66.個性って滲み出るもの 繁昌亭落語家入門講座3
ダイアリー > 繁昌亭落語家入門講座 - 2013年05月10日 (金)
小咄を卒業して、今日からいよいよ本格的なお稽古。
ぼくも、サブ講師を勤めさせてもらうようになって、
棚の奥から本を引っ張り出してくることが増えました。
まだ駆け出しの頃の志ん朝さんが、
「お父ちゃん!噺てぇのどうやったら面白くできるの?」
と、父子の間だから、さぞ秘訣を伝授してくれるだろうと思ったのだろう。
「ツマリソレハ、面白くやろうと思わないことだよ」
と志ん生師が答えた。
「落語はもともと面白くできているんだから、素直にそのままやればいいのだ。
それを無理に笑わせようとしたり、
わざと面白くやろうとするからつまらなくなっちゃう」
ギャグや入れごとがいのちという人の噺には心の底からボクは幸せになれない。
笑うことは笑っても、笑わせられたという疲労感が残るし、
多くの場合は笑えない。
まともにやって面白い、それを芸というのだ。
芸って奴は、何かの節度を持つということではないのだろうか。
セリフは教わったまんまでもいい。
特に、噺の口調もできておらず、
人物のメリハリも満足につかない初心の段階では、
まんまでなくてはいけないぐらいのものだ。
とても大事な時期で、噺の口調や噺の匂いを体で憶える段階であって、
笑ってもらうことを第一目標とすると危険な時期だ。
柳家小三治師匠の『落語家論』は、最初のわずか20ページを
パラパラッとめくっただけで、上記のような「珠玉の言葉」の連続。
『繁昌亭落語家入門講座』受講生の皆さんは、
これをお読みになって、
きっと米輔師匠の言葉を思い出されることでしょう。
「こうすると、押しつけがましくなりますから・・・・・・」
「多少違っても構いませんが、極力、この通りに憶えてください」
「ここはサラッと・・・品がなくなりますからね」

お手本を示す桂米輔師匠(舞台袖より撮影)
それに、お稽古は師匠のそっくりそのままを
真似するところから入るわけですが、
たとえ同じ咄でも、それが見事な十人十色。
個性って、つくるもんじゃなくて、滲み出るもの。
それぞれがこれまでに培ってきたバックボーンを、落語にどう反映させるか。
それは受講者全員に言えること。非常に楽しみなところであります。
あるご年配の男性は、ネタがまだすっくり腹に落ちていないのか、
手元にその焦りが、すこ~し見て取れるものの、
自然な声の響きや表情に、人徳を思わせます。
色んな経験をされて来られたんだろうな。
ぼくとほぼ同年代のさるご婦人の場合。
普段の振る舞いが、もっとそのまま落語に映えればなあ。
だって、人が集ういいオーラを
すっごく持ちあわせておられるんですもの。
また、こちらのご年配の男性。
独特の心地良いメロディーと響きが相手を酔わせます。
あとはどう落とすか。え?落語の話ですよ。
落語を聴いてるとさ、
下げがもう、楽しみで、楽しみで、
「オチ、オチ、寝てられねえや」
今は、初級ですが、
中級、上級・・・・・・と段階を踏んでいくにつれ、
ダメ出しの内容もきっとまた変わっていきますよ。
それを楽しみにまずは「初級講座」、共に楽しみませう。
桂蝶六のホームページ
ぼくも、サブ講師を勤めさせてもらうようになって、
棚の奥から本を引っ張り出してくることが増えました。
まだ駆け出しの頃の志ん朝さんが、
「お父ちゃん!噺てぇのどうやったら面白くできるの?」
と、父子の間だから、さぞ秘訣を伝授してくれるだろうと思ったのだろう。
「ツマリソレハ、面白くやろうと思わないことだよ」
と志ん生師が答えた。
「落語はもともと面白くできているんだから、素直にそのままやればいいのだ。
それを無理に笑わせようとしたり、
わざと面白くやろうとするからつまらなくなっちゃう」
ギャグや入れごとがいのちという人の噺には心の底からボクは幸せになれない。
笑うことは笑っても、笑わせられたという疲労感が残るし、
