49.久留島武彦、それから
この春から、ぼくの水曜日は
大阪天満宮から、箕面へという行動パターンになった。
「繁昌亭落語家入門講座」を午前中に終えると、
そのまま大阪青山大学へと向かう。
人には、自分の知識をひけらかしたいという癖がある。
ぼくは、その傾向が他人よりも特に強いようだ。
それゆえ大学や高校、専門学校という場が、
ぼくには、非常に有り難い。
何より知識のアウトプットは、
自身にとって刷り込み作業みたいなもので、
これほど有意義なことはない。
各年度の前期、ぼくの授業科目は「子ども言語論」。
ちょっと固そうに聞こえるが、
要は「落語の授業」である。
受けるのは2回生で、彼らは去年、
ぼくの「子ども文化論」という授業も取っている。
それで、今年は、落語を覚えて演じようということになった。
座学から、演習へ。
「よっしゃ、俺は慰問にも行くでえ」という、
彼らのやる気満々に、ぼくは今、大きな期待を寄せている。

さて、大学では、授業初日のその日も、
知識のひけらかしから始まった。
それも仕入れたばかりの
日本のアンデルセン=口演童話家「久留島武彦」のお話し。
ぼくの情報源の大半は、もっぱら酒の席だが、
「久留島武彦」については、
知人の開いたパーティーの席で初めて知った。
「語り部の里・大和郡山」である。
「47.日本のアンデルセン」を参照 → 過去の記事
その翌日、ぼくは久しぶりに
大阪キタ・老松町の「矢乃」というお店に寄ってみた。
確かマスターは大分県のご出身。
ひょっとして、マスターも、何かご存じかと
「久留島武彦って知ってはります?」と問いかけてみた。
すると、そのマスターは、少し高揚しながら、雄弁に語り出した。
「久留島武彦先生は、わが、玖珠町の人間です!!!」。
まさかマスターが、玖珠町出身とまでは知らなかった。
当日、カウンターには
たまたまマスターの幼なじみもお客として来店していて、
それから、その場は「久留島武彦」ばなしで大盛り上がりとなった。
大分県・玖珠町は、「童話の里」である。
「久留島武彦の音源が欲しいんですよ」というぼくのひとことに、
隣に座っていた女性の行動は早かった。
すぐさま店の表に出ると、どこへやら電話をかけ始めた。
10分ほど経って戻ってきて、
「蝶六さん、すぐに送ってくれるそうですから、近日中には・・・」
「どこにかけてはったんですか?」
「高校の時の担任の先生よ。
受け持ってもらったんは、40年以上も前で、
同窓会でたまにお会いするぐらいだけど、
その先生、そう言えば、以前に久留島武彦記念館の館長をされていたって、 今、ふと思い出したのよ。
・・・・・・いやあ、久しぶりだったし、ちょっと、緊張したわよ
・・・でもよかった。 久しぶりにお話しができて・・・・・・」。
こんな偶然って、あるだろうか?
これがいわゆる「引き寄せ」というやつ?
・・・・・・前置きが長くなったが、そんな経緯で、
その久留島武彦先生の童話口演の音源が、
今、ぼくの手元にある。
昭和初期のもので、決して録音状態はいいとは言えないが、
噛んで含むような調子は、とても親切な語り口で、
緩急や強弱、テンポが実に心地良い。
ぼくは、すっかりはまってしまった。
ぼく個人的には、徳川夢声先生以上である。
・・・音源に耳を傾けながら、ぼくは前に仕入れた
久留島武彦『童話術講話』を取り出してみた。
目次はざっとこんな感じだ。
1.諸言、心の態度
2.子供が話を聞く立場
3.子供の言葉について
4.場所の関係
5.三つの語り方
6.響きについて
7.呼吸
8.姿勢
9.呼吸の調節
10.声の種類
11.童話の言葉について
12.響きは偽るべからず
13.発音遊戯
14.簡単、直截、明快
15.話の組立て方
16.子どもの数
17.肩と腰の決め方
童話術講話 (1973年) (青少年文化シリーズ)
話は戻るが、大学の授業初日、
ぼくは彼らにこんなことを告げていた。
「ぼくがこの授業で落語を通じ、今、漠然と、
皆さんに身につけてもらいたいなあって思っていることと、
久留島武彦先生のおっしゃっていることは、
すごく結びついているように思うんです。
・・・・・・ぼくは、今夜、これから、老松町の『矢乃』というお店に行って、
久留島武彦先生の音源を受け取ることになっています。
来週は、その音源を、皆で、聞きましょう」。
音源を手に入れる前にも関わらず、
何とも見切り発車な言動であったが、全く期待を裏切らなかった。
事前に聴き、時中に聴き、事後に聴くというのが、
大人の聴き方であります。
子供は事前に聴かない。
話の途中でも論旨が詰まらないと思えば直ぐ離れてしまう。
如何に話しにくいものであるか、
如何に聞かせにくいものであるかが子供であります。
私はこういう点から考えて、
どうか話術の発着点を、子供に語るというところに
行きたいものだと思う。(久留島武彦)
童話術講話 (1973年) (青少年文化シリーズ)
アウトプットできる場があるから学ぼうと思う。
ブログという媒体があるから、何か綴ってみようと思う。
演じる場があるから稽古をする。
・・・・・・どこか似ている。
桂蝶六公式ホームページはこちら → 口はにぎわいのもと
大阪天満宮から、箕面へという行動パターンになった。
