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86.オチってなあに? ようこそアーティスト1

京都市が行っている事業のひとつに、
「ようこそアーティスト文化芸術とくべつ授業」という取り組みがある。

バレエ、ダンス、声楽、能、狂言、書、茶道、
演劇、マンガ、香、語り、長唄・・・・・・多岐にわたっている。

ぼくもここ数年、毎年のように呼んで頂いている。
その様子を何回かに分けて紹介させて頂こうと思う。

ぼくが、落語を通じて伝えたかったことを紹介していきたい。

はづかし小学校、問いかける蝶六

「オチって一体何やろう?」 

この問いかけに、会場はほんの一瞬、シンと静まりかえった。
小学校で行われた「落語ワークショップ」での一コマ。

授業は「落語について知っていることは?」という質問から始まった。

それに対して、
「一人」「着物」「座布団」「扇子」「登場人物が喋る」
「面白いことを言う」「坐る」・・・・・・といった回答。

出るわ、出るわ。
そして、そのひとつに「オチがある」という回答。
そこから、冒頭の
「オチって一体何やろう」という質問に繋がった。

大人でも、この質問に的確に応えるのはムツカシイ。
それでも、何人かの子どもたちが勇気をもって元気に応えてくれた。

「最後の決め台詞」「なるほどって思える言葉」
「最後に笑えるみたいな」・・・・・・

さて、そこでぼくは、オチの説明の代わりに、
ひとつのトンチクイズを差し出した。

「田中さんは朝起きたら、すごくお腹が痛くてたまりませんでした。
 それで、田中さんは支度を調えて家を出ると
 そのまま歯医者さんに行きました・・・・・・何でやろう?」
 

「その歯医者さんは、お腹も診てくれるねん」
「内科に行かなあかんのを知らんかった」
「仮病やった」
「お腹が痛いのは、きっと虫歯の毒が回ったからだ」
「お医者さんの名前が、ハイシャさん」

この自由な「発想のカーソル」を大切にしたい。

「・・・・・・さて、みなさんの回答、すべてを正解にしたいと思いますが、
 ここでおじさん(ぼく)が用意してきた答えも発表します。
 
 なぜ、田中さんは歯医者さんに行ったのか?
 ・・・・・・それはね、田中さんが歯医者さんだったからです」


ため息と笑い声。

「何だ、そういうことかあ」
「アホらしい」
「なるほど」




つまり、オチ(=下げ)とは、
「クイズの答えのようなもの」。


これは、桂文珍師匠の著書からの引用である。

「心の隙間をちょっと突かれてしまったような感じ」
「ストーンと落とされたような落下感」とも文珍師はおっしゃる。


文珍流・落語への招待 (NHKライブラリー)文珍流・落語への招待 (NHKライブラリー)
(2000/10)
桂 文珍

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ちなみに、桂米朝師匠の説明は以下の通り。

「サゲ・・・というものは一種のぶちこわし作業なのです。
 さまざまのテクニックをつかって本当らしくしゃべり、
 サゲでどんでん返しをくらわせて
 『これは嘘ですよ、おどけ話ですよ』という形をとるのが落語なのです。
 落語は、物語の世界に遊ばせ、
 笑わせたりハラハラさせたりしていたお客を、
 サゲによって一瞬に現実にひきもどす。
 そしてだました方が快哉を叫べば、
 だまされた方も『してやられたな、あっはっは』・・・
 と笑っておしまいになる、いわば知的なお遊びです。
 落語とは、落としばなし、話を落とすから落語です。
 その「おとす」という言葉はなんらかの理屈で「なるほど」と合点させ、
 はなしの世界から現実へひきもどす。これが「おとす」なのです」
 

落語と私 (文春文庫)落語と私 (文春文庫)
(1986/03)
桂 米朝

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ぼくが思うに、
落語の面白さは、聴き手が思考するところにある。
考えるからこそ、
「ああ、なるほど」「そんなアホな」といった
快感が生まれる。
気づきこそが笑いの源流である。 



ところで、最近よく耳にするのが「水平思考」という言葉。

物事を深く彫り上げて考える思考が「垂直思考」なら、
物事を違った角度から見るのが「水平思考」。

エドワード・デボノ氏の著書には、
例えば、こんなクイズが紹介されている。

 
 昔、一人のロンドンの商人が、
 ある金貸しから莫大な借金をして困っていた。
 年老いた醜いその金貸しは、
 商人の娘、美しいティーンエージャーに目をつけ、
 ある取引を提案した。


 大きな空の財布の中に黒白二つの小石を入れ、
 娘にその一つをつかみ出させる。

 もし、娘が黒い石を引けば娘は金貸しの妻となり、借金は帳消し。
 もし、白い石を引けば、全てを無条件に帳消し。
  
 商人は仕方なく、これに同意した。
 
 さっそく、金貸しは、
 その庭の小石を敷き詰めた小道から二つの石を拾って
 財布に入れたのだが、
 金貸しはすばやく二つとも黒い石を入れたのだった。
 
 これを目ざとく見つけた娘。
 
 
 さて問題は、この娘がこの後、どうしたかということである。



水平思考の世界―電算機時代の創造的思考法 (1969年)水平思考の世界―電算機時代の創造的思考法 (1969年)
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 まず考えられるのは、

 ①娘が石を選ぶのを拒否する、
 ②財布の中を開け、二つの黒い石を示して、金貸しの欺瞞をあばく、
 ③黒い石を選んで、自分が犠牲になる。

 しかし、賢明な娘はこの3つの方法からではなく、第4の方法を取った。

 その方法とは・・・・・・

フレームハウスの大きい絵画
 
 娘は財布の中に手を入れ、小石を取り出す。
 そして、その小石が黒か白かを確かめずに手から滑り落とし、
 庭の小道の小石の中に落としてしまう。

 そうしておいて、彼女はこう言った。


「私って不調法ね、でも大丈夫。
 さいふの中に残っている小石を見れば、
 今、落とした石が分かりますもの」
 

つまり、前の3つの方法が垂直思考であり、
あとの方法が水平思考によるものである。


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水平思考には、頭の柔軟性が要求される。遊び心の賜。
頑張って身につける性格のものではなく、
楽しんでいるうちに身につく。

「水平思考」とは、生きるための知恵。
「落語」には、それがたっぷりと含まれている。


「クスリと笑って、有意義な生活を!!
 ―― 落語という名のサプリメント 」



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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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