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208.映画『福井の旅』と『男はつらいよ』~はみ出しものの視点から~

その兄弟子は、もうどうしようもない落語家だった。
平気で仕事に穴をあける、朝から酒浸り、
自分勝手、飽き性、協調性ゼロ……
とにかくだらしがないこと、このうえない。

でも、どこか憎めない。

ある日、そんな兄弟子から弟弟子のもとへ一本の電話。
「とにかく福井まで来てほしい」という。
それだけ言うなり、プツッと電話を切った兄弟子。
大阪でラジオのレギュラー番組を持ち忙しい弟弟子は、
「何でぼくが福井にまで……」と訝りながらも、
兄弟子を放っておけずに
サンダーバードで一路、北陸へ。

その弟弟子、実は密かに悩みを抱えていた。
そこそこ売れっ子だったはずが、
仕事はどんどん減る一方なのだ。
それは彼の傲慢さが原因なのだが、
彼はそのことに気づかず……。

……と、これは映画『福井の旅』のエピローグ。

ちなみに、ぼくは弟弟子の役である。


福井の旅画像400


映画『福井の旅』の出演者の多くは、
福井の駅前で店を営むおっちゃんやおばちゃんたちで芝居未経験の人ばかり。
それゆえ、監督の木川剛志氏は
それぞれが演技することなく素のままでいられるよう脚本を練った。
その演出は出演する者の人柄や面倒見の良さを浮き彫りにしていった。
出演交渉もその場で行うなど、一見行き当たりばったりのようにも見えたが、
ディレクター的視点も併せ持つ木川氏の頭の中には
すでにどういう人に出演してもらうかは構築されていたに違いない。
人懐っこい笑顔でお願いされると誰も断れず、
映画撮影の場はいつも和やかな空気が流れていた。

木川剛志とビリケン400
木川剛志監督。通天閣の展望台にて。


ところで、話は変わるが、
渥美清演じる「フーテンの寅」さんは、
全国を渡り歩く一匹狼のテキ屋。
自由を愛し、己より他人の幸せを優先した。
そんな寅さんがつぶやく言葉がイイ。

“例えば日暮れ時、農家のあぜ道を
一人で歩いていると考えてごらん。
庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている
農家の茶の間。灯りが明々とついて、父親と母親がいて、
子供達がいて賑やかに夕飯を食べている。
これが・・・これが本当の
人間の生活というものじゃないかね、君。

俺はな、学問つうもんがないから、
上手い事は言えねえけれども、
博がいつか俺にこう言ってくれたぞ、
自分を醜いと知った人間は、決してもう、醜くねえって・・・”

映画『男はつらいよ』より



映画『福井の旅』の兄弟子と、
映画『男はつらいよ』の寅さんに共通していえることは、
どちらもいわば世間からの「はみ出し者」だということ。

世間とは少し離れたところにいればこそ、
客観的に社会を眺めることができる。
だから誰かの悩みや弱さ、
社会の歪みなどに対して人一倍敏感になる。
芸人であれば、それが笑いに繋がっていく。


花團治、道楽亭、うそっ?
桂花團治、ジャンジャン横丁『動楽亭』にて。(撮影:相原正明)


さて、『福井の旅』での「はみ出し者」兄弟子には
弟弟子の何が見えていたのだろうか?
なぜ弟弟子を福井に呼び寄せたのか、
そして、福井に来た彼はどう変わっていくのか…?

この先は、ぜひ本編をご覧ください。

露の都師の怪演もとい快演、そして
福井の駅前で商売を営む人々の、
無作為の演技もぜひ観てほしい。
福井というまち、
そして福井に住まう人々に、きっと逢いに行きたくなるはずだから。

『福井の旅』では第17回「長岡インディーズムービーコンペティション」で「観客賞」。
和歌山を舞台にした『替わり目』では
「第9回商店街映画祭」のグランプリ」と「串田監督賞」のW受賞。


まずは、下記アドレスをクリックして「予告編」から
露の都師匠の快演もこちらで一部だけですが、ご覧頂けます。↓
▶短編映画『福井の旅』予告編Youtube


おもちゃ映画ミュージアム、5木川氏を迎えて

◆「咄して観よ会」の詳細はこちらをクリック!


◆「おもちゃ映画ミュージアム」のサイトはこちらをクリック!



【映画の美術製作をしていた祖父と、
建築設計士の父】


監督の木川剛志は、1976年、京都市上七軒の界隈の生まれ。
上七軒といえば京都五花街のひとつで西陣地区。
機織りと三味線の音が響くなかで氏は育った。

氏の父は建築設計士で、
その影響からか氏自身も大学で建築を学ぶようになった。
卒業後はスリランカの建築家・ジェフリー・バワ氏に憧れて
現地の設計事務所で修行を重ね、
その後も中国やアメリカの大手設計事務所勤務など世界中を駆け巡るが、
最終的にはロンドン大学大学院を経て研究者の道を選んだ。
現在も和歌山大学観光学部准教授として教鞭をとる傍ら、
「観光映像」にこだわり続けている。


氏の祖父も映画界に携わっていて、
第一映画や新興京都、大映に属する美術制作の職人だった。
溝口健二監督「浪華悲歌」(1935)、黒澤明「羅生門」(1950)、
渡辺邦男「忠臣蔵」(1958)などに参画している。

◆木川剛志について(和歌山大学研究者総覧)←クリックしてご覧ください


◆「花團治公式サイト」はこちらをクリック。

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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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