206.祝・四代目春團治襲名~まるでコント?!な三代目&四代目の思い出~
今年の2月11日、大阪道頓堀の松竹座で行われたのが、
「四代目春團治襲名興行」。
1033席ある会場が昼夜二回公演ともに超満員となりました。
襲名興行の目玉といえば、やはり「襲名口上」です。
口上では、襲名する本人は舞台中央に正座で床に手を付き下を向いたまま、
横に居並ぶ諸先輩や仲間の挨拶を黙って聞いていなければならないという決まりがあります。
歌舞伎や文楽の襲名口上は厳かに行われることも多いようですが、
こちとら落語家。当人が公開されたくない失敗談などが次々と公にされ、
言い返すことも出来ずに「針のむしろ」となります。
春之輔改め、四代目春團治も然り。
っていうか、これほどプライベートで
様々なエピソードを持った方もいないでしょう。
(文章にできない+ぼくが怒られそうなので、ここでは控えておきます…)

下を向いたまま、言われ放題の四代目さん。
でも、その様子に、ぼくは後輩ながら、
四代目師匠の周囲からの愛されぶりを感じずにはいられませんでした。
四代目さんはイジられ上手なんです。

舞台でプライベートをネタにさんざんイジられる四代目春團治師匠。
六代文枝師匠や、きん枝師匠の追及に場内割れんばかりの笑い。

四代目春團治襲名披露公演の楽屋にて

袴の紐を結べない若手を手伝う笑福亭生喬さん。
後輩の面倒見がめっちゃエエことでも知られています。
(四代目春團治襲名披露公演の楽屋にて)

「何でも手伝うから言うてや!」というタージンさんには、ワインの袋詰めをお願いしました。
(四代目春團治襲名披露公演の楽屋にて)

坊枝さんとぼくのツーショット。横に玉三郎丈からの祝い花が見えます。
……あれは三代目春團治師匠の御長男・一茂さんの経営するスナック
「無礼行」でのことでした。
その日は、一門の集う落語会の打ち上げだったと思います。
最後の仕上げは一茂さんの店でということになったのですが、
どういう趣向なのか、席が足らないということもあって、
三代目が四代目(当時・春之輔)に、
「春之輔、君はカウンターの中に入りなさい」と命じたのです。
「ちゃんと、皆さんの水割りを作るようにな」
「…蝶六くん(ぼくの前名)のグラスも空いてるよ」と三代目春團治師匠。
春之輔師匠は「へぇ」と言いながら、ぼくのグラスを取りました。
普通なら、20年近い後輩のぼくの世話をやくなんて考えられないこと。
ぼくが恐縮してると、三代目が茶目っ気たっぷりの笑顔で
「いや、いいんだ。今日はこの男にやらせるから」
ぼくの水割りができると、間髪入れず、
「福矢くんのも空いてるよ」
またも「へぇ」と言いながら、彼のグラスを取る四代目。
その「へぇ」の声や様子の可愛らしいこと。
「ほれ、ぼくのも空いてる」
「へぇ」
「小春團治くんのも空いてる」
「へぇ」
「壱之輔くんのも」
「へぇ」
「今度はこっち」
「へぇ」
「次はあっち」
「へぇ」「へぇ」「へぇ」……
我が弟子の水割りまでいそいそ作る春之輔師匠。
店内はもう笑いが止まりません。
それはまるでコント。まさに名コンビでした。
ツッコミを入れながら
場を盛り上げる三代目師匠。
ぼくにとってはじめてみた光景でした。

2015年、ぼくの襲名の際のツーショット(左が四代目春團治)(撮影:相原正明)
でも、今になって思うんですよね。
四代目師匠はイジられているのではなくて、
わざと「イジらせていた」のかも…と。
後輩のぼくが言うのも何ですが、
これほど周囲にイジられて絵になる人もいませんし、
イジられているときの本人の表情もどこか楽しそうなんです。
そんなわけで、今度の池田での襲名公演も、
どんなイジられ方をするのか、
師匠方の毒舌と四代目の表情に興味津々です。
滅多に見られない光景ですので、よろしければぜひ、ご来場下さい。


