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217.顧客ファースト~まずは目の前のお客様から~

先日、うちの家内が意気揚々と帰ってきた。
家内はいわゆる「美容室ジプシー」というやつで、
『ホットペッパービューティー』というサイトを見ながら
色んな美容室を渡り歩いている。

初来店のときはクーポンが使えても
二回目以降は使えず値段が高くなるということがほとんどらしく、
そんなことも彼女を「美容室ジプシー」化させる要因の
ひとつになっているらしい。
しかし、今度ばかりはこれまでと少し様子が違っていた。
帰ってくるなり第一声が「今度からずっとここにするわ」。
確かに他所に比べてあか抜けているような気もする。
ちなみにこのお店は美容室の激戦区にも関わらず、
近隣の他の店に比べて少し割高である。
しかもクーポンによる値引きもほとんどしていない。
彼女はそんな強気なところが気になって店の門をくぐった。
その点について店主は、こんなふうに応えたという。

「クーポンで新規のお客さんを開拓することはできるけど、
それをするぐらいなら、今ファンでいてくれるお客さんの方を大事にして、
むしろこちらへ還元すべきだと思うんですよ」


ぼくはふと新聞勧誘のおじさんを思い出した。
新規客にはいろんなサービスをチラつけて購読をせまってくるが、
従来の顧客はほったらかしという印象がある。


敦賀、花團治
撮影:相原正明(敦賀落語の会にて)


ところで、寄席の楽屋に「つ離れ」という符丁がある。
これはお客が十名を超えた状態のことで、
「一つ二つ…」と数えて九つまでは”つ”の字がつくが、
それ以降はつかないところからこう呼ぶようになった。
ぼくが若手の頃は毎度のようにこの言葉を耳にした。
それほど一部を除いて落語会は客入れに苦心していたのである。
ぼくの場合、お客さんがたった一人ということもあった。


……三年前の春、ぼくは池田にあるアゼリアホールの舞台にいた。
蝶六から花團治への襲名だった。
ざこば師匠や文枝師匠も駆けつけてくれたこともあって会場はおおいに盛り上がった。
会場は1200名を優に超していた。
ホールの担当者が以前建具屋さんだった経験を活かして席を増設してくれていた。
もちろん、ぼくにとってこれほどの晴れ舞台は初めてだった。
お茶子さんがぼくの名ビラを返しただけで場内はどよめいた。
この時、ぼくの脳裏に浮かび上がってきたのは
まさしくあの頃「つ離れ」しない客席にいた方々の顔だった。
駆け出しのころからお付き合いのあるご贔屓さんの顔が浮かび上がってきた。
なかでもマンツーマンで落語をさせてもらった時のお客様だけは忘れられない。
そのお客様とは今も懇意にさせてもらっているが、その時がぼくとの出会いだった。

「あの時はホンマに辛かったでぇ、
(会場を)出るに出られへんしな」

そのお客様はどういう気持ちでいてくれているのだろうか?喜んでくれているだろうか?
そんなことばかりが脳裏をよぎった。
この襲名披露の日、この方はずいぶん大勢の友人に声を掛けてくれ、
その後、その友人らと共に祝賀会と称して大宴会を楽しんだのだという。

襲名会場20150426

花團治襲名披露口上
撮影:相原正明(2015年4月26日、花團治襲名披露公演、池田アゼリアホール)



さて冒頭の美容院の話から家内はこう続けた。

「あの(花團治)襲名でこれまで支えてくれてた人たち、
きっと最高に嬉しかったと思うわ。
あの方々のためにも襲名して良かったんと違う?
……今一番大事なことは、次にどんな喜びをファンに
提供するかということじゃないかしらん?」

ほんの少しの躍進とて
まるで自分ごとのように喜んでくれるご贔屓様の存在は本当にありがたい。
それぞれのご贔屓さん方が落語会に自分の知人や友人を引き連れて来てくれるし、
場合によっては自らが落語会を主催してくれたりした。
俗に「口コミ」というが、
この効果は新聞の広告やチラシ一万枚配るよりも絶大であろう。
これまで落語家を続けて来られたのもこういう方々がいればこそであった。
新規開拓ももちろん大事だが、まずは目の前のお客様を大切に

…一軒の美容室がとても大事なことを思い出させてくれた。


※この原稿は、熊本の(株)リフティングブレーンが発行する
月刊「リフブレ通信」の連載コラム「落語の教え」のために書き下ろしたものです。




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朝日新聞に、先日開催された「二代目春蝶生誕祭」の模様が掲載されました。








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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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