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283.あなた好みの女になりたい⁉~不適切にも程がある・其の2~

日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんをモデルとした、
NHK朝の連続ドラマ小説『虎に翼』が始まった。

三淵さんが大学に学んだ時代、男尊女卑が当たり前で
民法にも
「女性は結婚すると無能力者となる」
と記載されていた。

婚姻女性は経済活動や財産管理、法律行為に関して
夫の同意が必要とされていたのだ。

アジア・太平洋戦争に敗戦して
2年後の昭和22年に新しく施行された民法では
「男女平等」が明確に打ち出されたものの、
実際に世の中はどう変わったか。


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筆者近影(撮影:坂東剛志)


『恋の奴隷』という歌が流行ったのは昭和44年頃。
ぼくが小学校の低学年のときだ。

「あなたと逢ったその日から恋の奴隷になりました/
悪い時はどうぞぶってね/
あなた好みの女になりたい」


と甘ったるい声で熱唱する奥村チヨをよく覚えている。
二番の歌詞では「右と言われりゃ右むいてとても幸せ」と歌った。

それから4年後の昭和48年には殿様キングスの『女の操』という歌が大流行。
「あなたのために守り通した女の操/
今さら人に捧げられないわ/
あなたの決してお邪魔はしないからおそばに置いてほしいのよ/
お別れするより死にたいわ/女だから」


小学校ではクラスの人気者が箒をマイクに見立て
喉を絞るように殿様キングスの物真似をした。


両曲とも今なら瞬く間に炎上してしまいそうな歌詞だが、
少なくともぼくの周りには問題にする人もいなかったし、
ぼくもまた男と女の関係とはそんなものかと
何の抵抗もなく受け入れていた。


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ぼくの母親は典型的な専業主婦だった。
いつも父の少し後をついていくように歩き、
気にいらないことがあるとすぐに激高する父を
「仕方がない人ね」といった感じに軽く受け流すような人だった。

父は戦争で両親を三つの歳に亡くし、
ぼくもまた三つの歳に産みの母を病気で亡くした。
ここでいう母はぼくにとっては継母ということになるが、
どういう経緯で二人が一緒になったのかあまり詳しく聞かされなかった。

ただ、母は樺太で生まれロシアに攻め込まれたときに青森に移り、
それから大阪に職を求めてやってきたということだけはぼくが中学生の時に知った。

後にカラオケで村田英雄の『夫婦春秋』という曲を耳にしたとき、
まるで両親の歌だなと思った。

「ついて来いとは言わぬのにだまってあとからついて来た/
明日のめしさえなかったなァ /
お前愚痴も涙もこぼさずに貧乏おはこと笑ってた」



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筆者と母・襲名披露公演当日(撮影:相原正明)


ぼくが師匠のもとを離れて一人暮らしを始めた頃、
ある女性と交際をするようになり、
二人で会話をしていると彼女がふいに怒り出した。

「前から言おうと思ってたんやけど、
その言い方を変えることはできないの?」

ぼくはいったい何のことやら見当がつかなかったが、
どうやら彼女は自分のことを
”おまえ”呼ばわりされるのが嫌だったようだ。


しかし、ぼくはこのとき理解はしたものの全く納得していなかった。
ぼくにすれば”おまえ”呼ばわりは親愛を示す言葉であって、
相手を見下すという気持ちなどさらさらなかった。
でも今思い返すと、
この”おまえ”呼ばわりには
相手を自分の所有物とみる気持ち
があったのかもしれない。



明治に民法が改正されたところで
国民感情がすぐに変わることはなかった。
その表れのひとつが先述の昭和歌謡だと言える。

「歌は世につれ、世は歌につれ」とはよくいったものだ。
これらを作った作詞家にプロパガンダの意識はなかったであろうが、
ぼく自身知らぬ間に洗脳されていたことは確かである。

昭和ずっぽりのぼくにとって『虎に翼』は、
前回このコラムで取り上げた『不適切にも程がある』同様、必修のドラマ。

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筆者とムスメ5歳


ぼくには6歳になる娘がいるが、
彼女が『恋の奴隷』や『女の操』に出てくるような女性になったらと
想像するだけで耐えられない。

洗脳を解くために多くの人が闘ってきたことを伝えるべく、
登園前の娘を膝に朝ドラを眺める毎日だ。(了)



※この原稿は、熊本の(株)リフティングブレーンが発行する
月刊「リフブレ通信」に連載中のコラム「落語の教え」のために書き下ろしたものです。



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Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

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