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46.密息

ぼくの口はとんがっている。
身体はぐんと前のめり。
肩に力が入っている。
ぼくは今だって緊張しぃだが、昔はもっとガチガチだった。
過去に遡れば遡るほど、その傾向は見て取れる。
高座写真は色んなことを教えてくれる。

ぼくは、昔よりも今の方が、
ずっと若く見えると他人によく言われる。
それはストレス等々、精神的な問題もあるだろうが、
おそらく身体や息の使い方が一番大きい。

ぼくが狂言の稽古を始めたのは、
発声におけるコンプレックスがきっかけだった。
声が、肚で声が支え切れていなかった。
肩から発せられた声は、客席にキンキンと貧しく響き、
決して聴く者を心地良くしない。
今だ、その傾向はなおっていない。

浅い息で、どうして高座が勤められようか。
日常でも一緒にいてどこか落ち着かない人がいるが、
これとて息の浅さが原因であろう。
相手との呼吸を合わせられず、
つい話を遮って腰を折ってしまう。
何度、これで失敗したことだろう。

先日も、ぼくは高音で硬質な音声を指摘された。
肝心なところで「声がひっくり返っている」というダメ出しだった。
これは、以前書いた「38.話し言葉の句読点」の『笑わさん稽古やで』とも符合する。


  「君の師匠はそんな風にやっていたかな。
   春蝶(二代目)兄貴の弟子こそ、
   そういうところをちゃんと取らなあかんで」。
   
50歳になった今も、そうやって叱ってくれる先輩がいる。
落語家社会のいいところだ。


・・・・・・とまあ、昨日、こんな打ち明け話をしたところ、
その知人女性が密息のことを教えてくれた。
彼女は、そのワークショップに参加していたのだ。

  「ワークショップに参加してから、今もお腹の底が痛いのよ」

自宅に戻ったぼくは、書棚の隅に隠れていた”積ん読”本の中から、
「密息」で身体が変わる (新潮選書)中村明一著を探し出した。
呼吸や語りに関する本は、
自身の「コンプレックスの賜」で、家に何十冊とある。


   腰を落とし(骨盤を後ろに倒し)た姿勢をとり、
   腹は吸うときも吐くときもやや張り出したまま保ち、
   どこにも力を入れず、身体を動かすことなく行う深い呼吸。
   外側の筋肉でなく深層筋を用い、
   横隔膜だけを上下することによって行うこの呼吸法では、
   一度の呼気量・吸気量が非常に大きくなり、
   身体は安定性と静かさを保つことができ、
   精神面では集中力が高まり、同時に自由な開放感を感じる。


中村氏は落語家の坐りの型についても触れていて、
立川談志師匠を絶賛している。

   その場、その状況に同化する力量はずば抜けています。
   骨盤は倒れ、見事な間です。
   おそらく密息をしているのだと思います。
   それが、聴衆の前に異空間を現前させる神通力を
   生み出しているのです。



試しに、ぼくも同じように骨盤を倒してネタを繰ってみた。
確かにどこか声の出方が全く違ってくる。

少し前のことだが、舞台袖である後輩の落語を聞いていると、
ずいぶんといい高座だったので、
色々尋ねてみたいと思い、飲みに誘ったことがある。

   「姿勢が、以前とは変わったんと違う?」」
   「ええ、前から猫背をずいぶん指摘されていたので、
    ちょっと、ある先生に身体を診てもらったんですよ。
    それから声の出方もちょっと変わったかなと思います」
    
 
以前から、その上手さに「憧れの後輩」だったが、
その言葉の操り方は、さらに大きな進化を遂げていた。

その時は「密息」ということにあまり関心がなかったので、
多くを聞きそびれてしまった。
せっかく朝まで一緒に飲んだのに・・・・・・

きっと、この事ともおおいに関係があるのだろう。
もし、このブログを見たなら、
そっと私だけにその秘密を教えて欲しい。


・・・・・・さて、今回、こんなことを書き出したのも
ちょうど明日、北浜で「ワークショップ」を行うからだ。
元救急救命医の木本先生も、毎回受講生として参加してくれている。
腰痛のことに詳しく、呼吸法にも一家言を持っておられるので、
これについてもきっと何かヒントをお持ちだろう。


腰痛を治すのは、医者ではなく、あなたです。 超簡単「痛い!」のカガク<腰痛・ひざ痛・骨粗しょう症・むち打ち損傷編>腰痛を治すのは、医者ではなく、あなたです。 超簡単「痛い!」のカガク<腰痛・ひざ痛・骨粗しょう症・むち打ち損傷編>
(2010/11/26)
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今回もこのブログをご覧になっておられると思う。
・・・そんなわけで、ひとつよろしく。



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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

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