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186.わからんけどわかった~古典芸能はアタマに気持ちイイ!~

花團治の会3、清水1、400
2017年1月16日、天満天神繁昌亭にて(撮影:相原正明)



「わからんけどわかった」


これまであちらこちらに落語を出前させてもらったなかで
もっとも印象に残った一言です。

それは京都のある小学校でのこと。
「これまでに落語を生で聴いたことある人は?」というぼくの問いかけに、
100名近くいるうちのおよそ半分がサッと手を挙げた。
「へぇ、誰の落語?」と尋ねると、
その手が皆、ぼくを指さした。
「そうか!?……毎年ここは5年生と6年生対象だから、
去年の5年生は、今年の6年生なんだ」

そんなことも忘れて高座に上がったぼくがうかつだった。
小学校での落語はたいてい『動物園』『饅頭こわい』を演じているが、
今日は違う演目をせねばならない、と
咄嗟に口をついて出た咄が『牛ほめ』だった。
家の普請(建築)を褒めるという、落語好きにはおなじみの一席。
しかし、現代にはなじみの薄い単語も多い。

「庭が縮緬漆喰、上り框が桜の三間半節無しの通り門。上へあがると畳が備後表のヨリ縁、天井が薩摩杉の鶉杢。それから奥へ通ると南天の床柱、萩の違い棚、黒柿の床框……」

咄嗟とはいえ、何という選択をしてしまったんだろうと
後悔するも、時すでに遅し。
すっかり咄に入っていて、もう後戻りはできなかった。

しかし……
子どもたちはぼくの心配をよそに腹を抱えて笑っていたのです。

オチを言ったあと、彼らに感想を求めてみた。

「どうや?」
「うん、めちゃ面白かった」
「わからんコトバがあったやろ?」
「うん、あったあった。いっぱいあった」
「それでもオモシロかった?」
「うん、わからんけどわかってん」


そうか!多少わからないコトバがあったとしても、
それを前後の内容から想像して補う「想像力」というチカラが、
人間には備わっている。
そんな当たり前のことに改めて気づかされた瞬間でした。

花團治の会3、花團治1
2017年1月16日、天満天神繁昌亭にて(撮影:相原正明)


一人の男の子が発した「わからんけどわかった」は、
ぼくが初めて生の落語に触れた時のことをも思い出させてくれました。
それは、ぼくが高校に入学して落語研究会を見学に訪れたときです。
先輩の一人が『壺算』を演じました。
一席語り終え、「どうやった?」と尋ねられました。
そのとき、ぼくはこう応えました。
「うん、(内容が)よくわかった」。
その先輩は少し怪訝そうな表情をしていましたが、
ぼくにとっては「知的快感」をくすぐられた瞬間でした。

オチのところで「ああ、そうくるか!!!」という、
なんともいえない快感。とても心地良いものでした。
加えてこんなぼくにでもストーリーが理解できたということは、
このうえもない喜びでありました。
それが「よくわかった」というコトバに集約されたのでした。
このときの何ともいえない快感がぼくを落語の道へと誘ったのです。

花團治の会3、花團治2
2017年1月16日、天満天神繁昌亭にて(撮影:相原正明)


ところで、先日『第二回・花團治の会』(@天満天神繁昌亭)での狂言。
『蝶六の会』では、全15回のうち10回以上も狂言を務めてきましたが、
2年前に花團治を襲名して以来、この場で狂言を演るのは初めて。
ぼくが狂言をかじっていることを知らないお客さまも多かったでしょうし、
狂言という芸能に触れるのが初めてという方が大半だったと思います。

狂言はムツカシイと感じている方が世間には多いかもしれません。
でも、その多くはきっと「食わず嫌い」なんだと思います。

花團治の会3、清水3、400
2017年1月16日、天満天神繁昌亭にて(撮影:相原正明)

当日は相方の狂言師・金久寛章氏の好リードや、
感度の良いお客様のおかげもあって、
盛況のうちに終えることができました。
お見送りの際には、お客様から、ぼくの演じた狂言について、
多くのお言葉を頂戴することができました。

「二人のコンビネーション、最高!絶妙の間やった」
「ムツカシイと思ってたけど、全然そんなことなかった」
「狂言って”お笑い”やったんやねぇ」
「落語より狂言の方が演ってて楽しそうでしたね」


ちなみに最も嬉しかったのは一番上のコメント、
複雑な思いにさせられたのは最後のおコトバです。

花團治の会3、清水2、400
2017年1月16日、天満天神繁昌亭にて(撮影:相原正明)


ひょっとして、狂言の台詞のなかで意味不明に思われたコトバも、
いくつかあったかもしれません。
でも、人間の脳は、そんなわからないコトも、
「想像力」で補いつつ、たとえなんとなくであっても、
そこから先に進むことができます。
これはおそらくコンピュータには真似できないことでしょう。
そんなわけで
「わからんけどわかった」

ぼくはこのコトバに深い含蓄を感じてやまないのです。



花團治の会3、咲くやこの花学生集合500
当日は、市立咲くやこの花高校・演劇科の学生たちが多く参加してくださいました。
彼らの活気あふれる大きな笑い声が会場の盛り上がりを大きく後押ししてくださいました。



◆今回のブログに使わせていただいた写真は全て写真家・相原正明先生によるものです。
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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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