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54.久留島武彦、それからそれから、稗田阿礼。



「イザナキ・イザナミに命じる。
 この浮遊している国土を固め直して整備をせよ。
 ……これは、天の沼矛というものじゃ。これを使うたらええわい」
 
「へ、へえ、かしこまりました。ほなイザナミはん、
 天上の神さんも、あない言うてはるさかい、ぼちぼち始めまひょか」
 
「ええ、そしたら、この天の浮橋から……」

天の浮橋というのは、天と地の間に架かっている橋ですな。
ここから、二人は矛を海水に向けてさし下し、かき回しよったんで。

こをろこをろ、こをろこをろ、こをろこをろ……

エイッと、その矛を引き上げると、矛先から塩がボタッ。
これが固まってできたんが、オノゴロ島。

さてこの後、二人の神は、この島に、結婚のための聖なる寝殿を建てたんで。

「ところで、イザナミはん、あなたの身体はどんなふうにできてまんねやろ?」

「ええ、私の身体は完成したのですが、どうしても塞がらない裂け目が…」

「さよか、いや、わしも、身体は完成したことはしたんやが、
 何や、余計な突起が一か所ありますねん。。
 どうやろ?わしの身体の突起をやな、あんたの裂け目に入れて、
 国を作りたいと思うねやけど・・・・・・」
 
「ええ、いいわ。じゃあ、そうしましょう」

「ほな、二人でこの聖なる柱を回って、出会ってから交わるということに
 しまひょか?……あんたは右から回る。わしは左から回る。よろしいな」
 
二人が出会った時、イザナミは「まあ、いい男」と言い、
イザナキは「ええ女やな」と、お互いを褒め合った。
 
しかし、その後、イザナキはイザナミにこう言った。
「女性が、男性より先に褒めた、ちゅうのはあんまりええことないでぇ」。

そうは言いつつも、二人は聖なる寝殿で交わりを続け、国を産み続けたんですな。


……ご存じ、これは『古事記』の一節で、日本国(大八島)の誕生秘話。
原文はこんな感じである。

  是に天神諸の命以ちて、伊耶那岐命 伊耶那美命の二柱の神に
  詔りたまひて「是のただよへる国を修理め固め成せ」と、天沼
  矛を賜ひて、言依さし賜ひき。故二柱の神、天浮橋に立たして、
  其の沼矛を指し下して画きたまひ、塩こをろこをろに画き鳴し
  て、引き上げたまひし時に、其の矛の末より垂り落つる塩の累
  積りて成れる嶋は、是れ於能碁呂嶋なり。

  其の嶋に天降り坐して、天の御柱を見たて、八壽殿を見立てた
  まひき。是に其の妹伊耶那美命に問曰ひたまひしく、「汝が身
  は如何に成れる」ととひたまへば、答曰へたまはく、「吾が身
  は成り成りて、成り合はぬ処一処在り」とまをしたまひき。爾
  に伊耶那岐命詔りたまひしく、「我が身は成り成りて、成り余
  れる処一処在り。故此の吾が身の成り余れる処を、汝が身の成
  り合わぬ処に刺し塞ぎて、国土生み成さむと以為ふは奈何」と
  のりたまへば、伊耶那美命答曰へたまはく、「然善けむ」とま
  をしたまひき。爾に伊耶那岐命詔りたまひしく、「然らば吾と
  汝と、是の天の御柱を行き廻り逢ひて、みとのまぐはひ為む」
  とのりたまひき。かく期りて、乃ち詔りたまひしく、「汝は右
  より廻りたまふ時に、伊耶那美命 先ず「あなにやし、えをと
  こを」と言りたまひ、後に伊耶那岐命、「あなにやし、えをと
  めを」と言りたまひき。おのもおのも言りたまひ竟へて後に、
  其の妹に告白りたまひしく「女人先だち言へるは良はず」との
  りたまひき。


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それにしても、『古事記』を読んでますと(勿論、現代語訳ですが)、
「ええ!?」と思うような話もたくさんにございます。

イザナミが子を産んだ時に、
その子によって陰部を焼かれてしまい、病臥に陥った。
その臥せっている時に、嘔吐した物に鉱山の神が生まれて、
糞には粘土の神様、尿には水の神が生まれた・・・・・・という話も。


ぼくは、鎌田東二さんの『超訳○古事記』がお気に入りです。
言葉のリズムが何とも心地良い。


  まっ赤に焔柱をあげながら
  伊耶那美の母なる胎内から噴き上がってくる
  溶岩のような
  潮のような
  あつい あつい かたまり
  
  その焔なす火の神を産んで
  伊耶那美命は陰を焼き焦がし
  わが身を焼き焦がして痛め病み衰えた
  
  だが
  その病み衰えた体で
  力をふりしぼり
  反吐を吐き
  大便小便を洩らした
  
  その嘔吐から生まれた神は
  金山毘古神と金山昆売神という金属の夫婦神
  屎の中から生まれたのが
  波邇夜須昆古神と波邇夜須昆売神という粘土の夫婦神


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ちなみに、『古事記』が編纂された時代は、710年。

   710年 藤原京から平城京への遷都。
   712年 『古事記』の成立。
   713年 『風土記』の編纂を諸国に命じる。
   720年 『日本書記』の成立。
     
この頃、中国では、唐の時代。
これにならって、色んな制度の導入、整備を進めていたんでしょうな。
天皇を中心とした律令国家体制の確立を目指していた。
『古事記』が生まれた背景には、そんな経緯があったんですな。

この編纂に携わったのが、稗田阿礼という28歳になる舎人。
出身地は、奈良は、大和郡山。
その稗田環濠集落にある賣太(めた)神社には、
稗田阿礼が、主祭神として祀ってあり、
境内には「語り部の里」という大きな碑もございます。

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また、昭和5年より、この神社では
毎年8月16日に「阿礼祭」が開かれています。
童話の読み聞かせなども行われておりますが、
それをお始めになったのが、
日本のアンデルセンこと、久留島武彦先生。

このブログでも、2度ほど取り上げさせてもらいました。
(右、過去の記事、47。日本のアンデルセン、49.久留島武彦、をクリックしてご参照ください)

さて、そんな『古事記』に、ぴったりのお酒があります。

『こをろこをろ』

koorokooro.jpg

1853年創業の中谷酒造。
大和郡山の水田で作った米で作られています。
名付け親は、同市の上田清市長。
ラベルの字は、脳性まひを抱えながら、わずかに動く左手で筆をとる
王寺町の書道家、高岡哲也さんによるものです。

なが~いお話の最後は、宣伝で終わる、
なんだか『健康青汁』のコマーシャルみたいになりましたね。

けど、これがなかなか甘みとコクがあって、いけるんですよ。
イオンモール大和郡山や、市内の酒販店で置いてます。720㍉リットル1500円。

ええ、わたし、『こをろこをろ』の回し者でおま。


桂蝶六ホームページ → 口は賑わいのもと
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Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

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