◆「春團治まつり」
アゼリアホールサイトはこちらをクリック
◆「花團治公式サイト」はこちらをクリック
「四代目春團治襲名興行」。
1033席ある会場が昼夜二回公演ともに超満員となりました。
襲名興行の目玉といえば、やはり「襲名口上」です。
口上では、襲名する本人は舞台中央に正座で床に手を付き下を向いたまま、
横に居並ぶ諸先輩や仲間の挨拶を黙って聞いていなければならないという決まりがあります。
歌舞伎や文楽の襲名口上は厳かに行われることも多いようですが、
こちとら落語家。当人が公開されたくない失敗談などが次々と公にされ、
言い返すことも出来ずに「針のむしろ」となります。
春之輔改め、四代目春團治も然り。
っていうか、これほどプライベートで
様々なエピソードを持った方もいないでしょう。
(文章にできない+ぼくが怒られそうなので、ここでは控えておきます…)

下を向いたまま、言われ放題の四代目さん。
でも、その様子に、ぼくは後輩ながら、
四代目師匠の周囲からの愛されぶりを感じずにはいられませんでした。
四代目さんはイジられ上手なんです。

舞台でプライベートをネタにさんざんイジられる四代目春團治師匠。
六代文枝師匠や、きん枝師匠の追及に場内割れんばかりの笑い。

四代目春團治襲名披露公演の楽屋にて

袴の紐を結べない若手を手伝う笑福亭生喬さん。
後輩の面倒見がめっちゃエエことでも知られています。
(四代目春團治襲名披露公演の楽屋にて)

「何でも手伝うから言うてや!」というタージンさんには、ワインの袋詰めをお願いしました。
(四代目春團治襲名披露公演の楽屋にて)

坊枝さんとぼくのツーショット。横に玉三郎丈からの祝い花が見えます。
……あれは三代目春團治師匠の御長男・一茂さんの経営するスナック
「無礼行」でのことでした。
その日は、一門の集う落語会の打ち上げだったと思います。
最後の仕上げは一茂さんの店でということになったのですが、
どういう趣向なのか、席が足らないということもあって、
三代目が四代目(当時・春之輔)に、
「春之輔、君はカウンターの中に入りなさい」と命じたのです。
「ちゃんと、皆さんの水割りを作るようにな」
「…蝶六くん(ぼくの前名)のグラスも空いてるよ」と三代目春團治師匠。
春之輔師匠は「へぇ」と言いながら、ぼくのグラスを取りました。
普通なら、20年近い後輩のぼくの世話をやくなんて考えられないこと。
ぼくが恐縮してると、三代目が茶目っ気たっぷりの笑顔で
「いや、いいんだ。今日はこの男にやらせるから」
ぼくの水割りができると、間髪入れず、
「福矢くんのも空いてるよ」
またも「へぇ」と言いながら、彼のグラスを取る四代目。
その「へぇ」の声や様子の可愛らしいこと。
「ほれ、ぼくのも空いてる」
「へぇ」
「小春團治くんのも空いてる」
「へぇ」
「壱之輔くんのも」
「へぇ」
「今度はこっち」
「へぇ」
「次はあっち」
「へぇ」「へぇ」「へぇ」……
我が弟子の水割りまでいそいそ作る春之輔師匠。
店内はもう笑いが止まりません。
それはまるでコント。まさに名コンビでした。
ツッコミを入れながら
場を盛り上げる三代目師匠。
ぼくにとってはじめてみた光景でした。

2015年、ぼくの襲名の際のツーショット(左が四代目春團治)(撮影:相原正明)
でも、今になって思うんですよね。
四代目師匠はイジられているのではなくて、
わざと「イジらせていた」のかも…と。
後輩のぼくが言うのも何ですが、
これほど周囲にイジられて絵になる人もいませんし、
イジられているときの本人の表情もどこか楽しそうなんです。
そんなわけで、今度の池田での襲名公演も、
どんなイジられ方をするのか、
師匠方の毒舌と四代目の表情に興味津々です。
滅多に見られない光景ですので、よろしければぜひ、ご来場下さい。


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