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92.「怪談」を踏み外す

思えば、
あれがぼくにとっての
「落語初体験」だった。


確か小学3年か4年の頃である。

担任の先生がお休みということで、
教頭先生だったか校長だったかは忘れたが、
代わりに男の先生が教壇に立たれた。

「今日は、みなさんにお話をします」

断片的に覚えている箇所を繋ぎ合わせると
あれは、おそらく落語の『鰍沢』だった。

その先生は、一人ひとりに語りかけるように、
ゆっくりと間を取りながら話を進めていった。

怪談ではなかったが本当に怖かった。
こういう語りは初めての経験。とても新鮮に感じた。
固唾を飲んで聴いていたことははっきり覚えている。

・・・確かにあれは「芸」だった。
「芸」という観念すら持たない子どもであったが、
「どこかこの先生は違う」ということだけは感じていた。

それに、この先生の語りからは、

「これから芸を披露します」
といった気負いなど
まるで感じられなかった。


蝶六、両手をひろげて

先日、生野区のとある小学校の校庭でキャンプファイヤーが催された。
地元の「青少年指導員」を勤める知人に誘われ、
ぼくも少しだけ参加させてもらった。

小学校の先生方も数人参加していた。
久しぶりのフォークダンスや野外ゲームに汗を流した。

校長も自ら道化となり会場をおおいに盛り上げた。

ぼくには肝試し前の「怖いお話」をするおじさんという役目が与えられた。

耳を塞いで涙目になっている子どもたちを前にぼくは話を進めた。

「……もう少し辛抱してね。
 最後にはちゃんとオチがあるからね」

 
逸る気持ちを抑えながら、たっぷりと……

「間」は想像の胎。

この時、ぼくの脳裏にあったのは、
あの時、あの先生の、
あの「怖いお話」だった。


蝶六、胸に手をあて

あとで子どもたちの感想を読ませてもらった。

肝試し、キャンプファイアー、カレーづくり、火おこし、
日の出、テント体験・・・・・・
思い思いの感想が原稿用紙いっぱいに綴られていた。

ぼくの「お話」のことも書かれてあった。

「怖いと思って聞いていたら、
最後はダジャレだったので、
 思いっきり笑ってしまった」
 

中川肝試しロッカーのお化け

この子の記憶に残ればいいなあ。


子どもの頃のさまざまな体験。
ぼくがそうであったように、
大人になって、何かとリンクしていく。

それがプラスになったり、マイナスに働いたり・・・・・・

ほんのささいな事でも意外に覚えているものだ。

この積み重ねが、人格形成していくんだろうなあ。

「思い出」という贈り物。

「青少年指導員」や「PTA」ら、地元の有志の皆さんに
ぼくは心の底からエールを送りたい。

中川肝試し火起こし

「ぼくもまた、
来年、是非とも参加させてもらいたい!」


「怖いお話」を持って、いざ小学校へ。
しかし、そこは落語家らしく、
最後にはちゃんと「オチ」もつけましょうぞ。


「怪談を踏み外す」



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蝶六改メ三代目桂花團治

Author:蝶六改メ三代目桂花團治
落語家・蝶六改め、三代目桂花團治です。「ホームページ「桂花團治~蝶のはなみち~」も併せてご覧ください。

http://hanadanji.net/

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