「繁昌亭落語家入門講座」を午前中に終えると、
そのまま大阪青山大学へと向かう。
人には、自分の知識をひけらかしたいという癖がある。
ぼくは、その傾向が他人よりも特に強いようだ。
それゆえ大学や高校、専門学校という場が、
ぼくには、非常に有り難い。
何より知識のアウトプットは、
自身にとって刷り込み作業みたいなもので、
これほど有意義なことはない。
各年度の前期、ぼくの授業科目は「子ども言語論」。
ちょっと固そうに聞こえるが、
要は「落語の授業」である。
受けるのは2回生で、彼らは去年、
ぼくの「子ども文化論」という授業も取っている。
それで、今年は、落語を覚えて演じようということになった。
座学から、演習へ。
「よっしゃ、俺は慰問にも行くでえ」という、
彼らのやる気満々に、ぼくは今、大きな期待を寄せている。

さて、大学では、授業初日のその日も、
知識のひけらかしから始まった。
それも仕入れたばかりの
日本のアンデルセン=口演童話家「久留島武彦」のお話し。
ぼくの情報源の大半は、もっぱら酒の席だが、
「久留島武彦」については、
知人の開いたパーティーの席で初めて知った。
「語り部の里・大和郡山」である。
「47.日本のアンデルセン」を参照 → 過去の記事
その翌日、ぼくは久しぶりに
大阪キタ・老松町の「矢乃」というお店に寄ってみた。
確かマスターは大分県のご出身。
ひょっとして、マスターも、何かご存じかと
「久留島武彦って知ってはります?」と問いかけてみた。
すると、そのマスターは、少し高揚しながら、雄弁に語り出した。
「久留島武彦先生は、わが、玖珠町の人間です!!!」。
まさかマスターが、玖珠町出身とまでは知らなかった。
当日、カウンターには
たまたまマスターの幼なじみもお客として来店していて、
それから、その場は「久留島武彦」ばなしで大盛り上がりとなった。
大分県・玖珠町は、「童話の里」である。
「久留島武彦の音源が欲しいんですよ」というぼくのひとことに、
隣に座っていた女性の行動は早かった。
すぐさま店の表に出ると、どこへやら電話をかけ始めた。
10分ほど経って戻ってきて、
「蝶六さん、すぐに送ってくれるそうですから、近日中には・・・」
「どこにかけてはったんですか?」
「高校の時の担任の先生よ。
受け持ってもらったんは、40年以上も前で、
同窓会でたまにお会いするぐらいだけど、
その先生、そう言えば、以前に久留島武彦記念館の館長をされていたって、 今、ふと思い出したのよ。
・・・・・・いやあ、久しぶりだったし、ちょっと、緊張したわよ
・・・でもよかった。 久しぶりにお話しができて・・・・・・」。
こんな偶然って、あるだろうか?
これがいわゆる「引き寄せ」というやつ?
・・・・・・前置きが長くなったが、そんな経緯で、
その久留島武彦先生の童話口演の音源が、
今、ぼくの手元にある。
昭和初期のもので、決して録音状態はいいとは言えないが、
噛んで含むような調子は、とても親切な語り口で、
緩急や強弱、テンポが実に心地良い。
ぼくは、すっかりはまってしまった。
ぼく個人的には、徳川夢声先生以上である。
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・・・音源に耳を傾けながら、ぼくは前に仕入れた
久留島武彦『童話術講話』を取り出してみた。
目次はざっとこんな感じだ。
1.諸言、心の態度
2.子供が話を聞く立場
3.子供の言葉について
4.場所の関係
5.三つの語り方
6.響きについて
7.呼吸
8.姿勢
9.呼吸の調節
10.声の種類
11.童話の言葉について
12.響きは偽るべからず
13.発音遊戯
14.簡単、直截、明快
15.話の組立て方
16.子どもの数
17.肩と腰の決め方
童話術講話 (1973年) (青少年文化シリーズ)
話は戻るが、大学の授業初日、
ぼくは彼らにこんなことを告げていた。
「ぼくがこの授業で落語を通じ、今、漠然と、
皆さんに身につけてもらいたいなあって思っていることと、
久留島武彦先生のおっしゃっていることは、
すごく結びついているように思うんです。
・・・・・・ぼくは、今夜、これから、老松町の『矢乃』というお店に行って、
久留島武彦先生の音源を受け取ることになっています。
来週は、その音源を、皆で、聞きましょう」。
音源を手に入れる前にも関わらず、
何とも見切り発車な言動であったが、全く期待を裏切らなかった。
事前に聴き、時中に聴き、事後に聴くというのが、
大人の聴き方であります。
子供は事前に聴かない。
話の途中でも論旨が詰まらないと思えば直ぐ離れてしまう。
如何に話しにくいものであるか、
如何に聞かせにくいものであるかが子供であります。
私はこういう点から考えて、
どうか話術の発着点を、子供に語るというところに
行きたいものだと思う。(久留島武彦)
童話術講話 (1973年) (青少年文化シリーズ)
アウトプットできる場があるから学ぼうと思う。
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演じる場があるから稽古をする。
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