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28.ティッシュ配り

街頭の広告入りポケットティッシュ配り。
自然に思わず受け取らせてしまう者とそうでない者の差は歴然としている。
相手のどの位置にティッシュを持っていくか、
どんな体勢や距離感で相手と向き合うか。
そして何よりもタイミング。
瞬時に相手の呼吸に合わせるティッシュ配りは美しい。
この術は、剣道の「間合い」にも似ている。

通行の邪魔にならぬようクルクル回りながら、
まるでダンスのようなティッシュ配りにしばしぼくは魅入られる。
間合いの取り方や息の詰め開きを学ぶうえで、
ナンバの高島屋の前はちょっとした穴場である。
相手と目を合わせつつ
グッと息をつめて、相手との呼吸を合わせたかと思うと、
パッと息を吐きつつ、ティッシュを渡す。
受け取らせ率がほぼ百パーセントの達人なんて
これはもう芸の域である。

ずいぶん前の話だが、
ぼくは道頓堀の劇場が終わって、漫才の故・若井はやと師匠と二人
立ち飲み屋のカウンターに並んでいた。
はやと師がぼくに言った。
「一流と二流の違いって分かるか?」
ぼくが答えに詰まっていると、師は静かにこう切り出した。
「あのな、二流はな、ネタの中身のことにしか目がいかへんねん。
ネタの内容が無くったって、要はここや!」
師は自分の腕をもう片方の手でポンッと叩いてみせた。
「わしの今日のネタ、(舞台)袖で聞いてたやろう?
あれを原稿用紙に文字で落としてみい、面白いこと、何にもあらへんで」

なるほど、そのお言葉にはかなりの説得力があった。
すでにコンビ解消されていて、
その時は漫談で舞台に立っておられたのだが、
今朝起きてからここにくるまでを話しただけである。
確かに原稿に落としたら、
どこで笑うんだろうという内容だったかも知れない。
それが名人の手にかかると、まさに笑いの渦。
「間」の勝利であることは、もう言わずもがな。

そう言えば、月亭可朝師は、
あのおなじみのフレーズ「ホンマにホンマでっせ」のみで
客席を爆笑の渦にし、
本当にそれだけで20分の高座を勤めあげたという。
まさに伝説の高座だ。

「息」と「間」。
高島屋前のティッシュ配りを見て、
故・若井はやと師に思いを馳せるのは、
ぼくだけでしょうか?

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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

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