多くの場合は笑えない。
まともにやって面白い、それを芸というのだ。
芸って奴は、何かの節度を持つということではないのだろうか。
セリフは教わったまんまでもいい。
特に、噺の口調もできておらず、
人物のメリハリも満足につかない初心の段階では、
まんまでなくてはいけないぐらいのものだ。
とても大事な時期で、噺の口調や噺の匂いを体で憶える段階であって、
笑ってもらうことを第一目標とすると危険な時期だ。
柳家小三治師匠の『落語家論』は、最初のわずか20ページを
パラパラッとめくっただけで、上記のような「珠玉の言葉」の連続。
![]() | 落語家論 (ちくま文庫) (2007/12/10) 柳家 小三治 商品詳細を見る |
『繁昌亭落語家入門講座』受講生の皆さんは、
これをお読みになって、
きっと米輔師匠の言葉を思い出されることでしょう。
「こうすると、押しつけがましくなりますから・・・・・・」
「多少違っても構いませんが、極力、この通りに憶えてください」
「ここはサラッと・・・品がなくなりますからね」

お手本を示す桂米輔師匠(舞台袖より撮影)
それに、お稽古は師匠のそっくりそのままを
真似するところから入るわけですが、
たとえ同じ咄でも、それが見事な十人十色。
個性って、つくるもんじゃなくて、滲み出るもの。
それぞれがこれまでに培ってきたバックボーンを、落語にどう反映させるか。
それは受講者全員に言えること。非常に楽しみなところであります。
あるご年配の男性は、ネタがまだすっくり腹に落ちていないのか、
手元にその焦りが、すこ~し見て取れるものの、
自然な声の響きや表情に、人徳を思わせます。
色んな経験をされて来られたんだろうな。
ぼくとほぼ同年代のさるご婦人の場合。
普段の振る舞いが、もっとそのまま落語に映えればなあ。
だって、人が集ういいオーラを
すっごく持ちあわせておられるんですもの。
また、こちらのご年配の男性。
独特の心地良いメロディーと響きが相手を酔わせます。
あとはどう落とすか。え?落語の話ですよ。
落語を聴いてるとさ、
下げがもう、楽しみで、楽しみで、
「オチ、オチ、寝てられねえや」
今は、初級ですが、
中級、上級・・・・・・と段階を踏んでいくにつれ、
ダメ出しの内容もきっとまた変わっていきますよ。
それを楽しみにまずは「初級講座」、共に楽しみませう。
![]() | 落語と私 (文春文庫) (1986/03) 桂 米朝 商品詳細を見る |
桂蝶六のホームページ
- 関連記事
-
- 146.師匠自慢~繁昌亭落語家入門講座~ (2015/09/30)
- 129.露の都の育て上手・教え好き~繁昌亭入門講座16期・後記~ (2015/03/15)
- 105.稽古人に育てられる日々~『愚か塾』発表会後記~ (2014/02/18)
- 99.リアルかリズムか 繁昌亭落語家入門講座12 (2013/10/20)
- 98.草落語の時代 繁昌亭落語家入門講座11 (2013/09/20)
- 93.リラックスな緊張 繁昌亭落語家入門講座10 (2013/09/03)
- 90.”修行論(内田樹)”より 繁昌亭落語家入門講座9 (2013/08/15)
- 84.彼が落語家になった理由 繁昌亭落語家入門講座8 (2013/07/04)
- 83.落語の効用について 繁昌亭落語家入門講座7 (2013/06/28)
- 81.阿呆に寄せる眼差し 繁昌亭落語家入門講座6 (2013/06/20)
- 79.天ぷらと落語 繁昌亭落語家入門講座5 (2013/06/06)
- 74.指南の技 繁昌亭落語家入門講座4 (2013/05/24)
- 66.個性って滲み出るもの 繁昌亭落語家入門講座3 (2013/05/10)
- 58.教えて教えられる 繁昌亭落語家入門講座2 (2013/04/25)
- 48.繁昌亭落語入門講座 (2013/04/12)