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224.すべてはアフターのために~神管寄席後記~

興奮と感動からの学びは
子どもの目の色を変える。

先日、その瞬間を目の当たりにする機会に恵まれた。
神戸でクラシックの演奏会があって、
ぼくはその語り部として参加させてもらった。
曲の合間に作品の時代背景や
その曲の風景を落語風に紹介していくのだが、
公演を無事に終え、ホッとしながら楽屋で着替えをしていると
モニターに小学生10余名と楽団員らの姿が映し出された。
気になって舞台に駆け付けると、
それぞれの奏者が子どもたちにマンツーマンで教えている光景があった。

神管寄席ナビゲーター

神管寄席400
神戸市室内管弦楽団の演奏するムソルグスキー「展覧会の絵」のナビゲートを務めさせて頂いた。


初めて楽器に触れるのか、
おそるおそるといった表情の子どもたちもいて、
彼女らは高揚しつつバイオリンやヴィオラの弦に弓を当てていた。
チラシにはワークショップがあるとは一行も書かれていなかったが、
お客様をお見送りする際の呼び掛けで
興味を持った子どもたちが自発的に参加しているらしい。

今回の演奏会は「子どものための~」と銘打っているわけでも何でもないが、
休日の昼間ということもあって親子連れがちらほら見受けられた。
言うまでもなく楽団の演奏はとても素晴らしいものだった。
それに感動した子どもたちがその直後に初めて楽器に触れ、
しかもその演奏家からじかに手取り足取り教えてもらえるのである。
興奮して当たり前である。当初は鳴らすことさえ困難だった楽器が、
わずかの時間に簡単な演奏ができるぐらいにまでなった。
関係者の一人がぼくにこう耳打ちした。
「この試みはね、楽団員たちが自発的に始めたものらしいですよ」

神管寄席カーテンコール
いつもなら下げを言い終わってすぐに引っ込むが、クラシックではカーテンコールがつきもの。
これは何度やっても気恥ずかしい。こればかりは慣れるまで時間がかかりそうだ。



落語にとって偏った先入観ほど余計なものはない。
小学校に出向いて落語を聴いてもらうという活動はずいぶん前からあるが、
おそらく落語初体験であろう彼らに対して
それなりの緊張感と責任をもって臨むべしということは、
ぼくも肝に銘じているつもりだ。
これまでに数えきれないぐらいの体験学習をやらせてもらったが、
いつも気にかかるのは担当の先生による前説だ。
「落語は江戸時代に発祥した芸で日本の古典芸能のひとつ。
昔、生國魂神社の境内において…」云々。
たいていは5分以内で終わってくれるが、なかには15分以上のことも。
それが落語への良いツカミになってくれるならいいが必ずしもそうとは限らない。
ますま子どもたちから落語が遠かる結果を招くこともある。

ぼくが登場する頃には「どれほど難しくて高尚な芸能か」と
すっかり身構えた子どもたちの姿。
そうなると、まずその気持ちをほぐす行程から入ることになる。
「先ほど先生からオチという説明があったよね。
オチはクイズの答えのようなもんです」
いくつかのトンチクイズで「なるほど」とか「そんなアホな」という感覚を
じゅうぶんに堪能してもらったところで、
「さて、次はどんな答えでしょう?」とようやく落語に入ることになる。

はづかし小学校1
小学校での落語ワークショップ




薀蓄を語るなら落語の楽しさを満喫してもらってからに限る。

同じ情報や知識を伝えるにも編集や構成次第。

落語のみならず、
講師を務める大学の授業でもぼくはそれを怠り、
ずいぶん苦い目に遭ってきた。
その点、冒頭に紹介した管弦楽団の取り組みは
クラシックのすそ野を拡げるということにおいても申し分のない試みだった。

「ひょっとしてこの日の演奏は
すべてこの瞬間のために
あったのではないか」
とさえ思えてきたのだった。



※この原稿は、熊本の(株)リフティングブレーンが発行する
月刊「リフブレ通信」に連載中のコラム「落語の教え」のために書き下ろしたものです。




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プロフィール

蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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