあとは、声の通りもいくぶん良くなったような気がします。
謡曲も狂言も、身体にいい。

謡曲は水田雄晤先生(シテ方観世流能楽師準職分)にお稽古をつけて頂いてます。
鴫野「蕎麦処・仙酔庵」にて。
時折、お客様から「迫力があったなぁ」とか、
「やっぱり生の臨場感は違うなぁ」とか、
そういうお言葉を頂戴することがあります。
(他に褒め様がないので、そうおっしゃったのかも
しれませんが)
しかし、声の大きさと芸の良し悪しは
必ずしも一致するもんじゃない、ってことは、
芸人自身が一番よくわかってます。
うちの師匠(故・二代目春蝶)から、
こんなことをよく言われました。
「そんなに気張って喋らんでもええがな」
また、別のある師匠からは、こんなご指摘を受けました。
「お前は肝心なところで”押す”癖がある。
そこは押さんと、逆に引いてみぃ」とか、
「若手やないねんから、
大きい声を出せば
ええっちゅうもんちゃうねやで」とか、
「肩に力が入ってるで」とか、
ぼくが理想とするのは我が師匠のような洒脱で飄々とした芸。
なのに、頑張れば頑張るほど、そこから遠ざかる自分。
一向に治らない生来のキンキン声。
そんなこんながコンプレックスとなり、通い始めたのが、
とある狂言のお稽古場でした。
今はかつてのお稽古場で一緒だった金久寛章氏のもとで
狂言のお稽古を続けています。

第2・第4金曜日の夜は「八聖亭」に勤め帰りのOLを中心に毎回10名ほどが集っています。

金久寛章氏の指導を食い入るように見つめる森乃石松くん。彼の存在は周囲をほんわかさせます。なんだかとってもフラのある奴です。
狂言教室なのになぜかスクワットが必須メニュー。
声がスルリと出るから不思議です。
いわばこれは「体幹トレーニング」のようなもの。
声と姿勢の関係は密接です。
落語家の後輩の森乃石松くんや月亭天使さんも稽古に通ってますが、
先日、天使さんの師匠・月亭文都師からこう言われました。
「うちの天使の声がね、
最近、よく出るようになったんですよ。
これまで、台詞がブツ切れになっていたところも
ちゃんと息が続くようになった」
師匠は本人の前ではなかなか面と向かって褒めないもの。
間接的に褒めるのが常ですなぁ。

金久先生にはぼくの出講する大阪青山大学にもお越し頂きました。
◆JR福島駅徒歩「八聖亭」狂言教室についてのブログはこちらから
ところで、「落語と狂言」って、
つくづく似た者同士だなぁと思います。
まず、「落語」「狂言」ともに
口語体(=話し言葉)だという点。
ちなみに、「能」や「講談」は、
ともに文語体(=書き言葉)が基本。
講談は、「読む」っていいますよね。
講談は「読む」、浪曲は「語る」、落語は「話す」です。
それに、「落語」も「狂言」も
登場人物の台詞で物語が進行していきます。
「能」や「講談」は、原則として
演者による状況説明で話が進んでいきます。
もうひとつ、大きな共通点は、
登場人物の多くがフツーの人だということ。
落語は、喜六、清八、甚兵衛さん……
狂言は、太郎冠者、次郎冠者、主人……
「能」や「講談」は歴史上の有名人が主です。
こうしてみると、「落語と講談の関係」は、
「狂言と能の関係」にさも似たりってところでしょうか。
さて、そんなわけで、
せっかくお稽古を続けているのだもの、
ということで、このたび
日本の二大笑い芸能である「落語」と「狂言」の会を、
この12月から始めることにしました。
万障繰り合わせの上、是非ご来場くださいませ。

◆『やるまいぞ寄席』の詳細はこちらから
教え上手な金久先生を狂言指導に迎えての、上方落語「狂言同好会」の発表会。
いずれ大きな会場で定例会を目論んでいますが、
まずは、その第一歩をご覧くださいませ。
チラシデザインは、月亭天使です。

◆『第二回・花團治の会』の詳細はこちらから
こちらも金久・花團治コンビで狂言を演じます。
◆花團治公式サイトはこちらから
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