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87.声に出す日本語 ようこそアーティスト2

京都市が行っている事業のひとつに、
「ようこそアーティスト文化芸術とくべつ授業」という取り組みがある。
参加し始めて、かれこれ5年目ぐらいになろうか。

これは、そのレポートの第2弾目。

はづかし小学校、ようこそめくり2


「寿限無寿限無、五劫のすり切れん、
 海砂利水魚の水行末、雲行末、風行末・・・・・・」
 
おなじみ落語「寿限無」の一節。
落語ワークショップでは、おなじみのフレーズである。
 
最初は、普通に立ったまま、リズミカルに。
 
次に、足を肩幅に拡げ、つま先をできるだけ外に向け、
そのままグッと腰を落とした状態で、同じように「寿限無」を唱和する。
 
相撲の四股踏みの姿勢。
(実際は、写真よりも背中を立てて行います)


はづかし小学校、四股踏み

「今の四股踏みで、何か感じたことはないかな」
「しんどかった」
「そやな。他には」
「足のこの辺(大腿部)がプルプルしてる」
「なるほど」
「声が大きくなった」
「なるほど」
「声の出方が変わった」
「ほう、どう変わった?」
「・・・・・・あのな、お腹の底からなあ、声が出たような気がした」

これは、早稲田小劇場の「鈴木メソッド」に倣ったもの。

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鈴木 忠志

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「ええっと、一番後ろの人、ぼくの声、聞こえてますか?」
「はい、よく聞こえています」
「ちなみに、おじさんは今、そんなに頑張って大きな声を出していません」

頑張らなくても、届く声。
そういう身体をつくるために、
ぼくはこれまで悩んできた。



変な頑張り方をすると、肩に力が入り、
話す者だけでなく、聞く者もまた、
しんどい思いをさせられることになる。

肩で話せば、息も浅くなり、
到底相手の呼吸に合わせられるはずがない。
 
 
司会の仕事もするので、マイクの使い方を身につけることも大事だが、
100名ほどのキャパであれば、
マイクなしに普通に声が届く身体をつくっておく必要がある。

これは落語家のみならず、学校の先生など、
大勢の前で話す必要のある職種の方全てに言えることかも知れない。

「声を出す」というより、
「身体のなかで反響させる」。
モノに例えたなら、ギターのボディ。


ぼくは、声に関するコンプレックスを
人一倍ずっと抱えてきた。


はづかし小学校、答える子ども

さて、ワークショップは、やがて「狂言台詞」や「義太夫節」を
取り入れた発語レッスンへと進んでいく。

過去に20年ほど、狂言をかじっていたことがここで役立った。


「これはこのあたりに住まい致すものでござる」
「いまごろは半七さん、どこでどうしてござろうぞ」
「五番叟にお住持に旗に天蓋銅鑼に妙鉢影灯籠に白張と」・・・・・・
「夜目遠目笠のうち、もののあやめと理方が分からん」

「さて、皆さん。
 ここで何か言葉の抑揚について、何か気がついたことはないですか?」
 
「・・・・・・何か、こんな感じかな(手で抑揚の調子を形で示す)」
「そうですね。こんな感じやね。これを俗に『二字起こし』と言います。
 各文節の二文字目にメリハリをつけて発声するという手法です」
 

これの効用は「台詞が下降しない」「感情移入しやすい」の二点。
 

鴨下信一先生はこうおっしゃる。

「このテクニックは、
 実はリアルな現代劇,テレビドラマでもまったく通用します。
 経験上,いろんな俳優さんに教えて、
 特に新人はこれで急速にセリフが改良される。
 なぜ、二つめの音に表情をつけると日本語のセリフがよくなるのかは、
 はっきりしたことはわかりません。
 次は僕の仮説です。
 日本語の単語の第一音はアクセントを左右する音なので、
 これに表情をつけるととたんに音高が上下してアクセントが変わってしまう。
 日本語が高低アクセントであるために、
 第一音に表情をつけるのには制約があるのです。
 語句の末尾はたいてい活用語尾で、これまた表情がつけにくい。
 語尾変化をはっきりわかるように発声するのがまず先決で、
 妙に表情をつけて変化が不明になっては元も子もない。
 こうなると、第二音が、専門的に表情を音で表現する機能を持つようになる。
 おそらくこれが二字起こしの真相ではないでしょうか」
 

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また、歌舞伎俳優の坂東玉三郎丞は、
台詞の抑揚と感情移入について、こう述べている。

「歌舞伎の台詞は音(オン)で語ることもあります
(オンというのは語りの時に言葉の音程を言います)。
 音を上げたり下げたりすることで、
 ただ気持ちだけで語るより、
 意味を解りやすく聞かせたり、
 その役がはっきり見えてくる為の工夫なのです」


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発声から見えてくる日本の文化。
声に出す日本語って、本当に楽しい。

ワークショップをやっていて嬉しいのは、
何かに気づいた時の、
子どもたちのオオッ!!!という歓喜の表情。


ぼくにとって、彼らのこんなカオこそが一番の癒し。



それにしても、四股踏みレッスンは、ことのほか効果的だ。
「丹田」を意識するうえでも、たびたび用いている。
ぼく自身にとっては、健康体操のようなものである。

とにかく、繰り返すことで、より効果も現れようかと思う。

「力士を繰り返す」





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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

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