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282.あの頃、ぼくらは狂ってた~不適切にも程がある~

巷で話題のTBS系ドラマ『不適切にも程がある』

昭和の時代に生きる野球部の熱血指導者が
1986年(昭和61年)から未来へタイムスリップ、
2024年(令和6年)の現代へやってきた。

あまりに昭和的な言動から騒動を巻き起こすものの、
かえってそれが注目されてテレビ局のカウンセラーの職を与えられる。
そこに「働き方改革」の壁に一人悶々とする女性が現れた。

やりたい仕事を完遂すべく頑張ると
「残業するな」
「一人で抱え込むな」
と周りから諭されていた。

そんな彼女に“昭和マインド”の彼は
「働き方って、がむしゃら以外にあるのかね?」と、
“令和的作法”でがんじがらめな環境に疑問を投げかける。

「一人で抱えるのもその人の働き方だし、
定時で帰りたければ帰ればよい、好きにさせろ!」
と社内で叫ぶ彼。

それに対し、
「彼女一人で残業したら、後輩も定時で帰れないでしょ。
同調圧力っていうのがあるんだよ」
と反論する彼女の上司。

このやり取りに黙っていられなくなった彼女はこう叫んだ。
「社員のやる気をそぐのが
働き方改革ですか?」



蝶六、仁王変顔


ドラマを観ながら、思わずぼくはあの頃の自分に思いを馳せた。
1986年といえば今から38年前。世間はバブル景気に沸いていた。
当時のぼくは落語の仕事がほとんどなく、
もっぱらパブやラウンジでの司会で糊口を凌いでいた。
店内では「イッキ!イッキ!」というコールが響き渡り、
一歩外へ出ると電柱に寄りかかって苦しむ姿がそこかしこに見られた。
喫茶店で耳に飛び込んでくるのは、
「オレ、あれから得意先とハシゴして
一睡もしてへんねん」

というサラリーマン男性の寝不足自慢。

テレビからは栄養ドリンク『リゲイン』のコマーシャルソング
「24時間戦えますか」


ちなみに、全国の弁護士が連携して
「過労死110番」が開設されたのが1988年、36年前のこと。


「カロウシ」という日本語は、
「マンガ」「カラオケ」「スシ」同様、
今や世界の共通語だ。



志村喬生きる400


ぼくにはサラリーマン経験がないが、
「昭和」と「令和」では勤め人の雰囲気もずいぶん変わったように思う。

「昭和」の時代は、車や時計といった
持ち物や会社の大きさ、肩書きといったステイタスばかり誇示する、
出世欲・金銭欲丸出しの「承認欲求」型な人物ばかりが目立ったものだが、
バブル期を頂点にそういったタイプもずいぶん減った。

馴染みのバーや居酒屋で出会う方々も、
多くが家族や趣味の話題で盛り上がり、
仕事や金儲けの話などステイタスを誇ろうという人はごく少数派である。

fc行きつけのバー_convert_20210904231109


今、ぼくは社会人のための落語塾を主宰しているが、
ここに集う塾生たちに言わせれば
「仕事以外にコミュニティーの場を持つことがいい」のだという。

「会社と家の往復だけだとコミュニティーが限られてくるし、
ここに来るといろんな職種やいろんな立場、年齢の人と利害関係なく話せる」

「退職したあとのことを考えると、
このまま会社人間だけで終わっていいのかなって」

「仕事とは違う頭を使うからリフレッシュできる」。

なんだか「働き方改革」というより「生き方改革」のように思えてきた。

愚か塾稽古風景1-500
「愚か塾」の稽古風景


前述のドラマでは昭和の良い面にスポットライトを当てていて、
それも痛いほどよくわかる。

しかし、バブル当時の自分を省みても今の方がよほど健全だ
(ぼくには、連日の朝帰りで家庭を顧みず離婚した過去がある)。

今の「働き方改革」が巻き起こすひと悶着はまだまだ過渡期に過ぎず、
これからより多様な働き方がでてくるはずだ。

…そんなことをとめどなく考えながら
この原稿に向き合っているうち、すっかり朝を迎えていた。

「原稿を書いてたら徹夜してしもうたわ」。

嫁はんに報告するぼくのこの物言いが我ながら誇らしげなことに気づく。

…あぁ、やっぱりぼくは昭和の人間や。(了)


※この原稿は、熊本の(株)リフティングブレーンが発行する
月刊「リフブレ通信」に連載中のコラム「落語の教え」のために書き下ろしたものです。



fc新開地で能登半島地震チャリティー寄席_convert_20240322085241


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コメント
69:確かにオカシクなってたよね by 櫻井ヒロム on 2024/03/27 at 14:19:09 (コメント編集)

お久し振りです。
バブル期って皆がみんな浮かれていたし、明日はもっと儲かるって思っていたもんね………

俺は今、東京の調布のアパート暮らしやけど、アラ還バツイチ独居オジジやし、彼女はおるけど孤独死まっしぐら状態
なんとか写真の仕事で生きてるけど、極貧だからなぁ~
あの頃持ってた金はドッカに消えたし、落ち武者もイイトコですわ(笑)

機会があればまた呑みたいですね~

プロフィール

蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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