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29.チンドン屋

懇意にさせてもらっている知人に林幸治郎という男がいる。
毎年富山で開催されるチンドンコンクールにおいて過去10回の優勝歴。
大阪谷町6丁目にある「チンドン通信社」。日本一のチンドン屋の大将だ。

林氏曰く

チンドンの音楽は歓迎する人たちばかり相手にしていられない。
聞きたくない人まで視野に入れ尊重せないかん宿命がある。
しかもそんな彼等の存在を肯定的にとらえる事で、
逆に自分たちの居場所を大いに確保していくという
ややこしい関係になっているんです

「ああ、あれやったらわしにもできそうや」と思いまっしゃろ。それが手ェですねん」。



チンドンの目的は演奏を堪能させる事にあるのではなく
あくまでも宣伝行為にある。
通行人の関心が音楽にばかりいくようではチンドン屋失格。
とはいえ、下手糞だとそっぽを向かれる。

それゆえ、プロのチンドン屋は
お客を十分に感心も得心もさせられるだけの技術を持ちながら
あえて少しはずしてみせるぐらいの度量が要る。
この“隙”の見せ方こそがチンドンの妙だ。

ところで、大阪の商人の間には
“下駄を預ける”というモノ言いが今もちゃんと残っている。
例えば、客に「今日は何曜日やったかいな?」と聞かれて
「へえ、今日は土曜日です」というように、
断定の答え方をしないのが大阪の商人流。

「そうでんな。今日は土曜日と違いまっか?」
という具合に応える。
受けた質問を、もう一度質問で返すのだ。
これこそ、相手との会話をとぎらせない商人の工夫。

また、お客の方はその質問に対して
「そうや、今日は土曜日や」と断定で応える。
つまり、質問に結論を下すのは常にお客さんの側である。
こうすることで、お客さんの方が“優位”に立てる。

落語には“喜六”という男がいる。
いわゆる阿呆でおっちょこちょいであるが、
結構したたかでずる賢い面がある。
しかし、周りの誰からも愛される存在だ。
また、言葉遣いはぞんざいばかりかと思えば決してそうでもない。
ちゃんと“相手の立て方”も知っている。
何より、“不完全”が彼の魅力でもある。

“相手を優位に立て”“不完全”
そして、周りから“愛される”存在。
チンドンと、大阪商人、そして喜六にとって
これらは決して外せないキーワード。

ぼくはここに学ぶべきだと思った。

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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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